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第4話

前話までに修正を加えさせて頂きました。

詳細は後書きにて。

「えっ、何その”頭痛が痛い”や、”暴風の嵐”みたいな名前」

「知るか!いや、言いたい事はわかるが……とにかく、【魔力魔法】に聞き覚えは?」

「ない。……えっ、マジでないよ!?何そのブランチ!?俺のブランチ一覧には載ってないよ!」

「ふははははっ!マジか!?本当に詳細不明ブランチ?条件を満たさないと出てこない的な?やっばい!テンション上がってきた!!」

「凄いよ!すっごい羨ましい!俺の習得可能ブランチにもレアっぽいの無いかな!?」


 静かだが音がするという矛盾した夜の森の中に、どう聞いても騒音としか言いようのない大声が響き渡る。

 二人の声には喜色と興奮が乗り、ユウの声には少々の羨望も入っていたが仕方のない事だろう。



 テンションが上がった状態の二人は無駄に大きな声で話ながら興奮を発散していき、暫くすると声量は何時も通りになっていた。

 しかし元通りになったのは声量だけで、2人の興奮は止めどなく溢れ続けている。


「いやぁ、もしかしたらブランチ構成が関係してるかもな、俺のは少々特殊っぽいし」

「かもしれないね、もしかしたらブランチ説明に理由が載ってるかも」

「TDOのブランチ説明の場合、載って無いことも十分あり得るけどな」

「確かに、でも気になるし俺にも見せてよ」


 そう言うユウは俺と同じくらいの期待してますオーラを放っている。

 勿論、此処まで来て見せないつもりは毛頭無い。


「わかってるって、今開く」


□ □ □ □


【魔力魔法】

魔法に対して天賦の才を持っていたにも関わらず、属性に恵まれなかった不遇な天才が編み出したと言われる魔法。


MPを素のままに運用するそれは、全ての魔法の基礎を有り余る才能をもって無理矢理”術”へと昇華させたものであり、単純かつ明確な基礎でありながら、劣等感を抱えた才ある者にしか使えない底の見えぬ極意である。


□ □ □ □


「……やっぱり回りくどいな、それが良いんだけど」

「結月……劣等感って……ブランチ構成の事かい?」

「いや、抱えて無いから……多分」


 おい何だその目は、何かを納得した様に頷くな。後悔してないから、俺のブランチ構成には満足してるから。


「でだ。この説明を読む限りでも、何となく条件はわかるな」

「そうだね。多分だけど『突出した魔法適性がある』って事と、それにも関わらず『各属性魔法』を習得していないって事が条件だと思う。……こんな条件、普通は気付かないよ」


 全くもってユウの言う通りだと思う。

 突出した魔法適性を得るためには、ブランチの大半を魔法系ブランチで埋める必要がある。

 つまりは、魔法使いとしてやっていくつもりで初期ブランチを組まなければいけないにも関わらず、【各属性魔法】を習得してはいけないという、アホとしか思えない条件なのだ。


 ユウが対照的な属性の魔法ブランチを習得すると成長が遅くなると説明してくれた様に、【各属性魔法】のブランチは習得した時点でセットしていようが、控えにあろうがプレイヤーのMPに属性が付与されるものと思われるので、『属性に恵まれなかった』という条件を満たす為には【各属性魔法】を習得した後ではどうしようもない。


 俺の場合は【強化魔法】と【召喚術】、そして【精霊魔法】という、MPを素のまま使っても問題ない魔法しか覚えていなかったが為、条件を満たせたものと思われる。


 だが、その様な条件で習得可能になるという事は当然のデメリットもあるわけで。


「結月、もしかしなくても【魔力魔法】を習得したら、他の【各属性魔法】って習得不可能になるんじゃあ……」

「だな」

「だよねぇ……」


 【魔力魔法】は【各属性魔法】を持たない者が使う前提で、魔法の基礎を行使するものだ。

 つまりは、属性を持っている者が使った場合は只の属性魔法になってしまうという事なのだろう。



 ーーーーーまぁ、俺にはもう関係無いが。


「これは難しい二択だねぇ……結月的にはどうなの?」

「いや、どうも何も習得しちゃったぞ」

「そうだよね、やっぱ習得するかどうか悩むよね……え?」


 口元がにやけてしまいそうになるのを抑えつつ、わざとらしく首を傾げる。

 そんな俺を見てユウは、ぽかんと気の抜けた表情をしている、してやったりだ。

 だがその表情はすぐに引っ込み、自身の事では無いのにも関わらず口をパクパクさせている、かなり動揺している様だった。


「え、ちょっ、え、だって他の属性魔法にだって適性が、あ、でももう使えない、え……本当?」


 無言で首を縦に振り、肯定を返すとユウは額に手を当てて大きく息を吐いた。

 うん、俺の想像以上に衝撃的だったみたいだな、ちょっとだけ罪悪感。


「……理由をきいても?」

「OK。まぁ、簡単に言えば俺の初期ブランチと相談した結果だな」

「……レアブランチだからー、とかじゃ無いんだ」

「いや、それもある」


 だよねぇと呟くユウは「わかっていたよ」的な空気を醸し出していて、先程似たような事を言っていた人間とは思えない。完全にブーメランが刺さっている。


「それもあるが、俺のメインブランチは少々癖があるみたいだから。今から常道通りに各属性を取るよりも、俺のスタイルに合わせて出てきてくれた【魔力魔法】をとったまでだ」


 おかげでブランチ一覧にずらりと並んでいた【各属性魔法】が全て消えて、ちょっと寂しくなったが後悔はしていない。

 ユウも【魔力魔法】をとるのに否定的なわけでは無かったので、苦笑しながらも何も言ってこなかった。


「それに、忘れているのかもしれないが俺のメインブランチは【召喚術】だからな。属性魔法は、まだ見ぬパートナー達が補ってくれるさ」

「そうだったね、結月にはそれがあったか」

「後、精霊魔法もな」

「あっ、確かに。結構やりようはあるみたいだね」

「あぁ」


 忘れられてた精霊魔法ぇ……俺はちゃんと存在を考慮して決めたからな、安心してくれ精霊さん達。


「で?【魔力魔法】の存在を初めて確認したのは結月だと思うけど、どうする?『掲示板』にこの情報を載せる?」

「ん……そうだな……」


 ユウの言う『掲示板』とはメニューから開けるプレイヤー達の情報網の事だ。

 雑談したり、意見を交換したり、情報を載せたりと、中々に便利なのだが。


「……この件は他の人達が気付くまで内緒で良いか?」

「了解っ!まぁ、知ったとしてもデメリットも大きいし、やる人は少ないと思うけど」

「確かに」


 そう言いながらも、情報を秘密にする事に対して何も文句を言わないユウに心の中で感謝する。

 情報は皆で共有すべきという意見も理解できなくはない。けど、今の俺は”自分だけの”という響きにかなり興奮しているのだ。

 短い期間の間だけかもしれないが、最初に見つけた者の特権として、暫くの間その興奮に浸る事を許して欲しい。それが無限の可能性を秘めたTDOの醍醐味の一部でもあると思うし。


「よしっ!じゃあ新ブランチも習得したし、ひと狩り行ってきますか!」

「そうか、因みにどんなブランチを取ったんだ?」

「んー?えっと、【闇属性魔法】と【騎士の気構え】っていうのだね」

「何それ、俺のブランチ一覧には見当たらなかったぞ。どんなブランチ?」

「それが俺も余り分からないんだよねぇ……ブランチ説明が安心安定のTDOクオリティで。俺が目指すのが”騎士”だからノリで取っちゃったけど」

「TDOクオリティぇ……まぁ、名前的には、”筋力”や”身体力”が上がりそうだし損はないんじゃね?」

「うん、それを願うよ。それで?結月は【魔力魔法】以外には何か取ったの?」

「あぁ、【気配察知】と【格闘】を取った」

「……また、魔法使いとは思えないチョイスを」

「今更だ」


 どちらともユウが使っているのを見て欲しいと思った故のチョイスだ。

 ソロで動く時も【魔力察知】と【気配察知】があれば、先手を取られる心配はかなり減るしな。

 【格闘】は、小盾による殴打の威力を上げたかったから取った。もう正直、両手に小盾を持っての戦闘でも良い気がしてきた。ロッドさんが解雇の危機である。


「俺には結月の完成形が想像出来ないよ……」

「正直俺も予想つかないけどな。まぁそれは置いといて、戦闘に行くなら強化魔法使っても良いけど、いる?」

「おっ、それならお願いしようかな?」

「あいよ、ちょい待ち……………〖全ステータス強化〗」


 俺の言葉に呼応するかのようにロッドの先が光り、ユウの全身が淡い光に包まれた。

 「おぉ…」と感嘆の声をあげたユウはその場で跳ねたり、手を握ったりしている。

 俺としても全ステータス強化は初めて使ったので、ちょっと感慨深い。本当なら戦闘中にも使いたかったんだが、全てのステータスを強化する分、行使するのに時間がかかる…………あれ?


「へぇ、結構違うものだね。これなら殺られる心配も無さそうだ。ありがとうな、結月」

「…………」

「結月?」

「ん?あぁ、そりゃあ【強化魔法】だからな、違いが無いと困る。でも、俺のレベルだと有効時間は数分位だから、急いだ方が良いぞ」

「っと、それもそうだ。じゃあ、序盤は無双を楽しませてもらうよ」

「おう、いってらー」


 手を振ってユウの事を送り出す時も、俺は先程使った強化魔法の事について考えていた。


 魔法は行使するのには、時間がある程度かかる。使おうと決めてから、実際に発動するまでには時間差があるのだ。

 その時間は其々の魔法によって変化し、基本的に高レベルな魔法ほど行使には時間がかかり、連続使用が出来ないように調整されている。


 けれどその魔法を行使するのにかかる時間は、同じ魔法でもプレイヤー毎に違うのだ。

 魔法行使速度と呼ばれるそれは、ペリドットさんに教えてもらった様に、主に精神力ステータスによって変動し、【魔力操作補助】などのブランチによっても強化することができる。


 因みに俺の魔法行使速度だが、おそらく早い。

 とは言っても数値で見ることが出来ないため憶測だが、魔法寄りの適性を持っていて、【精神力強化】や【魔力操作補助】などの直接関わってくるようなブランチも習得しているのだ、早いと判断して良いだろう。


 さて、そんな俺が初めて強化魔法を使ったストーンヘッドラビットとの戦闘を思い出してみるが、あの時使ったのは”理力強化”と”器用さ強化”の二つの強化魔法だ。

 その二つを行使するのに掛かった時間は約4秒だった。

 これから【強化魔法】や【精神力強化】、【魔力操作補助】などのブランチレベルが上がっていけば魔法行使速度も早くなるのだろうが、これが今の俺の実力だったといって良い筈だ。

 戦闘中の4秒といえば、どれ程の隙になるか。俺は敵の攻撃をパリィするなどして時間を稼げているが、それでも難しい。それ以上の時間稼ぎは正直厳しかった。

 だから、時間の掛かる全ステータス強化は使わずにいたのだ。


 では先程の、全ステータス強化を使うのに何秒掛かったかというとーー


 ーーーーーー約6秒である。


「……明らかに、魔法行使速度が上がってるよな」


 2つの強化魔法を行使するのに4秒掛かっていたのにも関わらず、今は実質6つの強化魔法を使うのに6秒しか掛かっていない。

 明らかに、異常とも言える急上昇だった。


「……MPバーの減りも想像以上に少ない」


『HP』『MP』『SP』は目に見えるといっても数値で見えている訳ではなく、『残り何%』という見えかたなのだが、どう見てもストーンヘッドラビット戦で使った二つ強化魔法の時と同じ位しか減っていない。単純に考えても3倍以上のMPを使っているにも関わらずだ。


「何か原因がある筈……って、考える必要もないよな」


 【魔力魔法】、どう考えてもこいつ以外に理由があるとは思えない。

 この分だと最低でも、魔法行使速度とMP量はかなり強化されていそうだ。嬉しいのだが想像以上の強化で、少し怖い。


 あれか?魔力の質が統一されて扱い易くなったーとか、属性選択ができなくなった代わりにMPそのものに特化した適性になったーとか……いや、正直わからん。

 ブランチ説明には、どの様な効果があるだとか、何%の補正がかかっているかなどの明確な詳細は一切載っていない。

 説明なのに説明せずに、各プレイヤー達の想像を掻き立てる目的の文しか書かれていない。

 正解かどうかすらわからない、明確に表示されていないというのは不便なものだ。

 ーーーーーだが、


「何もわからん……最高かよTDO」


 そんなTDOのスタイルが、俺は嫌いじゃ無かった。


□ □ □ □


結月

種族 人間

称号:なし

BP: 21


メインブランチ

【召喚術 Lv1】【小盾Lv6】【ロッドLv4】【強化魔法 Lv3】【精霊魔法Lv4】【魔力察知 Lv7】【魔力付与Lv2】【魔力操作補助Lv4】【精神力強化Lv5】【器用さ強化Lv5】【魔力魔法Lv1】【格闘Lv1】【気配察知Lv1】


控えブランチ

なし


装備

頭:なし

胴:簡素な服

手:なし

下半身:簡素なズボン

足:簡素な靴

右手武器:初心者のロッド

左手武器:初心者の小盾

アクセサリー:なし


□ □ □ □

【魔力魔法】必要BP1

【格闘】必要BP5

【気配察知】必要BP4

投稿済みの話に修正を加えました。


修正には理由がありまして、前回の評価を踏まえさせて頂き、投稿した分を読み直してみたのですが……出るわ出るわ誤字脱字&不可解な文や日本語が。

自分で言うのも何ですが、どれだけ緊張していたのかとw


なので、今の自分に出来る可能な限りの修正をさせて頂きました。

これで多少は読み易くなっていれば良いのですが……誤字脱字はまだ残っているかもです。


それと評価なのですが、追加でして下さった方がいました。

しかも高評価……これは「今後に期待してるぜ!」という事なのでしょうか?

現金なものですが、とても嬉しいです。本当にありがとうございます。

未熟者ですが、試行錯誤しながら頑張らせて頂きます。

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