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紡ぐ者 11
極度の緊迫は麻酔の効果を有するが、それが無くなった今、彼女は忘れていた痛覚を取り戻してしまった。
「うっ……ぅうぅぅ…」低く呻く。滴り落ちる血が苔に染みた。
「……一旦退こか」ブレンダを見た土田。近寄ると、彼女を自分の背に乗せた。ジャックの幼い背丈では、十も年が離れた女性を背負えない。
すると、ジャックが彼の近くに寄った。
「兄さんカッコいい♪憧れるよ」
「黙れや、物狂い」
「……昨日はゴメン」
「……儂に迫る暇があったらコイツに魅せぃや」
ジャックは俯きながら、頷いた。
そうして、帰路につく。
土田はジャックと洞穴へと急ぐ中、自信の背に乗って揺れるブレンダの体温を感じ取っていた。
儂はまだ死んでへん。そん為にも、死なへん。そんでコイツ等も死なせへん。
土田は決意を固めた。