【祈りの導姫】
「最期に…」
君は、此の世界に無数に散在していた《魔導書》と謂うものの存在を識っているかい?
《魔導書》とは、神より授けられたとされる禁忌を紡ぎ創られた叡智の結晶。
此の世界に存在した特質的な力を織り込んだ禁断の果実。
世界に変革を齎し、人々の記憶の水底に忘れられた筈の。人智を超えた。大いなる力を秘めた。不思議な。又、不可解な異端の形骸をーー
そして、此の世界に存在した六百六十六の《魔導書》を守り抜いた“もの”が在ったことをね。
それは、世界でもっとも美しい生き物が、もっとも脆弱な時期に、禁断の形骸を守護する。
その存在を【祈りの導姫】と呼ぶ。
形骸の担い手は“神ノ箱庭”と呼ばれた書架で総ての《魔導書》を生命と代償に、守護する役目を負っていた。
又、書架から失われた《魔導書》を捜すことも役目の一つであったんだ。
その後、嘗て世界を混沌に貶めた禁断の力を封じた結界に、綻びが生じたことを識る。
再び完全な結界を構築するため、最高神の力が宿ったとされる一なる《魔導書》を捜す旅を始めるんだ。
後、18XX年ーー
世界は、数千年前の神話の時代と同じ危機に直面することになる。
最悪の事態を未然に回避すべく、【聖院騎士会】は【薔薇十字学園】と結託し“聖十字連合”を組織した。
その最中、流浪の果てに形骸の担い手は、或る十字架を背負った放浪者に出逢う。
その名は…。
又の名を…。
そして守人も姫君と同様に……存在。
「世界は何と非情で怖ろしくも愉快な快楽に満ちているんだろうね。世界の深淵に辿り着くことができたのならば。或るいは…」
『Schiffer Nia=Märchen -Prolog Die erste Geschichte-』より吟遊詩人ユアンの遺志