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死 4
歩いて三時間。
一向に樹海の終わりは見当たらない。むしろ深部に来ているのではないだろうか。さらに、この上無く腹が減った。
「あー牛丼でも喰いたいのぉ…」
土田は前田組の若頭であり、刀捌きも良いが、典型的なメタボ体型である。
何か特別なこともなく、ただ単純に大飯喰らいだという事に由来する。
「……飯になるもん無いやろか…?」
辺りを見回してみる。
飛び回るのは、バッタや蛙、蠅くらいのものしかいない。
仕方無いのでバッタを捕まえてみた。
体長二十センチ程の赤い体駆。土田の手の中でがむしゃらに抵抗する。
……いただけない。
放り捨てた。
懐石料理などで舌が肥えてしまった土田があんなもの生で食べられるわけがなかった。
腹が減ったのを我慢して、前に進む。