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我が国は他国から恨みをかいまくってるようです

◎斉 臨淄 田単


 そんなわけで古代中国の斉の国に転生してしまったわけだが、俺はただの役人として生活している。

 俺も、10代前半の頃はなんとか出世して、名を残してやるとか考えはしたんだけど、実績のない俺を雇ってくれるような国はないわけよ。


 秦なんかは他国の人間でも積極的に起用して富国強兵に努めているんだけど、それにしたって、誰かに仲介してもらわないとただの下級役人や一兵卒にしかなれないだろう。


 そうならないためには王お気に入りの妃とか、側近である宦官に仲介をお願いするのがいいのだが、そういう奴らは賄賂を贈らないと動いてくれない。


 だたの下級役人の家にそんな金あるわけもなく、この手は取れない。



 まあ、そういったことをせずに地道に下っ端から活躍して出世したり、誰かの食客になって自分の価値を証明して、将軍や宰相になった人物もいるわけだから俺にも可能性がないわけではないのだろうけど、そのために今の暮らしを捨てるきにはなれなかった。

 ものすごい裕福ではないがいい暮らしができていたし、親父が役人の仕事の面倒もみてくれると言ってるのだ。

 上手くいくかもわからないのに、諸国を巡って仕官も目指すというのが馬鹿らしくなってしまった。



 役人ならある程度の生活は保障されているからな。

 それに、現在わが斉の国は湣王(びんおう)のもとで、かなり勢力を広げており、今はでは秦とともに2強国になっている。

 今の秦は、他の国家を滅ぼして、斉まで滅ぼす力はまだない。

 秦によって天下が統一されるのはまだまだ先のことだろう。

 とりあえず俺が生きている間は、強国のままであってほしいな。




「旦那様、今日の御帰りは遅いのですか」

「今日は特に予定もないからすぐに帰ってくると思うよ」

「分かりました」



 そうだ。転生してよかったことに結婚できたことがあるな。

 この嫁さんも、親父が知り合いの娘との婚儀を整えてくれた。

 まあ中級役人の嫁にくるくらいだから嫁さんの家も同じ役人の家だ。

 俺にはできすぎた嫁だ。嫁のためにも安定した収入を維持しないといけないからな。

 給料はよくはないが安定してるから俺はこのまま下級役人として一生を終えるのだろう。




◎燕


楽毅(がくき)よ、よくぞ対斉の5ヶ国の同盟を成し遂げてくれた、感謝するぞ」

「おほめに預かり光栄です、陛下」


 湣王のもとで斉が覇権を握ろうとしている中で、他国では密かに斉打倒の準備が為されていた。

 その中心となっていたのが、燕の昭王とその家臣でのちに名将とおそれられる楽毅であった。


 燕は斉により滅ぼされかけたことがあり、昭王は斉と湣王のことを深く恨んでいた。



 昭王の父である先代(かい)は政治に興味を示さず、宰相である子之(しし)に任せきりであった。

 この子之という男は野心に溢れる人物であった。これに目を付けた斉と湣王は、燕王に対し、子之に王権を譲れば、名王名君として歴史に名が残るとおだて、実行させ、子之が王となり燕王噲は臣下としてふるまうようになった。

 これに、当時太子であった昭王は激しく反対し、燕は内乱となってしまった。


 斉は太子を助けると称し、援軍を送り込んだが、この時子之軍だけでなく太子の軍にも襲い掛かり、燕王噲と子之を殺害し、太子の身柄をとらえ燕を属国とした。


 2年後に、太子は斉への条件に即位を許され、昭王となったが、謀られ父を殺され国を奪われた恨みは消えておらず、富国強兵と優秀な人材の登用を行い復讐の機会を伺っていた。


 燕は郭隗(かくかい)の指示により、彼に宮殿を与え優遇した。これにより、多くの人材が燕を訪れた。楽毅もその一人であった。


 ちなみに、物事を始めるにはまず身近なことからという意味の「隗より始めよ」という故事はこのことから来ている。



 それはさておき、燕の将軍となった楽毅は、強大な斉を倒すためには他国と共同で攻めるしかないと進言した。


 斉の湣王は傲慢な男で、強大な斉の武力で他国を恫喝するなどしていたため、燕以外の国からも恨みを買っていたため、楽毅は他国を味方につける余地は十分にあると考え、自ら趙に赴き、説得した。

 さらに魏と韓、そして西の強国秦とも盟約を結び、ついに斉打倒のための5ヶ国同盟を成し遂げた。



「それではいよいよ斉に侵攻するのか」

「はっ、宰相であった孟嘗君(もうしょうくん)も魏に亡命したようにございます。今が絶好の機会かと」

「おお、ついに斉を討てるか。楽毅頼むぞ、そちが頼りじゃ」

「はっ」

「楽毅を大将軍とし、総指揮を任せる。余の恨みを晴らしてくれ」

「かしこまりました」



 こうして燕、趙、魏、韓、秦による総勢50万ともいえる斉打倒の軍が始動したのであった。


孟嘗君は諡号ですが、分かりやすくするため使わせてもらいます

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