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首都陥落しました

◎斉 臨淄(りんし) 田単


 斉は強国だから俺が生きているうちに滅ぶことはないだろう。とか思っていたが結構まずいんじゃないか!!

 なんでも斉の周りの国々が同盟を組んで攻め込んできているようだ。

 しかも、総指揮をとっている燕の将軍楽毅は戦の指揮がうまいらしい。

 この時代、人権なんて存在しないからな。生け捕りにでもされたら捕虜として敵国まで連行されて奴隷にされてしまうだろう。


 付近の住民は、斉は強国だからいくら5ヶ国の連合軍でも恐れることはない。むしろ寄せ集めだから、連携も取れず大敗するだろうとか言ってるがそんなにうまくいくのか。

 何より俺としては、秦がいるのが怖いんだよ。


 なんといっても秦が天下を統一して、国王が皇帝を名乗る。

 一番最初の皇帝。つまりあの有名な始皇帝になるわけだ。


 なんか始皇帝って残虐な人物だったっていうイメージがあるから怖い。

 秦の捕虜になんてなったら万里の長城の工事に駆り出されてしぬまでこき使われる未来しか見えない。

 なんでせっかく転生できたのに強制労働しないといけないんだ!



「田単、何をそんなに不安そうな顔をしているんだ」

「いや、こんどの戦についてちょっとな」

「ははは、お前は心配しすぎだ。いくら兵の数が多くてもしょせん烏合の衆。それにここのところ我が国は勝ち続きの負け知らずだ。負けるわけがない」

「そうだといいんだが」


 妻の兄で、役所の同僚でもある張余も、斉が負けるとは思っていないようだ。

 俺としても斉に生まれて30年近くたってるから愛国心も多少はあるから負けてほしくはない。

 勝ってくれればいいんだが…







◎斉 済西


 楽毅率いる50万の連合軍はついに斉に到着し、侵攻を開始した。

 斉もこれに対抗して20万の軍勢を繰り出し、済西の地で激突した。


 連合軍は指揮を楽毅のもとに集めていたため、混乱することなく斉軍にあたり、瞬く間に壊滅させた。



 趙、魏、韓、秦はここで引き揚げたが、楽毅率いる燕軍10万は斉の首都臨淄を落とし、斉を滅ぼすために進軍を開始することとなった。



「楽毅将軍、いくら斉軍を破ったとはいえ、ここから先我が軍だけで大丈夫なのでしょうか」

「うむ、確かに斉は強国で我が国だけでは倒せる相手ではなかった。しかし、すでに斉の主力は破った。もはや斉にまともに戦える兵はいない。このまま臨淄を落とし、陛下の恨みを晴らすぞ」

「「はっ」」






◎斉 臨淄 田単


 やっぱり斉は負けてしまったようだ。

 だから言わんこっちゃない。

 周りの奴らも慌てて逃げる準備してるよ。俺らもつかまりたくないので逃げることになった。



「田単、どこに逃げればいいんだ」

「とりあえず俺たち家族は安平に逃げる。お前たちもこっちにくればいいんじゃないか」

「分かった。急いで準備させる」



 はあ、大丈夫かなあ。

 この時代の馬車ってすぐに車輪とか外れるんだよな。それにサスペンションないからすごい揺れるし。もしかしたらまだ逃げなきゃいけないかもしれないから、安平に着いたら、車輪と車軸補強しておこう。

 馬車が壊れて逃げ遅れて捕まるなんて嫌だもんな。


 はあ、俺の平穏な役人ライフはどうなってしまうんだろう。先が思いやれるなあ。






◎斉 臨淄


 湣王は、済西で精鋭20万が敗れたため、首都臨淄を捨て、一族重臣らと共に(きょ)に逃げ込み、それ以外の貴族や役人、一般の町人らもほかの地へと落ちていった。


 そして、抵抗もほぼないまま楽毅ら燕軍は臨淄を落とすこととなった。


 臨淄に入った楽毅は斉に奪われた、燕伝来の宝器などを奪い返した。

 これに昭王は大変喜び、自ら臨淄を訪れた。



「楽毅よ、よくぞ臨淄をおとし、さらに奪われた先祖伝来の宝器を奪い返してくれた。感謝するぞ」

「ありがたいお言葉でございます」

「うむ、そちに労に報じるため、そちを昌国君に封じる。そちはこのまま斉を平定せよ」

「ははっ、かしこまりました」



 こうして楽毅は斉平定のためさらに軍を進め、湣王や田単を追い詰めていくのであった。



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