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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

shampoo

作者: 有末鈴

パソコンから発掘したので載せてみました。

自分でも書いたのを忘れてたほど昔の作品。

(15年くらい前? 主人公の名字がたぶんその頃住んでた地名だから)

読んでて新鮮に楽しめました。(自分で書いたくせに~)


なんか書いた当初シャンプーのCMで福山雅治さんが、「○○ってやったッ」って恍惚としていうものあったらしい…。

それに萌えて書いた小説らしいです。

お楽しみ頂けたら幸いです♪

「やらせて下さいッ」

 その瞬間、富里彰は産まれて初めて背筋が凍るっていうことを経験した。

 夏場になると、TVじゃオカルト番組が恒例になる。心霊写真とか、そういうのをみんなで眺めて、「背筋が凍りますね~」なんてコメント良く聞く。それがどういう状態なのか実感したのだ。



「…アキラ先輩」

「アレ、成田? あ、お前、鍵当番? ゴメン、すぐ済ますから」

 シャワー室でガシガシと頭を洗ってる最中に、扉の上から声を掛けられた。バスケット部後輩の成田雅洋だ。

 富里の通う学校には、運動部員達の為のシャワー室が完備されている。

 壁際にずらっと七つ、個室が並ぶ作りになってるが、各々の扉が中途半端に低い。トイレのようにほぼ全面ある扉じゃなく、上は肩ぐらいで下は膝ぐらいまでしか隠れない扉だ。

 まぁ普通はそれで支障ない。ただし、バスケ部員の中でも極めて背の高い成田のように、二百センチ近い身長をしてる奴が扉の前に立つと、中にいる者は全身丸見えになってしまう。男同士だからどうってことはないといえ、覗かれるのは気恥ずかしい。

 それでも、シャワー室があるだけありがたかった。

 通学途中で可愛い女の子との出会いがないとも限らないのだ。お年頃の男の子にとっては、汗くさいまま電車に乗るのは少し恥ずかしい。

 そういうわけで、大半の運動部員はここを利用している。いつもなら、込み合うシャワー室だったが、今日は富里の貸し切り状態になっていた。というのも、部活でしっかり汗を流した後、監督に来週の練習試合のことで話があると呼ばれて、出遅れてしまった所為である。

「あの…」

「んー。なんだぁ?」

「あの…」

 いつもは結構歯切れのいいしゃべり方をする成田が言い淀むなんて変だった。

 早く帰りたいのかもしれない。

 鍵当番は、運動部一年が順番に持ち回りでやっている。仕事はボイラーの停止とシャワー室の戸締まり。つまり、鍵当番の成田は、富里が帰り支度を終えるまで帰れないのだ。

 見たいテレビがある。彼女との待ち合わせに遅れそう。色々と理由は思いつく。ただし、それを先輩である富里に告げるのは勇気がいるだろう。

「あ、悪い。なんだったら、鍵置いていってくれれば俺閉めるけど?」

 そう言いながら、富里は適当なところで頭を洗う手を止める。どうせ家に帰ればもう一回風呂に入るのだ。そんなにしっかり洗わなくても、汗さえ適当に流れてればいい。

 そう思って、シャンプーで泡立つ頭をシャワーで流し始めたときだった。

「やらせて下さいッ」

 いきなり、成田が扉を開け放った。もちろん、富里は硬直する。

「えぇ?!」

 頭の中で、「やらせて」が「犯らせて」に即座に変換された。自分はこれ以上はないくらい無防備な裸だ。しかも成田は後輩とはいえ、富里よりも二十センチほど背が高い。これは体力にも正比例する。どう考えても、不利な状態だった。

「ち、ちょっと待て。血迷うなっ」

 狭いシャワーブースでは、後ろの下がってもすぐに壁が来る。血肉も凍る富里の躰に、暖かいお湯が降り注いた。流れ落ちたシャンプーの泡が目に入ったけれど、痛いなどと感じてる余裕もない。

「お願いです、やらせてください。もう限界なんですっ」

 成田はすでに制服を着込んでいたが、濡れることも厭わずにシャワーブースに脚を踏み入れてきた。

「げ、限界って。待てって、待て。俺は男だぞ?!」

「見ればわかります」

 真面目な顔で頷く成田に富里は、見るな!と叫び出しそうになった。

「前から、見る度に思ってたんです。すごい、こうそそるというか…。俺の好みなんですよ」

 だからと言われて、はいそうですかと頷ける代物ではない。

 前から? 見る度? 

 そんな昔から、成田は俺を狙っていたのかと呆然となった。そして、自分が男に「そそる」とか「好みだ」とか言われたことに恐怖する。

 バスケ部員にしては身長が低いとはいえ、一般高校生男子としては決して遜色のある躰つきをしているわけではない。筋肉もそこそこついている。

 これで、自分がすごい美少年だったとかいうなら理解も出来るが、富里はすごいブ男というわけではないが、十人並みというか、どこにでも転がっているような平凡な顔だった。

 いったい成田が、自分のどこを見て「そそる」とか「好みだ」とか思ったのかわからない。

「いやだ、絶対いやだ。俺は同じやられるなら女の子の方がいいっ」

 女の子が相手だったら、やられるのではなく、富里がやる方だろう。しかし、パニックに陥った頭にはもうそんなことはどうでもいいことになっていた。

「…女より、男の方が気持ちいいんですよ。知らないんですか?」

 馬鹿だなぁと、不適に笑う成田に対して、知りたくなーい!と富里は心の中で叫んだ。

「特に俺、結構大きいですからね。気持ち良いですよ、絶対クセになりますって」

 目の前で、両手をワキワキしながら成田が微笑む。

 大きいのか。やっぱり、大きいんだぁぁぁ。

 富里は思わず想像して青くなった。そんなもの想像しなくて良いし、したくもないのに、怖いもの見たさというのか。つい、視線がそこにいってしまう。

「ク、クセになんかなりたくねーよっ」

「じゃあ、一回。とりあえず、一回だけ。ね、ね、ね、一回だけならいいでしょう?」

 どうして、とりあえずで一回しなきゃならないんだと思う。さすがに富里もどんどん腹が立ってきた。だいたい運動部員の縦割り社会を考えると、先輩の富里が後輩の成田に犯られるのはおかしい。

「だ、だったら俺がやる。やられるくらいなら、やる方がマシだ!」

 どうしても絶対にしなければならないのなら、自分がやる。それが筋というものだと息込んだ富里をあっさりと成田は切って捨てる。

「アキラ先輩、上手なんですか?」

「う…っ」

 疑わしそうな目。思わず言葉に詰まる。

 男として、一番辛いところを突かれてしまった。富里もこれには、がっくりときてしまう。なんだかもう、反論の余地すらないという感じだ。

「優しくしますから。絶対に後悔させません」

 成田が安心させるように、ゆっくりとした口調で宥めにかかる。

 もうダメだと、富里も力を抜いて成田の伸びてくる手に自分を任した。



「気持ちいいでしょう?」

「…」

「あれ、気持ちよくないですか?」

「…」

「アキラ先輩ってば。気持ちいいんでしょ?」

「…いいよっ」

 やけくそに怒鳴った富里に、成田は良かったと微笑む。

 どうしてこんなことになってるのだか。今、富里は成田にシャワーブース内で洗髪されていた。

「俺ね、髪フェチっていうか。こう綺麗な髪の毛洗うのがすごい好きなんですよ」

「あ、そ」

 嬉しそうに自分の頭を洗う成田に、富里は溜息をつく。

「アキラ先輩の髪の毛、めちゃくちゃサラサラで天使の輪とかあって。すごい好みだったんですよねぇ」

「ふーん」

 サラサラだろうが、天使の輪があろうが、もうどうでもいい。

「なのに、アキラ先輩。めちゃくちゃ髪の毛に気を使わないでしょ? いつも適当な洗い方だし。もう気になって気になって」

「そりゃ悪かったな」

 まだまだフサフサとしている髪だ。大事に扱わなければなくなってしまう代物でもない。髪の洗い方なんかに気を使うような男子高校生の方が普通はおかしい。

「あー。今日は思い切って言ってみて良かった」

 しっかりヘアパックトリートメントとかいうのまでした成田は、綺麗に濯ぎ終わった頭をタオルドライし始める。

 確かに躰にあった大きな手、そう大きなのは手だったのだ。それで洗髪されるのは気持ちよかった。洗われるというよりマッサージされるような感覚だ。

 ものすごい緊張感の後の気持ちよさに、富里は頭も頭の中もぼぅーっとなっていた。されるがままのタオルドライを目を瞑って受ける。

「はい、終わりです」

 成田が頭上に乗っていた大判のタオルを取り上げて、指で梳くように髪を解く。

「おー」

 無理矢理とはいえ、頭を洗ってもらったんだし。礼を言わねばならないのかなと、富里が思った時だった。

 目を開ける寸前に、唇に柔らかいものが触れる。

「い、い、い」

「い?」

 目を開けた瞬間に離れる成田の顔が目前にアップで見えたわけだし、今のはなんだと聞くまでもない。それでも聞いてみたいのが男心だ。

「今のはなんだー?!」

 拳を握りしめて叫ぶ富里に成田はあっさりと、キスですよと答えてみせる。

「アキラ先輩、目をつぶって、して欲しそうな顔してたから」

「してない、してない! 断じてそんな顔してなーい!」

「そりゃあ、すいませんでした」

 そっけなく謝られてしまい、富里はそれ以上、成田に怒りの矛先を向けることが出来なくなる。

「ううう」

 帰り支度を済ませた成田は、唸る富里に向かって鍵を差し出す。ふいに受け取ってしまったら、そのまま成田は出口の方に向かってしまった。

 富里が何だと思ってると、ふいに振り返った成田がひとこと、またやらしてくださいね

と言って、お疲れさまでしたと出て行ってしまった。

 結局シャワー室には、事態が飲み込めない富里が鍵と共に置き去りにされる。

「ぜ、絶対にい・や・だぁぁぁぁぁ」

 我に返った富里の叫び声が辺りに響いたが、すでに帰途についてしまった成田に聞こえることはなかった。

 こうして、富里彰の苦悩の日々が始まったのだった…。



★おわり★

笑えましたでしょうか~?


1話完結ですが、どうやら3話書いてるみたいです。

(2話のあとがきに書いてあった。ホントに全然記憶にない!)

3話目は行方不明中。

おひとりでも続きを読みたいというコメントがつきましたら、2話載せます。


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