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残骸に溺れる溺れさせる 4
抱き締め合ってキスしたいところだったが、走りながらなので叶わなかった。
二人が歯がゆく思っていると、後ろの土田が不審そうに聞いてきた。
「なんや、お前等。ぶつくさ言いおって。儂にも聞かせぇ」
ジャックとブレンダは土田の力に賭けている。
力。死達と対等に戦える力。
もちろん、自分達も懸命に戦う。
実際、土田には感謝している。恩は返さねばならない。
しかし、たった今、それが最優先事項ではなくなった。
三人一緒に戦って、三人共に蘇る……から、
自分達二人の蘇生、になった。
つまり、
ーーどうにもならなくなったら土田を殺そう
という事である。
死ねない理由が出来たのである。出来てしまったのである。
「おい、答えや」
「いや、何でもないよ」
先ほどの空白の一瞬。土田が勘の強い男ではないことを切に祈った。