紡ぐ者 9
「ほぅら!!バラバラ死体になっちまえやァ!!」空中で体を捻り、それによって収束された力で、ワイヤーを飛ばす。
土田の目の前にワイヤーの膜が出来上がる。縦横無尽に光る糸。糸。糸。
このままではあとコンマ何秒かで土田は肉塊になってしまうだろう。一瞬で肉体・魂・精神を分断されるにあたって、果たしてどんな痛みが伴うのだろうか。鈍痛?激痛?それとも哀痛?
その答えはすぐに出た。
無痛だ。
土田の居合斬りがワイヤーの膜を、ホームズの瞼から上もろとも斬り飛ばした。
飛び散る脳髄。剥き出しになった、両断された二つの眼球が神経管束と共に眼窪から滑り落ちた。何かが弾けたかのように夥しい血液が頭骸から噴出され、土田の着物に付着する。
ホームズは断末魔を上げる事無く、刹那の間に死んだ。
血を帯びた刀が土田の鞘に収められる。鞘と鍔との間から血が滲み出た。
ホームズの亡骸が血に落ちた。脳味噌だった脂肪の塊がぬかるんだ地にぶちまけられた。
「おい、ガキゃあ」その様子を一瞥した土田はジャックを呼んだ。「『死達』っちゅーんはこないなっても生きとんか?」
ジャックは首を横に振った。