悪役令嬢はファッションの道を行く4
ここは薔薇革命と呼ばれる乙女ゲーの世界、何故か私はこの世界で生きていて、色々あって敵対するはずの主人公サヤと協力して乙女ゲーにファッション革命を起こそうとしていた。
本当だったらサヤには毎日働いてもらいたいけど、学校に行かせている関係もあり、金曜の夜から日曜までで暇な時に来てもらっている。ただ、平日でも時間を見て来てくれるので色々助かっている。
だが、私には懸念があった。
愛情度のくだりだ。※3を参照。
数々の美男子をおとしていき、最終的にはホニャララして篭絡する天然悪女のサヤだ。いままでミレディルートが無かったとしても、一人歩きした世界の中ではそんなもの関係なくなっているはずだ。
「ミレディさまっ! 新しいデザインできました」
サヤが紙に描いた絵を見せてきて、私の反応を花が咲く前の期待感のある笑顔で待っていた。
「良いデザインね。さっそくアルスに見せてくるわ」
「ミレディさまに喜んでいただけて嬉しいです」
太陽のように笑顔が輝いた。
眩しくて直視が出来ない!
私の汚れた心に染み渡る……く、くそっ……眼が、眼がー!
「いつもありがとうね。サヤ」
また、笑っている。
あー、ちょーかわいいー。
妹に欲しかったー。
アルスの仕事場に行くと、あらたにかき集めた人材がいた。ただし、アルスの独断と偏見で集めたので偏りがあった。
全員、女奴隷でウェアキャットだった。
アルスは執事服、雌猫たちはメイド服、それぞれ仕事着の上にエプロンをつけて作業をしている。一応服屋兼貴族なのでメイド服には気を使った。ゲームでは再現されていないので、現実にあった習慣を再現した。まず午前と午後で服を替え、午前中は赤薔薇の模様の入ったコットンのドレス、午後からは蒼ざめたドレスとした。キャップはレースを主体とした飾りとして、普通ならキャップで階級の差をつけるのだろうけど、そこには眼をつむった。
雌猫たちを雇って、しばらくして周囲の家から反響があった。メイド服が可愛いと注文が殺到したため、最近やっとお金にも余裕が出て来ていた。結果オーライと言いたいけど、私の方針は「ただしイケメンに限る」だったんだけどなー。問題は雌猫たちが意外と可愛いという事だ。私もたまに喉を撫でてゴロゴロさせて癒されているけど、どう考えてもアルスの趣味で集めたよね? と言う感じだ。
「はい、新しいデザイン」
「ほー、相変わらず美しい模様ですね」
アルスの執事服は燕尾服で黒ネクタイだった。紳士とした雰囲気の銀色の美少年だけど、採用基準は欲にまみれたものだった。
「ところで、あの計画はどうしますか?」
あの計画というのはロココのことだ。※3。服のデザインにも女性的な装飾を施しているけど、ロココの特徴は家の内装にもあった。そう、内装だ。
ここに金目のものが何もない館が存在する。
私の計画は館の一部分をロココ化して、館を一般に開放することでいろんな人に見てもらおうと言う計画だった。庶民は貴族の暮らしぶりを知らないだろうし、新興の服屋がどのように仕事をしているか見てみたいだろう。そう言うのを見てきたついでに、今まで見たことの無い内装を見ることになる。
あーカッコイー、お母さん、欲しいよー宣伝大作戦だ。
ただロココの特徴として高価な鏡が多用されているので、まだ館の一部分しか内装は完成していなかった。もう少し儲けて内装を整えてから公開しようと思っていた。
「そうですか。となると、しばらくはこのまま仕事を続けていればいいですか?」
「週末に行きたいところがあるのよね」
「君の瞳に乾杯」
……キルヒアイスの野郎が、何故ここにいる? 私はアルスとサヤを連れて館の外へ出ると、久し振りの登場のキルヒアイスがいた。元婚約者前で、ワインを片手にサヤに向って口説いていた。色々と言いたいことはあるが、まず最初に映画カサブランカの名言をパクっているのに腹が立った。お前のような軟弱者にあの台詞を語る資格は無い、あの言葉を言っていいのは漢の中の漢だけだ。
「こ、困ります。ここまで来られては」
「何を言うか。俺の愛は止まるところを知らない」
元婚約者の前でも止まれないのか、恥を知らない男キルヒアイスよ。
「せっかくの休みなのだから、俺と一緒にテニスを」
ちなみにスポーツとしてテニスがあります。
「嫌です! 私はミレディ様と行くの! 離して!」
見たか、愛情度10よ。これが80の実力だ。
「面倒だから行こうか、アルス」
「そうですね。お嬢様」
しばらく歩いていると、後ろからサヤとキルヒアイスが追いかけてきた。
サヤはともかくお前まで来るのかキルヒアイスよ。
私たちが向かったのは街から外れた校外だった。坂道を何度か繰り返して、目の前に盆地が現れた。見渡す限りに緑が広がっているはずなのに、そこには白が広がっていた。
毛織物や絹織物が野原に果てまで広げられていた。
「これは?」
「あれ、知らないの? 漂白しているのよ」
白の間を女たちがひしゃくで水を絶えずかけている。野原の露にさらして、光合成による酸素にさらすことで漂白される。この野ざらしの漂白は西洋では数百年前まで行われていた。
「ほー、こうやって白くしているんですね」
「そうよ。凄いわよね。白への執着って」
日本にいたときには考えられなかったけど、実際目の前に布が広がり、汗水流しながら布をぬらしている女たちを見ると、人間の果てし無い欲望にため息がでた。
その終着点に、塩素による白への追求へと繋がる。
ここまで言えば分かると思うけど、私は塩素をこの世界に流行らせようとしていた。なので、今回、どのようにして漂白しているか確かめに来た。というのもレースは白が命だった。
白がより至純なら、再び私たちのレース生地に希少価値が出る。
「アルス、今度は錬金術師を探して」
「えっ、また何かするんですか」
錬金術師というと怪しい人間と思うかも知れないけど、有名なマイセンも錬金術師が産みだした。私は科学者の前身に錬金術師がいると思っている。
「そーよ、また忙しくなるわよ」
「有給をください。お嬢様」
「駄目よ」
キルヒアイスとサヤが言い争いながら、私たちについて来ていた。
私は何となくサヤのステータス画面を開き、愛情度を確認してみた。
愛情度は100がMAXである。
キルヒアイス:5。
父親:50。
ミレディ:165。
……ば、ばぐっている……カンストしていないよ……。
ますます私ルートに近づいているのを、ひそかに恐怖しながら私たちは館へ帰った。
連載にはしないがネタが続く限り続く。