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男の娘なCQCで!(未完)  作者: 百合姫
こうこくぎょう
22/23

20わ はじめて の ごえいいらい

マノフィカさんと仲直りして、数日が経つ。

そろそろお店の宣伝を真面目にやろうと言うことで、計画を実行に移すときが来たようである。

計画?

そう疑問視する声もあるだろうが、実は着々とお店を繁盛させる作戦を決行していたのである。

その前準備が終わり、今日、漸く実行に移しても問題ないと思えたわけだ。


「レトお姉ちゃん。」

「あら?

おはよう。響ちゃん。

今日は何の御用?

町人依頼?それとも冒険依頼?

はたまた私に会いにきてくれたとか?

それだったら私も嬉しいな・・・どれくらいかと言うと、今すぐ仕事を放り投げて抱きしめたいくらい。」

「遠慮しておきます。というか、普通に意識が飛ぶので止めてください。そもそも仕事しろ。」

「ふふふ、照れちゃって。」

「照れ要素は欠片もない、と断言はしておきます。無駄でしょうけど。」

「それでご用件は何かしら?」

「す、スルー・・・まぁいいですけど。

お店の広告?それをギルドに張らして欲しいです。」

「広告?」



「おたからや」が繁盛するためにはどうすれば良いか?

そう考えて今やっている作戦は学園に入り、有望そうな子にツバを付けて置く。

現状、これだけである。

もちろんこれだけでは即時的な利益には繋がらないので、他の作戦もある。


現在はお店が良い悪いの前にそもそも殆どの冒険者に知られていない。

数年。下手をすれば10年以上はまともに機能してなかった店なので、もちろん人は殆ど来ない。この街の人々にとって無いも同然のお店なのだ。

よそものがこの町に寄った際、観光がてらパッと見つけて、気まぐれに入る。

その程度である。

が、それではもちろんのこと生活など出来るはずも無く。

そういう段階であるからして、お客さんは当然のごとく非常に少ない。

良い顧客をゲットする。とか、良い物を仕入れる。とか言う前に。まず知られないとダメだということで。

広告。

すなわちポスターを依頼屋に貼らせてもらえないだろうか?と今日は懇願しに来たのである。

さらに言えば、甚だ不本意ではあるのだが依頼屋でマスコット的な立ち位置として可愛がられるようになった僕のお店と知れば。

気の良い、依頼屋でたむろってるここの人達はきっと来てくれるに違いない。


一度来てくれればこちらのもの。

そろえてるのは良質かつ安価という昨今の日本市場に求められる物ばかり。

そしてターゲットは冒険者で、冒険者の需要に合わせた品揃え。

売れないわけが無い。

評価が良ければ口コミでさらなる繁盛も期待できるという広告一枚で良いこと尽くめなのである。

悪い場合も口コミで広がり、広告効果が出るどころかむしろマイナスになりかねないというデメリットはあるものの、それはまず無いと考えている。

そのためにきっちりとしたお店づくりをしてきたのだ。

問題は無いはず。


「なるほどね・・・別に良いわよ?

ただそうした宣伝をするには町の職員による視察が必要なのだけど。

視察完了書はあるかしら?」

「はい、これです。」

「ふむ。確かに。」


ちなみにこの視察にはあの「ブヒ」が語尾でキャラ作りをしているという貴族さんが来た。

つい失笑してしまったのは良い思い出である。


「もう広告は仕上がってるの?」

「出来てます。」

「これね?

二階の酒場に張っておくわ。」

「お願いします。」

「さて、それで用件は終わり?

私とおしゃべりするってだけでも良いのよ?」


おしゃべりと言いつつも手をワキワキさせながら迫ってくるレトお姉ちゃんから後ずさる。

ひぃ、怖い。


せ、せっかく来たんだし、冒険依頼でも町人依頼でも良いから受けておこうか。


「ええと、何か手ごろな依頼は無いですか?」

「んもう。いけず。」

「あの・・・」

「はいはい、お姉ちゃん寂しいなあ・・・ええと、これあたりが良いんじゃないかしら?」

「これは商人の護衛?

でも僕には護衛技術はもちろん、あまり遠出するのも・・・」

「いいからいいから。内容を良く読んでみて。」

「よ、読めないよ。」

「そ、そうだったわね。」


依頼書を差し出されるが、僕には商人の護衛っぽい。としか内容を理解できない。

フィネアから文字をチョコチョコ習ってはいるのだけれども、なかなか難しいのである。

『ほんやくか』の称号による翻訳は言葉のみ。いっそのこと文字まで翻訳できれば良いのに。

まぁ言葉のみでも凄いことには変わりないけれど。

などと他愛の無いことを考えつつ。


「内容はラクーン商会がここから西の街。アルトネリ機械樹街きかいじゅがいに物を仕入れに行く際の商人の護衛。盗賊や、食材の匂いに惹かれた魔物の相手が主になると思うわ。」

「盗賊か・・・レトお姉ちゃん、僕はちょっと人殺しは・・・」


まだ早いかなと思わないでもない。

重ねて言うが、僕は平和な国、日本で育った生粋の日本人なのだからして。

逃げるな?

バカを言うな。

こ、これは戦略的撤退なんだからね!

・・・こほん。

冗談はともかくとしても、別に仕事を選ぶくらいは問題ない状況なのだ。

やむをえないのならばともかく。

わざわざ精神的に忌避したい仕事を選ぶほど追い詰められてるわけではない。


「安心して。

私の響ちゃんにそんな辛い役目を負わせるはず無いじゃないの・・・と言いたいところなんだけど。

だからこそ、そういう甘さを今のうちに消しておきたいのよ。」

「別に甘いとか・・・」

「いざ、盗賊に襲われたりしたとき、その相手を殺せる?

殺さないようにと手加減できる相手なら良いけど、ギリギリ殺すか殺されるかの戦いがやむをえないほどの相手だったら?

いえ、仮に殺さないでも、その相手が報復に来たら?

思いがけない反撃に遭ったら?」

「・・・。何がいいたいのさ。」

「この依頼は複数依頼。複数人に任されるものよ。

“まだ”貴方の手で殺せとは言わないけど、人の死に様を見ておきなさい。少しでも死に慣れて置いた方が貴方のためにもなるわ。」

「・・・別に今すぐ見る必要は・・・」

「あるわよ。」


むむぅ。


「残念なことに治安が良いといってもそれには限りがあるわ。

ここ依頼屋でも冒険者同士の小競合いで死人が出た事だってあるし、治安が一番良いといわれるこの街、『どらごにあ」でも強盗や殺人被害だって無いわけじゃない。

特に貴方の家は掘り出し物屋。

広告だって張って、宣伝するのでしょう?

強盗に入られる可能性だって跳ね上がる。

強盗を殺さないように加減して、もしくは殺すことを恐れて実力を発揮できずに殺されるって言うのも珍しい話ではないのよ?

貴方が普通の人よりもステータスが高いということは分かっているけど。

その精神的な甘さは致命的な弱点にもなりえる。

ひいてはフィネアちゃんの危険を振り払うことにも繋がるの。自衛の手段として学園に通ってるようだけど、守りだけじゃ守れないものもある。

フィネアちゃんにそこまで求めるのは酷でしょう。というか、貴方はなんだかんだで優しいから、どうせなら自分でやるって言うでしょ?というかそのつもりでしょう?

これでも必要ないっていえる?」

「うぐ・・・」

「いざというときに後悔しないように、そうした部分は早めに対応しておくべきよ。」


確かに。確かに前々から考えていたことではある。

だが、しかし。

いざとなると躊躇するのは人の性だろう。多分。

僕以外にもそれは大勢いるはずだ。

別に僕の道徳心が特別高いというわけじゃない。

人の命は尊いだとか、地球よりも重いとか。

そんな子供のお遊戯みたいなことなんざ、さらさら思っちゃ居ない。


単に一歩を踏み込めないだけなのである。

例えるならば、納豆をかき混ぜてる最中に「あと何回、回そうか。あと一回転、いや、いっそのこと10回くらい?」みたいな心理状態・・・と言っても分かりづらいだろう。

もっと簡単に身近なもので言えば、レンタルビデオ店でえっちなビデオを借りる際に18禁コーナーに始めて入るときの葛藤常態。

と言えば割と分かってもらえるのではないのだろうか?

いや、僕は借りたことないけどさ。

ほ、本当だぞ!!

本当なんだからな!!

だ、だって紳士だし!

そんな俗世にまみれたことはしないのである!!


閑話休題。


ともかく。

ごちゃごちゃ何かを考えるのはこれくらいにして。言っていることは至極正論。

ここらで人死にに慣れるというのもまた一興であり、必要なことなんだろう。

断る理由は精神的に嫌だと言うだけであり、正直弱い。

店の評価を良くする事ばかり考えていたが、こうなってはラクーン商会に都合してもらうことも考えないといけないのかもしれない。

僕がいるときならばともかく、居ないときの防犯を考えないといけない。

警戒心が強く、ちょっとした足音でも感知するというフォアウルフでも飼おうか?

フォアウルフはそうした習性から人工的に飼育され防犯用にと大きなお店や貴族の屋敷では必ず一匹はいるとされるモンスターである。


「・・・受けます。」

「そう。

・・・帰ってきたらナデナデしてあげるから頑張ってね。」

「・・・余計、やる気が。」

「これが噂に聞く草食系男子か。」

「そ、草食系とは違うと思いますけど・・・」


単純に恐怖症なだけだし。

性欲なんかは変わらずあるんでむしろ辛かったりする。

だが、僕がそれを解消しようと思ったら軽く死ぬ覚悟をしなければならないので(比喩にあらず)中々に難しい問題である。うむ。

まぁもともと強いほうではないから、問題ないと言えば問題ないんだけどね。

それよりも前世でもろくに満たされなかった・・・いや。

むしろより深くなった愛欲の方が深刻である。

恐怖症も相まってまず満たされることが無いというのが、それを加速させているのだからして。

またもや思考が脱線したね。


「響ちゃんで丁度、依頼受託人数を満たしたから二階の酒場で待つと良いわ。

あ、それと出来るだけ銃器は使わないほうが良いわよ。」

「ん?

どうして?」

「それ、普通は誰も使ってないのよ?」

「は?」

「古代具だもの。」

「へ?」


古代具。

どらぶれでは遺跡などで出てきたユニークアイテム。

もとい「すでに失われた技術によって作られた神器」という設定である。

もちろんどらぶれでは銃器と言うカテゴリの武器は簡単に手に入る。

の、だが。


「それだけで付けねらわれる理由になりかねないわよ?」

「・・・自重します。」


なるほど。

どうりで弾薬がどこにも売ってないわけか。


まだまだ沢山あるからいいけど。

もし切れたらどうしよう。


「・・・まぁいいか。そのときに考えよう。

それじゃ、二階で待ってれば良いの?」

「ええ、そうよ。

説明役としてラクーン商会のスタッフさんが居ると思うから。」

「了解。」


壊れた対物狙撃銃アンチマテリアルライフルも直せそうに無い。

どうりで鍛冶屋に行っても「知らんがな」の一点張りで目も向けられなかったわけか。

くそう。

鍛冶スキル(銃)を持っていれば。

ちなみに鍛冶スキルは武器ごとに分かれてる。

なぜかって?

当然じゃない。

普通に剣と斧じゃ作り方が違うでしょ。


☆ ☆ ☆


さっそく二階に上がってみたのだが。

それっぽい人は誰もいない。

それどころか、カウンター以外は誰も居ない。

なにこれ?

いじめ?

いじめいくないよ。

いじめは!

ていうか、レトお姉ちゃんに物申す!!

まだ朝早いから人がいないというのは良しとしても、ラクーン商会のスタッフさんはいなくちゃダメだろう!!


「ん?ってわっ!?」


ふと後ろから誰かが斬りかかってきた。

が、ふふ。

暗殺タイプの僕に暗殺が通用するとでも?

暗殺をする以上、そのまた逆に暗殺される際の手際なんかは全て理解してる僕にそのような手は食わん!!

いや、めちゃくちゃ通用するんですけどね!!

だからこそこういうのはやめて欲しい。

すんでのところで気づけたのは気配察知(弱)があったからである。


瞬時に背負っていた斧を抜き、それで受ける。

ギンッ!!と火花が散り、金属と金属がぶつかり合う際の擦過音が鳴り響く。

間を空けずに腰に下げているペレッタを引き抜き、相手に構え銃口を向け、撃つ。

やばっ!

条件反射的に撃っちった!?

避けておくんなましっ!

と思いつつ。

あ、でもここで殺しの経験をしておけば護衛する必要がなくなるかな・・・とかも思っていたりして。

いつぞやに考えたことがそのまま再現されたね。

ノリで殺してしまうとは。

正当防衛だし、罪悪感は薄い。問題も無い。

ということを願おう。


「とっ!?」

「えっ!?」


この近距離で避けるとは!?

こやつ、出来る!!

とかふざけてる場合じゃないな。


瞬時に飛び去り、距離を取る。


「いきなり何のつもり?」


銃を避けたことからそれなりに強いと見て、油断せず気を張り詰める。

斧を収めて、使い慣れた武器であるペレッタを二挺、装備した。

自重するといった矢先に銃器の出番とは。

・・・仕方ないよね。

どうせもう使っちゃったし。隠す意味はなくなってしまった。


「いえいえ、すみません。

職員から噂はかねがね。

とはいえ、いささか信用しづらかったので試させていただきました。」

「・・・で、誰?」

「察しが悪いようですね?」


アホ言え。

得体の知れない人間にぺらぺらと何かを喋るわけあるまい。

おそらくはラクーン商会のスタッフが僕の実力をーーーみたいな話だろうが、ここでラクーン商会の人ですか?とわざわざ確認を取って成りすまされたらどうする?

いや、そんなことして現状で誰が得をする?という話になるが。

と、戦闘モードのせいか我ながららしくない思考をしてるがそれを抜いてもイキナリ斬りかかってくる人間と悠長におしゃべりしたいと思う人間はいないだろう。察してなんかやらないもんね。せいぜい説明口調で説明をしてくりゃれ。

その不機嫌さを見て取ったのか。


「これは失礼。

ほら、このナイフも刃を潰してありますし。

問題は無かったと思いますよ?」

「だまりゃあ。」

「手厳しいことで。

まぁ何はともあれ、貴女は合格です。」

「・・・ふうん。」

「察しの通り、私はラクーン商会の仕入れ部部長。

トクナガと申します。

特技は不意打ち。審美眼。鑑定眼。と、人の良し悪しの見分けです。」


察しの通りって・・・食えないやつである。

白いワイシャツにダボッとした黄色い作業着っぽいものを着た狐目短髪青髪男。

トクナガと言うらしい。

なんか好きになれそうに無い雰囲気を醸し出す男である。



「貴女で合計4人となるわけですが、貴女を除いて説明は終えてます。

ので、これから貴女に細かい詳細を説明するわけですが、お時間はよろしいですか?」

「よろしくなければ来ないでしょうが。」

「・・・全く。嫌われてしまったようで。」

「好かれる要素があると思ってることに驚きだわ。」

「そうでしょうか・

ほら?

私の目など愛らしくはありませんか?」

「ずるがしこそうな印象しか与えないな。少なくとも僕にとっては。」

「・・・残念ながらよく言われます。」

「さいですか。」



その後、説明を受け、準備をした後。

明日の朝に出立することを聞き、準備を終えて寝る僕だった。

不意打ちで実力を試したのは盗賊や魔物はこちらの都合を考えないタイミングで襲ってくるから、不意打ちに対する最低限の対応が出来るかを見たかったとのこと。

すなわち自衛が出来るか?である。

自身の身を守ることすら出来ぬ輩に護衛の任をするのは荷が重いということだ。




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