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2話

 現実と仮想の境界の長いローディングを終えると、そこは異世界だった。と、名作風に言ってみたくなるほど、その世界は俺にとって新鮮だった。

 自分の体はあらかじめクリエイトしておいたアバターで構成され、腰には初期武器であるサーベルが下げられている。

 写真やテレビで見たことあるような英国風の街並みに、どこか近代的な雰囲気があるようなそんな街。それが、FWO最初の街《ファーストキャピタル》の第一印象だ。

 空には巨大な飛行船、ごつい飛行戦艦など様々なものが飛び交い、空中に浮かぶ大きなテレビのようなものも見える。

 NPCたちが、突然現れたプレイヤー達に驚いているようにも見える。

 「いい街じゃん」

そんな言葉を漏らしながら、チュートリアルクエストを進める。チュートリアルと言っても、プレイヤーの感覚上は実際にその町に立っているのだから、現実で体を動かすのとほぼ同じだ。

 しかし、FWOには特徴的なシステムがある。「飛行」だ。FWOは浮遊大陸を舞台にしている。その浮遊大陸を浮かべている重力結晶の力を借りて飛ぶことができるという設定らしい。

 チュートリアルガイド曰く、浮けと念じれば浮くとのこと。

 試しに念じてみると、だんだんと足が地面から離れ、1mほど上がったところで止まった。

 「うおっ浮いた!」

 そんなすっとんきょうな声をあげてあたりを見回すと、他のプレイヤーたちも浮いてはすげえだのなんだのと騒いでいる。

 「これは一筋縄ではいかないな…… うおっ!」

 どうやら飛行時間が限界に達したらしく、俺はバランスを崩して地面に落下する。

 「っててて…… これは飛行時間を延ばさないといきなり落ちたりしそうだなぁ」

 そう呟いた俺は、残りのチュートリアルを消化するために走り出した。

 そのあとも30分ほど、クエストの受け方であるとか装備の修理方法など、総合的にプレイに必要になる知識のために、町中を走りまわった。

 「ふう…… これでチュートリアルは一通り終わったかな?」

 そばにあったベンチに座り、クエスト一覧を眺める。

 「あとは……『パーティを組もう』とか『ギルドに入ろう』とかそんなのか。パーティはあいつらと合流したときにすればいいし、ギルドも組むことになるのかなぁ」

 と、前のゲームで知り合い、このゲームも一緒にやろうと決めていた連中のことを思い出す。

 「合流は…… たしか中央広場に5時だっけ……ってもう4時45分じゃねえか!チュートリアルだけで2時間近くかかっちゃったよ!」

 急いで立ち上がり、ログインしたときの出現位置、中央広場へと走りだした。

「ったくもう無駄に広いんだからこの町は…… なんで地図が無いんだよ……」

そんなことをぼやきながら、案内板を頼りになんとか中央広場へとたどり着く。

「つ、疲れた……」

もちろん、現実の自分の体はベッドの上で寝転がっているわけで、この疲れたというのはあくまで精神的にではあるが、そう呟かずにはいられなかった。

「よっ、コウ君!」

疲れている俺は背後からの呼びかけ――コウというのは俺のキャラクターネームだ――に一瞬びくっとしたが、すぐに振り向く。

そこには、高めの身長の女プレイヤーがいた。髪はオレンジのポニーテール、スタイル良好にして頭脳明晰。彼女はベテランのMMOプレイヤーにしてベータテスト経験者、そして、俺が探していた人物だ。

「あ、レイさんお久しぶりです」

「久しぶりじゃないでしょー!昨日も別のゲームで一緒にやってたじゃん!」

「そうでした。ところで、他の連中はどこに?」

「んー……他の連中はログイン遅くなるわぁって3時前に連絡来てたけど…… まだインしてないっぽいかな」

「ふむ…… じゃあとりあえずパーティだけ組んでおきません? 俺チュートリアルのパーティクエまだなんで」

「ほいほい」

PT申請を送ると、すぐに承認された。レイさんとパーティを組んだことにより、クエストが完了し、いくばくかの報酬を得る。

「そいえばコウ君、武器サーベルってことはスキルは片手剣?」

「そっすね、レイさんは……やっぱりヒーラーですか」

「そやよー いつも通りいつも通り」

そう、彼女はどのゲームでも回復役を行い、後方から適切な指示を飛ばす役割を好んでいた。その指揮はいつも的確で、何度窮地を助けられたことか。

「んじゃレイさん、とりあえず狩り行きますかー」

「そやねー」

と、立ち上がった瞬間、シャランという軽快な音とともに、メッセージの着信があった。


俺たちにとって現実が現実であり、FWOが仮想であったのは、まさしくこの瞬間までだった。

仲間のレイさん登場

次回 ログアウト不可

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