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死 8
少々湿っぽいが、室温が丁度良く、人が快適に暮らせるだろう空間だった。
真ん中には簡素な木製机があり、椅子がその周りを囲んでいる。机の上のランタンの光が、汚れた食器などの食事の痕跡を照らし出した。
「やぁやぁ、ブレンダ。お客さん?」
ランタンの光が届かない闇の奥から、この場に似つかわしくない、スーツ姿の少年が現れた。
十一か二歳程の少年だった。
鬱陶しい程伸ばされた艶やかな前髪の隙間から、狂気をはらんだ鋭く冷たい眼を輝かせる。シルクハットを被り、持っているステッキにもたれ掛かるようにして立つ。英国紳士か何かか?長い前髪と比例して後ろ髪も相当に長かったが、青く細長い糸である程度束ねられていた。
気付くと、土田の後ろに女が立っていた。
成る程、この女の名はブレンダ、か。
ブレンダは少年に言った。
「そう。お客さん」
すると、少年は不気味に艶笑した。「アッハハァ♪んじゃ、お兄さん。そこに座ってよ」