↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
31/36

第31話 木っ端は無言で…


 「…惣ちゃま痩せたの…」

 「…ノボらて…」二人ともぽつりと呟いた。

 惣二のとっつぁの戦死通知が届いた翌日、惣二はかかと昇の家へ出かけた。かかは昇のおかかと家の中で話し込んでいる。惣二と昇は焚かなくなった無言の釜の前に座っている。

 空は曇り空が当たり前だというように、どこまでも曇りだ。

 

 二人もとっつぁが帰らなくなった事を知った上で無言だ。昇が木っ端を置くと惣二がその上に倒れない木っ端を積む。昇がわずかに涙を拭った。二人は木っ端を見つめながら、とっつぁの居ない世界を考えている。繰り返しながら二人は無言だ。

 「ノボさあ…戦争終わったしね… ぼちぼち釜焚くんろ?」

 「風呂、入りに来っかのー…やっと飯食っとるぐらいだしね…」

 「そいがー…腹減ってばっかだいやー…」

 

 無言で代わりばんこに木っ端を積んで、小さな櫓(やぐら)が出来た。

 「…ノボさあ…そろそろ…『惣ちゃま』やめらて…」

 「惣ちゃま?…」

 「そうらて……もう『ちゃま』違うしのお…」

 「………”ソウ“…… …いやいーや、股(まーた)寒(さーめ)のー」

 「おれらて寒(さーめ)て…… “ソウジ”でええて… いっぺん ”こらっソウジ“ 言ってみ…」

 「…こらっソウジ…」

 「もっぺん…」

 「こらっ!ソウジ!」

 「言ってるまーに慣れるろー」

 「こらっ ……こらっ、こらっ!…」

 「違うしね…」


 秋は暮れるのが早い。曇り空が影を作らないまま薄い暗がりが滲(にじ)んだ。

 二人は冷たくなった尻を上げて手を払った。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。