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第一話 一章

 日の光がさすことのない見慣れた空間。そろそろここで生活するのは三年ぐらいになるだろうか。

 エスタシオン王国最大の監獄ノルテマルイスマ。ここには毎日色々な罪人が連れてこられる。

 俺も罪人としてここにぶち込まれた。

 懲役12000年。

 エルフィムでもそこまで長生きはしない。実質無期懲役である。

 最初は暇潰し程度に数えていたが飽きてやめた。

(昨日は22時30分くらいに寝たから5時30分ぐらいだな)

 体内時計で時間を確認する。

 これは俺の特技の一つで自分の睡眠時間、睡眠の深さを調節して眠ることができる。

 ついでに周りに神経を張り巡らしながら眠るるなんてこともできる。

(そろそろ起き上がるか)

 身体起こして軽く伸びをする。そのままに立ち上がり布団をたたんで端に寄せる。

 朝の点呼まで時間がある。

 朝の点呼は6時きっかりに毎回行われている。その後は移動して食事があり、労働、勉学といろいろ行われる。

(時間はまだあるし軽く日課でもこなすとしよう)

 部屋の中央に座り込み目を閉じる。身体中に神経を張り巡らせる。

(頭部…チェック、胸部…チェック、後背部…チェック、腹部……)

 自分の身体の全箇所の情報をくまなく得る。こうやって身体に支障をないか調べてく。

(…チェック、今日も可もなく不可もなくか)

 確認し終わるとゆっくりと目を開け一息つく。そのまま右手を首元に持っていき機械をさする。

(何年たってもこれには慣れないな)

 ここにぶち込まれた時に付けられた物で魔力に反応する機械だ。

 これをつけた状態で許可なく魔術をおこなおうとすると警告音が鳴る。そのまま魔術を発動させると爆発するとゆうとんでもない代物だ。

 看守の説明だと脱走対策らしい。

 実際に警告音が鳴ってるとこも爆発してるとこも見た事があるのだが……。

 あれはもう二度と見なくないな。

 頭が飛び散る姿は一度見たら、その情景は記憶に鮮明に焼き付き忘れることができない。

 その日はまともに食事が喉をとおらなかった。

(あぁ嫌なこと思い出しちまった。こんな事考えてないで日課の続きさっさと終わらせよう)

 機械をさするのを止めて立ち上がりストレッチと筋トレを始める。

 外に出る事がない以上無駄な気もするが、昔から続けてた日課の為かなんとなく今も続けてる。

 一通りメニューをこなしてその場に座り再び息をつく。

(そろそろか?)

 そう考えるていると部屋の外から看守の声が響く。

「点呼の時間だ!部屋から出て来い!!」

 その声とほぼ同時に部屋の扉が開かれる。

 俺は立ち上がり部屋を素早く出てゆく。

 部屋を出ると俺と同じ囚人が並んでおり、いつもどうり列の中に入っていく。

 奥の方から看守の声と囚人の声が聞こえる。どうやら点呼は始まっているようだ。

 看守が次々と確認をとっていき俺の目の前までくる。

「0069番」

「はいっ!!」

「よしっちゃんといるな」

 いるのを確認して紙にチェックを付けそのまま次へいく。

 一通り確認を終えたのか囚人達を先導し部屋を移動する。

 次はとうとう至福の時間だ。



 別の部屋につくと結構な数の囚人が何列になってか並んでいる。

 端に置いてあるトレイをとり奥の列に並ぶ。

 自分の番になるとトレイを目の前に置くそこに今日の朝食が置かれていく。

 今日の朝食は米、味噌汁、野菜炒め、それと焼き魚である。

 実に美味しいそうだ。

 ここでの生活は娯楽が特に無く必然的に食事が至福の時間となる。

 俺は空いてる見つけ席に座って食事をとり始める。

「ロック隣座らせてもらうぜ」

 至福の時間は終わったらしい。

「別の席に行ってくれ」

「もう遅いよー」

 こいつは囚人No.0893。通称ヤクさん。

 見た目はとても好青年のヒューマンなんだが……とてもうざい。

 確か記憶が正しければ、神器の違法取引、危険薬物の取引で懲役150年とゆうとんでもない奴だ。

「これでここでの飯も最後か」

「……はっ?」

 耳を一瞬うたがった。

 聞き間違えじゃなかったら確か最後って言ったよな。

「最後ってどういうことだ?明日死刑にでもなるのか?」

「ん?言ってなかったけ?俺、今日の昼にここでれるから」

「今初めて聞いたからな!」

 色々とおかしい。こいつが来たのは確か一年ぐらい前だったはず。ここを解放されるには早すぎるのだが……一つだけ思い当たるふしがある。

「……闘技場か?」

「そうゆうこと」

 ここの監獄には闘技場がある。囚人同士が一対一で殺し合い勝つと相手の分だけ減刑されるシステムだ。

 俺は一度も出たことはないのだが、最近では貴族達の賭場としても人気があるらしい。

「俺が居なくなってロックは寂しい?」

 突然変な事を聞いてくる。実にうざったらしい。

「むしろせいせいするね」

「それひどくない!?」

「だってうぜぇし」

「ひどっ!」

 つい隠していない本音が漏れてしまった。

 まぁいいか。

「ロックも強いんだから闘技場出ればいいじゃん」

「めんどくせーんだよ」

「面倒って勝てば減刑だよ?連勝で自由だよ?」

 まぁ当然の疑問だろうな。

 強いなら闘技場に参加して連勝すれば自由となる。

 なるんだが俺は、

「興味ねぇんだよ」

「興味がないって、自由になりたくないの?」

「自由になりたくないわけじゃないんだが……」

「ならなんでよ?」

「大前提で必要の無いころしは好きじゃねぇんだ」

「えっ?」

 ヤクさんは俺の言葉に呆然としている。

(まぁそうゆう反応になるよな)

 当然といえば当然の反応だな。俺がそもそもここにぶち込まれた理由が暗殺だからな。

 苦笑いをしながら話を続ける。

「まぁそれに、ここでの生活嫌いじゃねぇしな」

 これも本心だった。

 外にでたら働いて金を稼がなければならない。元囚人を雇う物好きもいないだろう。

 それに《異端者》とゆうリスクもある。

 ここにいる限りは労働はあるが飯もちゃんと出て、何よりさっきのリスクがない。

 だからあまり出たいとも思わないのだ。

「それならしょうがないね」

 ヤクさんはなんとなく理由を察したのか笑いながら食事に戻る。

「そういやお前ここ出で何すんだ?」

「知人が王都で万事屋やっているからそれを手伝う予定かな」

「ふーん。まぁ頑張れよ」

「うん!」

 心の中ででもこいつの門出を祝福してやるか。そう思いながら食事を続ける。



 飯を食い終わってそろそろトレイを片付けようとしたとき看守の声が響きわたる

「0069番はいるか!」

「はい!」

 とても嫌な予感。

 めんどいのはゴメンだぞ。

 そう思いながらもトレイを一旦その場に置き看守の前まで走っていく。

「0069番だな?飯は食い終わったか?」

「食い終わりましたが…なんでしょうか?」

「貴様に面会人が来ている。ついてこい」

 有無を言わさずそのまま看守に連れ去られていく。

 とてもめんどい予感である。ここにぶち込まれてから一度も面会人なんて来たことがない。初めての面会人である。

 いい出来事の次は悪い出来事なんてごめんだぞ。

 そう思っていると面会室にたどり着く。

 中に入ってみるとガラス越しに20代ぐらいであろう漆黒のドレスを身にまとったヒューマンの女性が座っており、その奥には金色の髪をしたエルフィムの女性が立っていた。エルフィムの女性の方は制服に腰に剣をぶら下げこちらを睨んでいる。

(あいつの持っているのありゃ神器だな。もしかして《守護者》か?)

 《守護者》とは本来《異端者》と戦うための人達であり全員が一つ以上神器を所持している。

 逆に《守護者》以外の者が神器を扱うことどころか所持する事を禁じられている。

(人類の救世主さまを警護に使うこいつ何者だ)

 警戒レベルが一気に上限まで達する。

 不意にドレスの女性の口が開く。

「お主がカムイくんかね?」

「ばばぁ何者だ?」

 軽く殺気を乗せて返してみる。

「ばばぁではまだないんだがね」

 不意の殺気のためかエルフィムの女性は震えたのだが

(あのばばぁこの殺気を軽く受け流しやがった)

 殺気とゆうのはそう簡単に受け流せるものではない。首にナイフをあてられれば怯えるように普通は反応するもんだ。

「ばばぁ本気で何者だ」

 二度目の質問に対しエルフィムの女性の声が響く

「咎人の分際でアルフォンス様に失礼だぞ。今すぐ非礼を詫びろ」

 今アルフォンスと言ったか?

 アルフォンスと言う名は記憶に残っている。元老院の一人にエリス・アルフォンスと言う名がいる。

 思い出した。確かにあの時こいつの顔を見た事がある。それに元老院なら《守護者》が警護にいるのも納得がいく。

 だけどどういうことだ?

「もう一度聞くがお主がカムイくんかね?」

「……そうだ」

 アルフォンスの声に思考が一時中断される。

「そうか。実によかった。見た目が少々変わっていて間違っておったらどうしようかと」

「あんたは三年前と見た目が全く変わっていないな」

「美しいままと褒めてもいいんじゃよ?」

 そうなのだ。容姿が全く変わっていないのだ。三年ぐらい経てば普通は多少の違いがある。それが見当たらない。

 一体こいつの体はどうなってるんだ?

…今はそんな事を考えてもしょうがないんだが。

 さっさと要件を聞いて終わらせよう。

「元老院様がいったいなんの御用で?」

「もっと気軽にエリスと呼んでくれていいんじゃよ?」

 なんだろう。

 この人とてもめんどくさい。

「その元老院様はなんの御用で?」

 皮肉を込めて再び尋ねる。

「もっと気軽でいいんじゃがのぅ」

 変なことをぶつぶついっている。

(本当に面倒だなこの人!?)

 さすがに苦笑いがこぼれる。

 アルフォンスの後ろにいた女性も呆れてなのか

「アルフォンス様早く要件を」

「おぉそうじゃった。ユーリちゃん

 よ、そう急かすでない」

 アルフォンスがこちらに向き直り再び口を開く。

「単刀直入に聞く。ここから出るつもりはあらんかね?」

 ……はっ?

 こいつ何を言ってるんだ?

 驚きのあまりに思考がフリーズする。

 ユーリと呼ばれた女性も要件を知らなかったのか口を開いたまま固まっている。

「どういうことだ?」

 なんとか思考を取り戻し尋ねる。

「最近どうも《異端者》の出現率が増えておってのぅ現状《守護者》がどの国も足りないのじゃよ。どうにか出来ないかと考えておったら君のことを思い出してな、ここに来てみたとゆうわけじゃ」

 なるほど理由は理解した。だが気になることがいくつかある。

「俺には後約11997年の懲役がある。それはどうするつもりだ?」

 ユーリと呼ばれた女性はそれを聞いて再び固まっている。それを見てふと疑問がわく。

(あいつ俺が何者か知らないのか?)

 まぁ今は気にしないでおこう。

 顔おアルフォンスに向ける。

「どうするつもりだ?」

「それに至っては元老院で条件三つを決めてある」

「その条件はなんだ?」

「一つじゃが《異端者》を倒すことじゃな。そのためにお主を呼んだんだからのぅ」

 これは当然といえば当然だろう。人手不足で俺が呼ばれるんだ仕事ぐらいしろって感じだな。

「わかった続けてくれ」

「二つ目じゃがこっちも簡単じゃな。依頼がきた時にその仕事を受け持つことじゃ」

 まぁこれも理解はできる。《守護者》の仕事は《異端者》の討伐だけじゃない。警護の依頼から調査の依頼など色々ある。

 要は《守護者》としてもちゃんとやれってことだろう。

「最後の条件をってくれ」

「三つ目はのぅうちの学院、王都学院に編入してもらいその寮で暮らしてもらう」

「はぁっ!?」

 あまりの事につい声をあらげる。

 嫌な予感はこれかよ。

「まぁ話をきけ。王都学院はそもそも《守護者》を養成する学院じゃ。わしはそこの王都学院で学院長やっておる。ようは監視じゃな。それにお主の年も16じゃろ?お主の年なら学院に通っていてもおかしくはないんじゃないかのぅ」

 頭が痛くなりそうだ。

 要するに学院に通いながら《守護者》としての仕事しろってことか?

 とても面倒だぞ。

 あれ?でも待て一つ気になることがある。

「元老院様聞きたい事が三つある」

「なんじゃ?ゆってみろ」

「一つは懲役の事だ。いくらなんでも死ぬまで学院に通い続けろってことじゃないんだろ?」

 さっきの話だと懲役の事は一つも触れていなかった。懲役はどうするってきいたはずなのに。

「それじゃが猶予は卒業までじゃ。その期間中に《異端者》の討伐、また依頼の達成による報酬がそのまま減刑となる。亜人級なら5年、魔人級なら10年ってな感じじゃな。そこらは強さによって正確にはんだんするがのぅ」

 亜人級とゆうのは《異端者》の中でも一般兵の部類だあまり強くはないが数で攻めてくる。魔人級はその亜人級の指揮官みたいなものだ。魔人級から上になってくると強さがまばらになったいく。

 それを踏まえた上で亜人級に5年とゆうのはある意味破格かもしれない。

「じゃあ次の質問だ。さっき学院に通うっていったがその間の金はどうするんだ?《守護者》と同じって考えていいのか?」

「その質問は簡単じゃな大体《守護者》の7割額と考えてくれればいい」

 7割か、まぁ遊び暮らせはできないが普通に生活できる額だな。

「最後の質問だが、神器はどうするつもりだ?俺のは全て没収されたんだが?」

「その質問は想定内じゃ。ちゃんと持ってきとるぞ。ほれ」

 ガラス越しに一つの神器がおかれた。

 それはJの文字が刻まれたハンティングナイフ。名をジャックナイフ。俺が一番最初っから使ってる英霊級神器だ。

 神器にはそもそも種類があり、神格級、英霊級、幻獣級、精霊級の主に4つある。どれが一概に強いとは言えないが高位の神器は人型になれるうえに意思疎通もできる。

 英霊級はほかの神器と違って少し特殊で旧時代の英雄の魂がそのまま宿っている。英雄の条件は広く後の時代に知られること。また多くに崇拝されることが条件だ。

「それとじゃ」

「まだあるのか?」

「こっちは今すぐ渡すわけじゃないが、これからの功績によっては他の神器も返していいと思っとる。どうじゃ破格の条件じゃろ?」

 確かに破格の条件ではある。

 懲役を消す機会、神器を取り戻す機会、すべてが破格なのだが。

「いい話だな」

「そうじゃろそうじゃろ」


「だが断らせてもらう」


 俺は言いきった。

「なぜじゃ?これほど破格なのに?」

 驚愕を顔に浮かべながらアルフォンスはすぐさま質問してくる。

「理由は二つですよ。一つは俺はここでの生活が嫌じゃないってこと」

 そりゃそうだ。リスクを負わなくても飯は食える。ここにいる限りはある意味安全だ。

 そして俺は続ける

「そして二つ目は俺がここを出て学院に入学することを認めたくない人がいるからね」

「……もしかして」

「えぇ、そうでしょう?ユーリさんとやら」

 ユーリと呼ばれた女性はさっきからずっとアルフォンスとの会話で何かを言おうとしていた。だがタイミングが掴めず言えないでいたのだ。

「ユーリちゃんよ、そうなのか?」

 アルフォンスに尋ねられユーリが俯きながらこたえる

「…私は反対ですよ。アルフォンス様」

「理由を申してみよ」

「咎人と同じ学院に通うのが大前提で嫌です」

 当然の反応である。同じ学院とゆうのが多少驚きではあるが、普通に考えれば誰も罪人と同じ学院で生活はしたくない。

「それにこんな咎人を呼ばなくても《異端者》は私達でなんとかします」

 もう一つは純粋なプライドだったか。

 これも俺の強さを知らないなら当然っちゃ当然なんだが…。

(本当に俺のことを知らないみたいだな。まぁわざわざいう必要もねぇな)

「うむ、困ったなぁ」

 アルフォンスは頭を抱えながらうなだれている。そして何か閃いたのかにこやかになっている。

「二人とも確認したいことがあるのじゃが?」

「なんだ?」「なんですか?」

「まずカムイくんはユーリちゃんが納得すれば最悪妥協はできるんじゃな?それにこれは陛下から直々の頼みじゃ」

「…っち」

全くもって聞いてない。

この場合はどうせ断っても無駄に終わる。

「少し編入に条件を加えられるなら」

「かまわんぞ」

 そのままアルフォンスはユーリと呼ばれてる女性の方を向いて問いかける。

「ユーリちゃんはカムイくんが強いか弱いか分からないから反対。ユーリちゃんより強ければ納得するのかな?」

 この流れは何かとても嫌な予感がする。

「まぁありえないですけど、私より強いなら納得はしますね」

 それを聞いたアルフォンスは満足そうな顔をしている。

 ……まさか。

 このパターンって

「じゃあカムイくんにはユーリちゃんと決闘してもらって強さを示してもおうかのぅ」

 ですよねー!?

「嫌ですよ!めんどくさい」

 ついそのまま本音が出てしまう。

「もしかしてカムイくん女の子に負けちゃうのが怖いのかい?」

 あっなんかこの人すげぇ腹立つ。なんだろうそれに凄いめんどくさい。

「もぅそれでいいよ、本当にめんどうだから」

「ほぉぅ?血塗「その名で呼ぶのはやめろ!」」

 アルフォンスの声を遮って叫ぶ。

「いいだろう挑発にのってやる。ただし条件が二つだ」

「なんじゃいってみろ」

「一つはこの首の機械外してもらう、魔力が一切使えないのは困る」

「まぁそれは了承じゃな」

 アルフォンスが頷くのを確認してそのまま続ける。

「二つ目は場所だ。ここの監獄には闘技場がある。あそこで夢想結界をはってもらう」

 夢想結界とは傷痛みなどのダメージを受けるが、結界がとけるとダメージがあとかたもなく消えるとゆう代物である。

「当然それも了承じゃな」

 ユーリとやらも同様に頷く。

 お互い了承したところで闘技場に移動し始めた。



 闘技場に着くとアルフォンスが結界の準備を始めている。

 俺はとゆうと首についた機械を約三年ぶりに外してもらい魔力の感覚を確かめていた。

 ゆっくりと目を閉じて身体に全神経を集中させる。身体中の血管をイメージしてそこに魔力を流すイメージをする。今度はその魔力を纏うイメージをする。すると身体全体から淡い光が漏れる。

 これは魔術また神器を使うための基礎中の基礎でこれができないと魔術どころか神器すら扱えない。

(久しく魔力ねっていないから感覚は若干にぶっているか。まぁ支障はないかな)

 特に問題ないことを確認して次に神器に魔力を流すイメージをする。すると神器が淡い光をはなち段々と光が強まってくる。その光は段々と人の形になっていき光が収まりそこに黒と赤のドレスを身に纏った一人の少女が現れる。

「やぁ、久しぶりだね我が主よ」

 それが少女の最初の言葉だった。彼女は神器に宿った英霊の魂である。名前はジャック。

「何年ぶりかなこの姿で出てこれるのは?」

「三年ぶりぐらいじゃね」

「そうかそんなにたつのか…」

 懐かしむような目でこちらを見つめる。何かに気づいたのか聞いてくる。

「ちゃんと言いつけ通り髪をのばしてるね」

「まぁあくまでもアリスを継ぐものだからな」

「我が子孫はちゃんと伝えてるようだね」

 そう彼女は俺のご先祖様である。旧時代に人殺しを続けた英雄である。そしてこの神器は彼女が使っていたものであり、そのまま託せれてきたものでもある。

「ところで今日は何の仕事だい?」

「人殺しだよ。まぁ夢想結界内だがな」

「人を斬れるのはいいね。目標は誰だい?」

「あそこのエルフィムの少女だよ」

 そう言ってユーリとやらを指をさす。

「女性かい?とても好みだよ。娼婦だとなおよしだね」

 半眼でジャックを睨む。

 彼女はそれを意に介さず言葉をつなげる。

「好みを選んでくれたのかい?」

「たまたまだ」

 ジャックが一人で興奮しているので放置することにする。興奮してるときは特にめんどくさい。

 ジャックに呆れていると夢想結界が構築されていく。

 どうやら準備ができたらしい。

「ジャック行くぞ準備はいいな」

「我が魂は我が主と共に」

 そう言うとジャックはナイフの形に戻っていく。そのナイフを握り歩き出す。規定の位置につくとユーリとやらは既に準備ができてるようで武器を構える。

「ごめんな」

 不意の俺の言葉に相手はきょとんとする。だが彼女は剣を握り直しなおしこちらに問い掛ける。

「なんのことですか?」

「これから殺すけど痛みはないようにするから」

「私は咎人程度に殺される剣を持ち合わせてい無い!」

 彼女は声を荒らげる。その言葉を聞き嫌々ながらも俺は武器を構える。既にお互いに間合いを測り始めてる。

 それを見てタイミングをアルフォンスが告げる。

「はじめ!」

 その合図と同時に彼女は刺突の構えをとりこちらに向かってくる。

 速い!!

全力で一撃で仕留めるつもりできている。

きっと常人でここで速度を捉えられずやられていただろう。

だが相手がわるかった。

(暗殺技…影縫い)

 そして勝負は決まった。

 彼女の剣は空を突き、それと同時に彼女は前に倒れこむ。

 「えっ……うそ?」

 何をされたかもわからないまま彼女は自分の胸に開いた穴を触り意識がなくなる。

 暗殺技の一つ影縫い。自分の体を地面すれすれまで倒し相手の死角に入り込む技。そしてその状態から的確に痛覚を避け心臓を突き刺した。痛みがないから何をされたかもわからない。

(弱い訳じゃないが動きが真っ直ぐすぎたな)

 終わったのを確認しアルフォンスがこっちに近付いてくる。

 「結果は明らかじゃのぅ。これでユーリちゃんも納得するじゃろ。学院にきてくれるね?」

 「めんどうだが、そもそも最初っから拒否権は無いんだろう?」

 ケラケラと笑うアルフォンス。

 俺の王都学院編入がここできまった。


  〜残り懲役11997年〜

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