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残骸に溺れる溺れさせる 5
「ほな、えぇわ」
土田の表情……素っ気無く、何かに気付いた様子も見せない。
とりあえず安堵した。
また走る。
それから十五分しただろうか、樹海の陰湿な視界がだんだんと赤みを帯び始めた。
夕日だ。上を見上げると、葉と葉の隙間からきらびやかな陽の光が差し込んでいた。
辺獄のものだとは思えない、美しい光景。
それが逆に、土田の中に焦燥を走らせた。
刻一刻と迫る自分のタイムリミットに危機感を馳せる。
「……早う行って殺らな……!!」
この時、土田は心の中から湧き出てくる叫びを喉仏で懸命に絞った。
実は土田も考えていたのだ。
ジャックとブレンダの命を糧にしよう、と。
実際、土田は頭の切れる人間だった。
が、それはジャックの危惧していたものとは違う方向で働いていた。