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狩りの極意 1
土田は二人を振り切って、洞穴から出た。
勿論、話の続きは聞いていない。
土田は早く現世に戻りたかった。
近々に組長の座を争奪する抗争があるのを思い出したのだ。
今すぐ十人殺さないといけない理由が出来た。グズグズしている暇はない。
獲物を見つけるため樹海を走る。執拗に襲う空腹感が邪魔だった。
生えていた草から適当に葉を千切って口の中に詰め込んだ。苦かったが、我慢して飲み込んだ。これを四度繰り返した。
漆を塗ったような藍の着物がズタボロに汚れていく。草履が泥まみれになっていく。
走る度に足元の泥が跳ねた。
よう湿ったところに入ってしもたな、と後悔する。
雨が降ってきた。土砂降りの冷たい雨だ。
鬱蒼な樹海に鬱陶しい雨、土田は憂さ晴らしに叫んだ。
口の中に雨水が入ってきた。乾いた舌に染み込んで案外旨かった。