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紡ぐ者 10
それから半瞬の沈黙の後、ブレンダが声を上げた。
「何、貴方!?『死達』を倒すなんて……本当に人間……?」
「安心せぇ、人間や」土田は冷静に答えた。「さて、ちゃっちゃと死体を火葬にするかいのぉ」
だが、足元に有る筈の土田二番目の犠牲者の死体は跡形もなく消えていた。
辺獄で死んだ者は皆、肉体も精神も魂も無に帰すのだ。
気付けば、土田の着物にこびり付いていた血や肉塊のことごとくがいつの間にか消えていた。
「やるねぇやるねぇ兄さん。一騎当千の怪物を一太刀でなんて……僕も貫かれてみたかったよ♪アハハ」賞賛の拍手を送るジャック。
これに対して、一瞬遅れて土田はおののいた。最後のフレーズの意味。……変態め。
化け物が消滅したことにより、急速に場を安堵が支配する。
ホームズが遺した(遺留品とでも言うべきか)ワイヤーはすっかり輝きを無くし、蛇の死体の如く、地でたゆんでいた。これがもう人の肉を裂くことはないだろう。
しかしこの安堵が、あるモノを覚醒させてしまった。
ブレンダの激痛。
ホームズにワイヤーを肩を抉られたままだ。