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左手の花  作者: うい
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左手と出会い

 8月に入った頃、外では蝉が悲鳴をあげるように鳴いていた。

 私は目の前の課題をやらず、ただぼんやり眺めていた。夏休みは、涼しい場所で集中して勉強が出来るように作られたと聞いたことがあるが、クーラーのない私の家では学校と変わりない気がした。唯一の救世主は、壊れかけて首が傾いている、頼りない扇風機だけだった。

 やっぱり息抜きにとゲームに手をのばしたが、気付くと私の左手にはシャーペンが握りしめてあった。

 私はゲームを取ろうとしたのに、何故シャーペンを持っているのだろうか。間違えて取ったのかと思いシャーペンを置こうとしたが、左手は自分の意志を無視し、空白のノートに文字を綴り始めた。

「はじめまして」

清楚な印象を持たせるような、きりっとしていながらも優しい字で、そう書かれた。明らかに自分の字とは異なっていた。自分の字はへにゃっとしていて、お世辞にも綺麗とは言えないような字だった。しかも利き手とは反対の左手でこんな字が書けるのだろうか。

 戸惑っている間にも左手は更に文字を綴る。

「自分は昨日死んだ幽霊です。あなたの体を借りようとしたのですが、どうやら失敗したみたいです」

ついに夏の暑さに脳がやられたらしい。ゲームどころではない、病院に行かなくてはいけない気がしてきた。しかし、全開の窓から蝉の鳴く声が絶え間なく聞こえ、外には出たくないと思い、もう少し様子を見ることにした。

 体を借りるとはどういうことなのだろうか。

 それに応えるように左手は文字を綴った。

「取り憑くという感じです」

なんと私は幽霊に取り憑かれそうになっていたらしい。いや、すでに取り憑かれているのだろうか。

「しかし、取り憑くのに失敗し左手のみに取り憑いてしまいました」

この話を信じると私の左手にだけ幽霊が取り憑いていて、今文字を綴っているということになる。

 信じ難い話だったが、左手が綴る文字は綺麗に整っていて誠実さを感じ、嘘をついているようにも見えなかった。

 それだけの理由だったが、私はなんとなく信じてみることにした。夏休みの退屈をどうにか出来るかもしれないという期待もあった。

「自分には心残りがあります。それを解決したくてあなたに取り憑こうとしたのです」

なる程。幽霊は心残りを解決すれば成仏出来るという物語をどこかで読んだことがある。そんなものは空想の世界だと思っていたし、ましてや自分に幽霊が取り憑くなんて思ってもみなかった。

「でも、今取り憑いてますよ」

自分の一部だからだろうか、左手には自分の思いが分かるらしい。まるでテレパシーをしているようだった。

 それならばと「心残りってなんですか?」と念じてみる。

「それが思い出せないんです。自分の名前も性別も心残りが何なのかも」

左手の説明によると左手にだけ取り憑いてしまったので、記憶が一部しかないらしい。

「覚えているのは心残りがあることと、『花ト茶』というお店だけなんです」

『花ト茶』なら知っている。いつも通学路を通る時に見かける。花屋とカフェが合わさったお店と聞いたことがあるが、実際に入ったことはない。

 そのお店に心残りがあるというのだろうか。

 左手は戸惑うような動きをした。

「迷惑ですよね」

確かに面倒くさい。外では相変わらず蝉の大絶叫は続いているし、正直外に出たくない。

 でも、好奇心には勝てなかった。

「心残りがあるままだと私の左手に取り憑いたままなんでしょ?そっちの方が迷惑だし、それになんだか面白そうだから」

「ありがとう」

左手は綺麗な字でそう書いた。私はその字の横に、右手で「どういたしまして」と書いた。へにゃへにゃな文字だった。

手と花と怖くない幽霊をテーマにこの話を作りました。

完全に自分の趣味です。

しかしなぜ私はこんな寒い季節に設定を夏にしたのでしょうか…。

そしてジャンルが分からない…なんだろうこれ。

話を書くのは初めてではないですすが、投稿は初めてなのでどうかお手柔らかにお願いします…。

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