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男の娘なCQCで!(未完)  作者: 百合姫
こうこくぎょう
17/23

15わ きんぐおーく

一週間後。

試験日がきた。

僕達も試験を受けることに。


試験に落ちたからと、デメリットがあるわけでもないので二週間ほどしか授業を受けてない僕達も受けてみるだけ受けることにしたのだ。

僕は斧術ふじゅつで。フィネアはCQCで。

学校ではスキルを三種類に分けており、その重要度によって分類される。

重要度順にメジャースキル、ノーマルスキル、マイナースキルとあり、メジャースキルに分類されるのは武器関連が多い。

そしてランク上げ試験に受かるためにはメジャースキルならば1つ。ノーマルならば2つ。マイナーならば3つのスキルの試験を受けねばならないので、今回は日も浅いので一つだけでいいメジャースキルの『斧術』と『CQC』を選んだのである。


「さて、準備は大丈夫?」

「は、はひ・・・だ、大丈夫なのれす!」

「・・・ふふ、緊張しすぎ。落ちて当然。受かれば儲け物って程度の試験なんだから。

緊張は必要ないよ。」

「わ、わかってますけど・・・。」


試験会場である体育館。

僕の隣で緊張するフィネアに軽く声をかけつつ、順番を待つ。


視線をめぐらせて、マノフィカさんを探す。

彼女も居れば緊張も解けるだろうと思ったからだ。

ついでにあの2人組みを探したのだが、ここには居ないようである。


結局、見つからずに試験が始まった。


僕もフィネアも試験を終え、よし帰ろうとしたところでマノフィカさんの名前が呼ばれた。

どうやら、見当たらないだけで来ているようだ。と思いきやそうでもない。

マノフィカさんの名前が何度も呼ばれているのに一向にこない。

教師はトイレだと判断。あとで再度呼ぶようだ。

これは・・・きな臭くなってきた。

ここまで直接的なことは彼女の技量的にも、あの2人には無理だろうと判断していたのだが・・・念のため探したほうが良いかもしれない。

トイレや体調不良だとは思うけれど、彼らの姿も見えないのが気になる。

仮に試験中に妨害するなら少なくともこの場にいるはずだし、いないと言うことはここへ来るマノフィカさんへ直接何かしたのではないか?


「フィネア、マノフィカさんを探そう。

フィネアは学園内を。僕は外を探してくる。」

「え?

あの?」

「もうちょっとしっかり懲らしめておけばよかった。

とにかく頼むよ!!」


そのまま僕は走り去る。

杞憂であってくれれば良いのだが。



☆ ☆ ☆

どじった。

凄く普通にどじってしまった。

体が凄く痛い。

血がドバドバ流れ出て、目がくらむ。

私はもうダメかもしれない。



ことの発端は私に絡んできた、あの2人が私に謝りたいと言ってきたこと。

私としても反省しているならば、と応対したのが甘かった。


まさか召喚石なんて物を使ってくるなんて、予想外。

目の前には聳え立つ大きな体躯。

100年以上は生きた大樹とも見紛う様な太い太い腕と足。

腕の先にはその腕よりもさらに頑強そうで雄大な斧。

魔力を放っていることから、それは魔具だということがわかる。


全てを喰らうかのような大きな口に大きな醜い豚のような鼻。

ゴリラと豚を足して割ったかのような顔立ちに、全身を覆う筋肉の鎧。さらにそれを鋼のような堅さと柔軟性を持つ剛毛が全身を覆っている。


キングオーク。

第一種警戒モンスターである。


なんてものを呼び出してくれたのか。

彼等は私が気に食わないからとこんな者を呼んでくるなんて・・・


「・・・貴方達、この子がどういうものか分かっているの?」

「分かってるに決まってるだろっ!?

俺の父上が持つ召喚石でも最高のーーーごべっ!?」


キングオークの太い腕で弾き飛ばされ、数十メートル先に飛んでいく大柄な少年。

家の壁に激突してピクリとも動かない。

死んだかもしれないね。

というよりもここが人の少ない区画でよかった。この時間帯なら働きに出ている人が殆どだろう。


「ひぃ、ひぃぃぃいいいいっ!?」


小柄な方はそのまま逃げていった。

これは・・・困る。


『ココハ・・・ニンゲンノ棲家カ?

ナゼ、コノヨウナ場所ニ?

スデニ契約ハ終了シタハズ。』


オークというのは基本的に温和なモンスターで人間との不可侵条約を結んでいるほど。

昔は人間も襲って食べていたらしいが、いつ頃からか人間の数が増えて来てからは反撃を恐れて一切襲わなくなったという歴史がある。

それどころか今のように召喚されて使役される身だ。

とはいえ。

召喚石と言うものはランダムでモンスターを呼ぶアイテムで使い捨てである。

その名の通り“適当に召喚するだけ”なのだ。

簡単に言えば一か八かの最終手段といったところ。

召喚石の等級により、呼び出すモンスターの強さがある程度変わるが・・・これは本当にまずいものだ。

そんなものをこんな街中で・・・使うなんてバカげてる。

これだけのモンスターが街で暴れたら!?いや、オークならば、まずは説得をーーー


「あ、あの・・・」

『ニンゲントイウノハイズレモ愚カナモノダ。

少シ殺シテイクカ。』

「ちょ、ちょっと待ってっ!!」

『・・・ナンダ、ニンゲンノ子ドモ。貴様ガ我ヲヨビダシタノカ?』

「いえ、違います。が、暴れるのはやめてくだーーー」

『断ル。盟約ヲ破ッタノハソチラダ。

懲ラシメナケレバ、マタ繰リ返ス。

驕リヲ罪トシレ、ニンゲン。』


膨大な殺気がキングオークからあふれ出る。

が、私はそれを耐え切る。

震える足に渇を入れ、せめてこいつを街中に出さなくてはならない。

今回の件は私のせいでもある。

私がーーー私がなんとかしなくちゃ・・・


『邪魔ヲスルノナラバ、殺スマデ。』

「っ!?」


家ほどはあろうかという斧を振り回してくるキングオーク。

それをとっさに刀で受け止めるがあっさりと刀が砕け、私も弾き飛ばされる。

吹き飛ばされながら、態勢を立て直す。

そして小太刀を抜き、懐にしまってある遺跡から発掘再現された復刻モデルガン「デザートイーグル」という拳銃も取り出す。

私の戦闘スタイルは全距離オールラウンダーの遊撃タイプ。


これを相手に近距離は悪手。

常に中距離~遠距離を保ち、出来れば刀の一撃を叩き込むのが良い。

刀に魔力を込めて、銃にも込めて、強度と攻撃力を跳ね上げる。


接近してくる敵にデザートイーグルを打ち込んでは見るものの、剛毛に弾かれ飛ばされる。

この程度じゃダメ。

なら、もっと溜め込む。


チャージっ!


『グオオオオオオオオッ!!』

「しっ!!」


見た目に寄らず高速で走り寄ってくるオークと、その斧をかわしながら私は魔力を込め続ける。


『チョコマカト小賢シイ!!』

「ふあっ!?」


キングオークは地面に斧を叩きつけて、巻き起こった砂嵐で私を叩くようだ。

が、この程度・・・


『種族ノ王タルモノヲ舐メルナヨ。』

「ひぐあっ!?」


思い切り横っ腹に斧が叩きつけられる。とっさに魔力を込めていたデザートイーグルを撃って相殺しようとしたが、勢いは衰えない。小太刀で防御する。

この粉塵の中で私の位置を正確に捉えて攻撃を繰り出すなんて驚き。

地味なようだが、かなりのテクニックが要ることだ。

私の魔力の半分が込められている小太刀が砕け散り、私の腰半ばまで斧が突き刺さったところで私は吹き飛ばされた。


地面に何度も叩きつけられ、一瞬、天と地が分からなくなる。

痛い。

凄く痛い。

ドジッた。

油断していた。


慢心していた。

今までが今までなだけにどんな時でも、自分ひとりで対応できると思っていた。

でも・・・今の有様がこれだ。

初めから責任感なんて放り出して逃げ出せば良かった。

泣きたい。

どうして、私ばかりこんな目に遭うの?

どうして、私ばかり傷つくの?


どうして?


いや、だめだ。今考えちゃだめ。

そのことを考えるのは今じゃない。

今考えるのはただ目の前の敵を、倒して生き残ること。それのみ。

そう、私が傷ついたところで誰も気づいてくれない。

『私にはそんな“価値が無い”から』

だから、だからこそ私は自分の力で生き残る。


「うごいて・・・にげなきゃ・・・あぐああああああああっ!?」

『逃ガスワケ無カロウ!!』

「痛い・・・痛いよぉ・・・」


ずるずると這って逃げる私。

両足が・・・私の足が・・・無い。

無いよ。痛い。

痛い。

血が血がっ!!

止まらない!!

死にたくない!!

まだ、まだやりたいことが沢山あるのに・・・やらなくちゃいけないことだってある、私が生きてきた理由だって・・・


『久方ブリノニンゲンノ肉。

味ワッテ食ベーーーブガァっ!?』

「えっ!?」


横合いから頭に何かぶつかったようにキングオークは倒れる。


「・・・ッ!

キングオーククラスのボスモンスターともなると対物狙撃銃アンリマテリアルライフルでもちょこっと血が出るだけ・・・面倒だな。」


私の目の前には私の大ッ嫌いな人が立っていた。



☆ ☆ ☆


「なにこれ?」


と呟いたのが最初だった。

町外れの郊外。

そこにはまぁ、あまりお目にかかることのできない第一種警戒モンスターであるキングオークが突っ立ていた。

即刻教師陣を呼んで来ようと思ったのだが、襲われている女の子が居るみたいである。

良く目を凝らしてみるとマノフィカさんのようで、案の定って感じだ。

さて、ここでどうするか?

教師を呼ぶまでに殺されそうな勢いだ。

普通ならばここで助ける。が。

今回の人助けはリスクが大きい。

ハッキリ言おう。

キングオークとか、勝てる気がしない。


負けます。

今持ちうる弾薬全て使って撃退可能かどうかのレベル。

今のステータスじゃマジで死ぬ。

いや、もちろん助けてやりたいというのはあるよ?

でも、今回は文字通り色んな意味でレベルが違う。

彼女が家族や恋人ならばともかく、命をかけてまで助けるほどの間柄ではない。

そんな相手をいちいち命を懸けてまで助けるほどの熱血はこの胸に無いのだ。

よって、ここは無難に教師陣を呼ぶのが普通。


普通。

なのだが。

一個だけ普通でなかったことがあった。

こんなときのための持ってて良かった「聴覚強化」。

授業で最近会得したスキルなのだが・・・聞こえてしまったわけなのである。

持ってて良かったとは思えなくなってしまうくらいの“面白い”セリフが。


「私にはそんな価値が無い」


うむ。

どこかで聞いたことのあるような言葉である。

どこかっていうか、目の前というか内側というか、そのものというか。

僕と同じような人間が同じように絶望して死のうとしてる。

それを聞いた瞬間。

いつのまにか対物狙撃銃アンチマテリアルライフルを取り出して、弾を打ち込んでいたというわけである。

あれだね。

難しいことは後で考えよう。

確かに負けるだろうことは分かる。

しかし、それはゲームであればの話。

ここは今や現実と化しているのだ。

どうにかこうにか逃げてしまえばいい。いろいろとやりようはあるし、何よりも時間を稼いでいれば教師が気付くはず。

何も勝つ必要はないし、負けてダメということも無いのだ。


なんていいつつも、やっちまったもんは仕方が無いので、すぐさま現場に駆けつける。

ついぼやいてしまったのは仕方が無いといえよう。


「はぁ、我ながらバカな性格だわ・・・本当に。」

「あ、貴方・・・どうして・・・」

「何を驚いているんだか分からんが、とりあえずハイこれ。」


回復スプレーEXを取り出して吹きかける。と、途端に無かった両足が生えてくる。

正直グロいけど、女の子の体の一部に対してグロイというのはどうかと思ったので口を噤んでおく。

というか回復スプレー凄い。回復スプレーには人工たんぱく質とよばれる特別な高たんぱく成分が入っており、それが傷口に付着、細胞の遺伝子を取り込みながら人体を模倣し形成するのである。

そして一日経つと体と一体化し、馴染むのだ。

すごい便利アイテムである。


「私は貴方がきらいって言った。」

「言われたよ?それが?」

「なのにどうして助けるの?

貴方は死ぬ。嫌いな相手を助けたために。ただ逃げれば良かったのに。偽善は人を救わない。」

「死にたくないって喚いてたやつが良く言う。」

「ふぇぇっ!?

あ、あれはちがうっ!!

た、たまたま口が滑っただけで・・・」

「まぁ死ぬつもりは無いしね。」


そのまま頭に手を置いて撫でてやる。

なんというか自分を自分で慰めてる錯覚すらある。

見た目も性格も全く違うのにな。

あれだけで目の前の少女を他人と思えなくなるとは。


「我ながら、単純だなあ・・・」

「・・・逃げて。今ならまだ間に合う。偽善で死ぬことはーーー」

「偽善?

何を言ってるのかな?

“そんな”高尚なものじゃない。もっと薄汚くて、情けない理由だよ。」

「・・・何?」

「価値が無い人間同士の傷の舐めあい・・・ってところかね。」

「・・・っ。」


イベントリからペレッタ90Twoを二丁取り出す。

弾薬は普通のもの。

とにかく弾をぶち込んでいけば怯ませることくらいはできるでしょ。


『ナカナカ良イ不意打チダッタ。

次ハキサマダナ?

殺シテヤロウ!!』

「上等だっ!!

ブタゴリラっ!!」


まずは二丁拳銃でぶち込みまくる。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァアァァァァァアアアアアアアアアッ!!」


発砲音と空薬莢が飛び散る金属音が当たりに鳴り響く。

ちなみにであるが、銃器の攻撃力は銃弾と銃自体を合わせたものになり、はじき出されるダメージは距離によって変わり、近いほど威力が上がる。

使用者の攻撃力は加算されないため、使い勝手が悪いように思えるかもしれないが、逆に言えば使用者の攻撃力は無視できるということである。安定したダメージを出せるのとボーナスポイントを攻撃に振らずに高火力を実現できる。そのために僕は銃器を選んでいるのだ。

(とはいえ、あくまでもレベルが低く、MPが少ない序盤の魔法攻撃の変わりである。)

そしてそんな僕にとって銃は全て攻撃力のみを特化させた改造をしてあるため、ハンドガンという銃器の中でも最も威力が低いとされる種類の銃でも、中級モンスター相手でも通用するレベルの威力を持っているのだが・・・なにこれ?

キングオークの表面の剛毛すら弾き飛ばせないってどういうことよ?


そして、その巨体に似合わぬフットワークで距離を詰めるオーク。このフットワークじゃ結構な敏捷を持ってても捉えられちゃうな。

だが、僕も負けじと踏ん張って距離を取りつつ銃をぶっ放していく。

敏捷は負けているようだが、それでも距離を取れる程度の差ではある。

本当に厄介なモンスターだ。このままだとジリ貧で追い詰められていくのがわかる。



『豆鉄砲ガ通用スルト思ウナ!!』

「思ってないわッ!!いや、思ってたけどっ!!」

「・・・どうして・・・私を・・・価値が・・・」


何かボヤキが聞こえたけど無視をして、リロードをする。

スキル『てんくうだんそう』があって良かった。

武器や防具を除いた装備アイテムはあらかじめイベントリからインスタントイベントリという所に入れておかないと、いちいちメニューウィンドウを開いてイベントリから取り出さなくてはいけないという制約がある。

いわゆるショートカットなのだがこれがまた困ったことにこの世界に来てからというもの、インスタントイベントリに入れられる数が極端に減ってしまったのである。

現実ゆえにショートカットと言う便利な物が存在しないのかと思いつつ。でも少しはあるがそれでは足りない。

結局のところこの世界どらごにあではインスタントイベントリとはそのとき“実際に手で持っている物”を表示されるようなのだ。


つまり、実質ショートカット機能は存在しない。

マガジンを必要とする銃器の場合、これは致命的である。最初のうちにイベントリから出してポケットなどに入れておかないとダメなのだ。


と、説明したところで冒頭に戻るのだが、そんな僕を助けてくれるのが『てんくうだんそう』である。

このスキルは虚空にマガジンを出現させてくれるという優れもので、装備している銃の口径に合わせた銃弾をオートで選択してくれると言う便利機能付き。

本当、こういうギリギリの戦いの時はマジで助かる。


「どりゃさっ!!」

『グラァッ!!』


堅い、本当に堅い。

卑怯なほどに堅いよ!?このキングオーク!!

ダメージ蓄積されてるのかね?

ゲームじゃないし、そんなわけないか。

もったいないけど魔法弾も使う?

いや、ここで倒さなくても時間を稼げば助けがくるだろうし・・・そもそも無駄だと思う。

となれば爆発系のもっと威力の強いものが必要だが、狙撃銃やロケットランチャーなんかを出してる隙は無い。たとえ出せたとしても重い武器はナンセンス。ギリギリ付いていけるレベルなのに、自分で動きを制限するなんてありえない。


『ディバインエッジ!!』

「やばっ!?」



キングオークの持つ斧から魔力が溢れ、ビームが当たり一面にランダムに降り注ぐ。

すばしっこい僕に当てるために広範囲攻撃に切り替えたのか。

だが、こんなのは所詮!!


「ほっ!

やっ!!とっ!!」


―――シューティングゲームに過ぎん!!

敵の弾幕をかわしつつ、懐に潜り込み、グレネードを投げつける。


「こいつは・・・どうだっ!!」


ばっかーん!と轟音と爆炎がキングオークを包む。



『グオオオォオオオオッ!!』


構わず突っ込んでくるとはっ!?

僕も突っ込んでそのまま相手の股下をくぐりぬける、ついでにグレネードの残り全てを投下!!

満遍なくあたりにばら撒き、銃で起爆。そのまま連鎖して起爆していくグレネード。

連続して起こる爆音。



『ガアアアアアアアアアッ!!』


びくともしないキングオーク。

これ、ムリゲーじゃない?

予想以上に堅いのは持っている斧の魔具が原因なのだろうか?

眼球すら弾かれるってどうよっ!?

ゲームに比べて敏捷が低く、しかし硬いという感じだ。


こうなったら最後の手段。


ペレッタをしまって、回転式拳銃リボルバーを一丁取り出した。

リボルバーの名前はM500。

世界最強の拳銃を目指して造られたといわれるモンスター銃で、デザインは普通の回転式拳銃。

ところがその大きさと重さと市販品として売られている中では一番威力があるとされる口径構造ゆえに凄まじい威力を持つモンスターガンとされている。

威力はあのマグナム銃デザートイーグルを超えるとも言われ、人間の頭にヘッドショットを決めた日には頭が粉々に吹き飛ぶほどの打撃力を持ちかねない銃器である。

貫通や、点の衝撃では無い。もはや“打撃”なのだ。

さらに言うとこれは強化されているため、通常時の15倍近くの威力を持つ。

正直、これの一発一発が必殺技ですか?と言える位のハンパ無い代物であるが、とにかくこれならばなんとかなるはず。

ただ、これを使うとあまりにも大変なことになるからできれば止めておきたいのだが、正直時間稼ぎも限界に近い。

いつコイツの攻撃を受けてもオカシクは無いくらいの拮抗具合なのだからして。

はぁ、と大きなため息を付きつつ。


『ブルアアアアアアアッ!!』

「ふっ!」


振りかぶってくる斧をかわし、距離をつめ、銃口を敵の心臓と思わしき場所に向ける。

髪の毛に斧が掠ったのは、相手が徐々にこちらの動きに慣れてる証拠。怖い。が。これで僕の勝ちだ!!


「見せてやろうっ!!

世界最強の威力をっ!!」


引き金を引く。と同時に視界がぐるんと周り、体中に痛みを覚える。

おおよそ銃が発した音とは思えない爆音をあたりに鳴り響かせて、M500はあらぬ方向へ飛んでいき、僕の腕と思わしきものが視界のかなり端に捉えた。腕があらぬ場所へと吹き飛んでいる。スプラッタだ。

もちろんこれは僕が予想外の反撃に遭った。わけではない。


『ガハァッ!?

キ、キサマァアアアアアアアッ!!』

「あぐっ!っ!?ぐえっ!?」



僕は地面に叩きつけられながら、どっかの家壁にぶつかってようやく止まる。

そして自らの血にうずまりながらも、何とか立ち上がろうとする。


「くそぅ・・・やっぱり反動が強すぎる。」



そう、『反動』。

その威力の大きさゆえに銃の反動がハンパないのである。

具体的に言うと僕の右腕が丸々肩まで千切れ飛び、体ももちろんかなりの距離を転げ飛ばされることになる。

肋骨が何本が折れて、頭もぶつけたようで頭から流れた血が目に入って、視界がつぶれる。

銃もどこへいったのやら。


銃の回収が面倒なのもネックだったりしたり。


「あ、あれを受けてまだ生きてるの?

な、なんなのこのキチガイ的な生物は・・・」


キングオークはというと横っ腹と右腕が半ばから綺麗に吹き飛んでいるにもかかわらず、普通に動いていた。

腕一本犠牲にしたというのに、殺せなかったと言うことだ。

めちゃくちゃ痛いのを我慢したって言うのに。

というか、心臓からずれすぎ。

ハンドガンスキルがあってこれなのだから、スキルが無かったら多分かすりもしなかっただろうなどと苦笑しつつ。おなじみ回復スプレーEXで腕を生やす。


「さて・・・どうしようか。」


M500はどっかへ行ってしまった。

次の手を考えないといけない。

現在進行形で再生し始めてるキングオークを見ると、頭を潰さないと勝てないだろうと思いつつ。


「ひぃあっ!?」


ばがーんっ!と僕の横に大きな斧が落ちてきた。

キングオークの右腕が付いている。

一緒に飛ばされていたようだ。


「ん?この斧?」


スキル『適応』と『身体強化』、『攻撃力強化』が付いている魔斧のようである。

鑑定眼がさっそく役にたってラッキー。

斧によじ登って取っ手部分に触れると僕に『適応』し、斧が縮んでいく。

僕より2周りほど大きな斧が出来上がる。が、もう少し小さくなれなかったのかな?と思わずには居られない。

どうもこれが限界のようだ。


「これ・・・使えるな。」


確実に殺せる手を思いついた僕であった。



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