第二話
耳を疑った。
キサラギは女だった。
この事実をだれが予想できただろうか。アキハにも、恵にも予想することはできなかった。
「本当にキサラギなんだな……?」
決まり切っていることを聞くアキハにキサラギは少しうんざりしたように答える。
「さっきからずっとそう言っています」
今から思えばボイスチャットでの声がいつもより高かったような気がする。もしかしたら少し、しゃべり方も違っていたかもしれない。
いつものキサラギはほとんどしゃべらず、必要な時にしか口を開かないような人だった。
キサラギに重ねて質問しようとしたところに恵が割って入ってきた。
「ねぇ、アキハ君。君、僕を騙したね。キサラギ君はキサラギ君じゃなくて、キサラギさんじゃないか」
恵にはキサラギが男だと言っていたことを思い出した。
「別に騙したわけじゃない。だいいち騙す理由がない」
「し、師匠。あ、あのきれいな女性誰ですか!師匠のお知り合いですか!よ、よかったら、紹介してくれませんか!」
恵に加えソウ太郎まで騒ぎだした。恵がきれいな女性には目がないのはわかるが、ここまで興奮するソウ太郎は初めてだった。というより、いままでソウ太郎はあまり恋愛がらみのことは興味がないものだと思っていた。
「あっ!ちょっと、ソウ太郎君、抜け駆けはいけないな。アキハ君、僕のことも紹介してくれないかい」
(あぁ、もう……)
アキハの眉間に深いしわが刻まれる。
それに気付かずバカ二人は騒ぎ続ける。
「師匠、は、早く紹介してくださいよ」
「そうだよ。アキハ君、勿体ぶらずに早く………」
「うるさいな、お前らは少し落ち着けよ。はぁ……、キサラギ、一つ聞いていいか?」
「なんですか?」
恵に邪魔されていえなかったことを言う。
「なんで今まで女だって隠して男のふりしてたんだ?ボイスチャットの時も自分のこと俺って言ってたし、何か理由が……」
「なっ!?アキハ君!?」「ちょ!?師匠!?」
「……ぅぐ!!」
初対面のはずの二人が息をそろえてアキハの口をふさぐ。
(師匠なんてこと聞いてるんですか!!)
ソウ太郎につられてアキハも小声で話す。
(なんだよ。何か駄目だったか?)
(駄目でしょ、アキハ君。あれのどこがいけなかったか分かってないのかい?)
(………………?)
心当たりがない。
(ほんとに分からないのかい?これだから、コミュ障は)
(なっ!?恵それは言いすぎじゃないのか!俺は別にコミュ障じゃない!少し考えてたらなにが悪かったかぐらいわかる……)
(まあまあ、落ち着いてください)
(いいよ。アキハ君には多分一生考えても分からないから。それは時間の無駄だから僕が教えてあげるよ。というかこんなこと教えなくちゃいけないなんてね。
いいかい?自分から正体を隠すっていうのはアキハ君の言うとおり何かしらの理由があるはずなんだよ。まあ、ダダの気まぐれっていうっ人もいるかもしれないけどね。だけど、多分キサラギさんの場合は前者だと思うね。アキハ君、君に質問するけど、自分の過去とかトラウマとか掘り返されていい気分はしないだろ?………え?そうでもない?そうだね、君はそういう人間だった。まあいいや、君はそうかもしれないけど大体の人はいい気分はしないんだよ。だからね、あんな唐突に人の過去を探るようなことはしちゃいけない。特に女性相手にはね。わかったかい?)
(……わかったよ)
アキハはコミュ障とまではいかないが、人とのコミュニケーションが得意ではない。感動というものをほとんどしないアキハは『人の感情を推し量る能力』が乏しい。そのため、よく無意識のうちに相手を傷つけることがある。それは単に『人の感情を推し量る能力』が乏しいだけではなく、二年間の非対人コミュニケーション生活のせいでもあるだろう。
「……えっと、キサラギ。悪かったな、俺が無神経だった。もうあんなこと聞かないから。さっきのことは忘れてくれないか?」
「…………アキハがそう言うなら……そうします」
「そうか、よかった」
そう言いながらアキハは背後から痛いほどの視線を感じていた。
(俺、また何か間違えたこと言っただろうか)
「それより、これは何のために集まったのですか?何もしないのでは集まった意味がありません」
「ああ、それもそうだな。その前にみんながこれからどうするか教えてくれないか?」
「……これからですか?」
いまから集まった理由を教えてくれると思っていたキサラギは思わずといった感じに聞き返した。
キサラギを含め、ここに集まったメンバーがこれからどうするのかを知らないと二つある予定をいちいち話すことになる。それは、二度手間になるからいやだ。
「僕はアキハ君と一緒に行動するつもりだよ。数少ないアキハ君の友達だからね」
「ぼ、僕もです。だって師匠は師匠ですから。師匠に弟子が付いて行くのは当然です」
二人ともさも当たり前のように答える。
何を今さら感を出しながら。
「キサラギさんはどうするのかな?」
恵がキサラギに聞く。
キサラギは少し考えるそぶりを見せた後、ゆっくりと答える。
「……私は…特にすることがないのでアキハについていくことにします」
「わかった。じゃあ、簡単に集めた理由を説明する。集まろうって言ったのはこの状況がすぐに解決しないと思ったからなんだ。理由はわからないけど俺たちはここにとばされた。それに、帰る方法も分からない。それなら、帰るか助かる方法が分かるまでこの世界で生きていかなきゃいけない。けど、この世界が本当に<マジシャンズ・ワールド>ならモンスターが出る。生きていくならいずれ、そういう奴等と戦う時が来るだろう。なら、出来るだけ多く、さらにレベルの高いプレイヤーと一緒に居るべきだと思ってな。だから、キサラギを呼んだんだ」
アキハは<転生の社>に着いた時から、いや、この世界に来た時からこれからどうするべきかを考えていた。
普通の人間ならば、予想外の出来事が起こったとき、パニックになり、なにをするべきか分からなくなるだろう。先ほど見たどなり散らしていた人たちのように。だが、感動しないアキハにはパニックになる前に、どうすれば助かるかを考える余裕があった。
「師匠、そんなこと考えてたんですか、さすがです!………でも師匠、それなら、ギルドに入ったほうがいいと思うんですが……」
ソウ太郎は申し訳なさそうに提案する。
アキハもギルドに入ったほうがいい、とは思ったが。だが、
「それは………それはやめたほうがいい。ギルドには入らないほうがいい」
どうしてだ、とキサラギ以外の顔が問いかけてくる。
「昔、何かの本で読んだんだけど、規則が何にもない国や地域は荒れ放題になるか、新しい統一者が現れるかするらしい。それでも、圧倒的に荒れていくほうが多いらしいんだ。多分この世界も荒れていくと思う」
「でも、僕たちは規則社会で生きてきた。それに、ここはゲームの中だ。ゲームにもちゃんと決まりがあるじゃないか。そんな僕たちが荒れていくだけなんて……」
恵の言っていることも一理ある。
それでも、人間心理はそれまでの生活環境なんて関係ないほど壊れやすい。
「確かに、最初のほうはある程度、今までどうりの生活が送れるだろうけど、それは最初のうちだけ。そのうち、この状況に耐えられなくなってきた人たちが、現実世界で違法行為だとされていたことをしだす。それにつられてその数は増えていくかもしれない。
そこに、俺たちが入ったギルドが、ギルド単位で同じとこをしようとしても入ったばっかの俺たちが何かを意見できるとは思えない。そんな危険なことはできない」
今言ったことはギルドに入りたくない理由の半分に過ぎない。もう半分は個人的な理由でギルドというものに抵抗があるだけだ。
だが、ソウ太郎の言ったとおりでもある。
「でも、ソウ太郎の言うとおりギルドには入っていたほうがいいときがある。むしろそっちのほうがおおい。だから」
「自分たちでギルドを創ろう、ですよね?アキハ」
さすがは二年間一緒のパーティに居ただけはある。
考えていたことを的確に理解してくれる。
「僕は賛成です。そんなこと思いもつきませんでした。やっぱり師匠は頭がいいですね」
ソウ太郎は一番最初にアキハの案に賛成した。
ソウ太郎はアキハの言ったことなら何でも聞きそうなぐらい、アキハに忠実な時がある。それは師匠として尊敬しているのか、それとも、弟子とはそういうものだと思っているのかはわからない。
「へぇ、ギルドか、ずっとソロで頑張るつもりだったけど、こんな状況じゃ仕方ないかもね。うん、僕もその案に賛成だ」
恵は少し大げさに、それでもって残念そうに言った。冗談だとは思うが、もしかしたら本当に残念なのかもしれない。
アキハは目で「キサラギはどうだ?」と問いかける。
キサラギはアキハをじっと見て、
「アキハは本当にそれでいいのですか?」
と聞いた。
みんなは何の事だ、といった風な顔をしている。
「まあ、仕方ない」
「そうですか、それなら私も異存ありません」
まだ、何のことか分かってない人もいるが、わかってくれないほうがいい。
次の話を持ち出す。
「で、次の話なんだけど、ギルドをつくるならギルマスとサブマス、それとギルド名を決めないと言えないんだけど……どうする?」
どもです。逢楽太です。
おひさしぶり?まあ、あいさつはいいとして、皆さんいかがお過ごしですか?
僕は、毎日勉強で大変、ってわけじゃないんですけどガンバています。英語なんかが苦手でもう、へこたれそうです。あぁ、なんだかなぁ。誰か、こころ優しい読者様が英語の勉強方法教えてくれませんかね。
教えてあげるよって方は活動報告にコメントしていただけたら読みます。全力で読みます。そして、感謝します。全力で感謝します。
っていうか、この後書き見てくれている人いるんですかね?毎回長く書いて誰も見てなかったら悲しいなぁ
まあ、それなら後書き書かなかったらいいんですけど、そういうわけにもいきません、『目指せ、後書きに定評のある投稿者』ですから。
この目標は今考えたんですけど・・・
あ、でも、ちゃんと理由はあるんですよ。
ずっと前、ある小説を読んでたんですけど、その作者の後書きが面白くてですね、このサイトで小説を書き始める時、あの人のように、おもしろい後書きを書きたいと思ってだらだらと長い後書きを書いてるんですよ。
とりあえず、目標は『目指せ、後書きが本編!!』
・・・あれ?最初と変わってる・・・・・・
まあいっか!
それではそろそろお暇を・・・
これからもよろしくお願いします。
感想お待ちしています。ノシ