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マルボとキャス  作者: 苺堂本舗


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9/14

【番外編 : 出逢い 】

番外編として

ロゼとキャスの出会いの話です。

不適切な性的表現や暴力的表現がありますので

ご注意ください…。

嘘。


嘘ー嘘ー嘘ー嘘ー嘘ー嘘…


全部、嘘。


愛?希望?夢?

自分から動けば?

手を伸ばせば手に入る?


笑える


傑作!


マジウケる!!



この世界にあるのは

嫉妬、憎しみ、自己顕示欲に承認欲求

この美化された世界は全部ー嘘。


あの男は女を買っているし

あの女は浮気をしている

あの女は子供を殴っているし

あの男は病気の母親を見捨てた


痩せた野良犬に餌をあげる人間なんていない…



みんな自分自分自分自分…

自分自分自分自分自分自分

自分自分自分自分自分自分


自分が一番可愛い。


ーほら、サッサっと脱げって言ってんだよ!ー


下品な笑い声…思い出す…

まだまだ、アイツの首輪は取れてない…


ーほら、口開けって言ってんだよ!!ー


クマの着ぐるみの中の表情が歪む

心拍数が上がる…

背筋に冷や汗が出る…

夏なのに寒い…


それでも私は

クマの着ぐるみで無表情な顔を隠して風船を配る…


どうせクソみたいな大人になる

そんな予備軍の子供達に…


ほら、また来た…だる………



「このクマ、わたしの次に可愛いわね」


……は?


なんか…クソガキが

キラキラした目で話しかけてきてる。


「ねぇ、そうでしょ?

 わたしの方が可愛いって言いなさいよ」


(うっわ……)


思考が真っ黒になる…。

でも、クマの顔はニッコリと笑っている…。


「ふふ、わかってるわね、このクマ」


(殴りてぇ……超殴りてぇ…

 でも耐えろ、全ては金のために……)


「あー、お前か…」

風船を差し出した直後、脚を軽く蹴られる。


(……あーこいつの妹か…納得。

 つーか蹴んな痛いっての、普通に…)


少年が風船を受け取ると、妹が言う。


「いいな〜! マルボばっかずるい!」


(黙れ小娘…)


「またね〜バイバ〜イ♡」


自然とつられて手を振る…

(2度と来んな…はぁ、マジでタバコ吸いて〜帰ろ…)


店に戻ろうと一歩踏み出したその時。



──視線。



後ろの花壇に揺れる風船…


バレバレ。



「おいっ」

クマの着ぐるみを着たままロゼが呼ぶー


物陰から出てきたのは、さっきの姫様。


「どこまでついてくんのよ、あんた…」


「バレてた?」


「バレバレ。

 てかその風船で丸見えなのマジでウケる」


「ぐぬぬ…」


「で?あんた何? ストーカー? クマフェチ?

 それとも変態?」




「……キャス」



「キャス…ね。ふーん」


ちょっと困ったように眉を下げて

でも目はギラギラしてる。


この子、壊れてる。ちょっとじゃなく

結構マズい感じのやつ。


「女の人がひとりでこんなとこ歩いてると危ないんだよ? だから、私がついててあげる」


着ぐるみの手を、自然に握られる。


──ドクン。

心臓が跳ねた。


(あれ、何これ……なんか、あったかい……?)


「……はぁ、しゃーない。店、近いけど来る?」


「うん!」



(……いや…断れよ……クソガキ…)



カランカラ〜ン…

店のドアベルが、やかましく鳴る。


「へぇ、ここがクマさんのすみか?」

キャスが無邪気に店内を見回す。


「洞窟じゃなくてゴメンね〜」

(ま、どうせガキでしょ。適当にあしらって返そ)


オレンジジュースを差し出すと

キャスが小首をかしげる。


「ありがと。で?いつ、その頭とってくれるの?」

(…うわ、意外と踏み込んでくるタイプ)



そのとき——



カランカラン、とドアが開く。


「おーいロゼ〜来てやったぞ〜」


酔っ払いの常連3人組。見るからに泥酔状態…


「なんだこの着ぐるみ?

 それに何このガキ…イベントでもあんの?」


くそも面白くない話で

ゲハハハハハとゲスな笑い声が響く


「なぁなぁ、お嬢ちゃん

 ヒマならおじさんにお酒ついでくれよ♡」


(うわ……この…くっそじじい……)


クマの手が

そっとカウンターのフォークに手が伸びる。


「こんなちっちぇえ女の子、やめとけって〜」

1人の男が言うも

「いやいや、こういうのがたまんねぇのよ!

 だって見ろよこの肌!

 ぷにぷに〜でピッチピチ〜だぜ?」



ーーザザッ

(あの時の声、あの言葉、あの匂い…)

『てめぇは俺のペットだろ?ロゼぇ?このダメ犬がよ!舐めろよ!』

ーー


男達の会話が続くたび、過去のロゼの記憶が蘇る…


「胸はちっせぇけどよぉ〜背徳感ってやつ?

 悪いことだって感じながらさせんのが

 最高に興奮すんのよ!」


ーーザザザッ

(息が詰まる感触…)

『マジで舐めやがった♡そうだよなぁ〜生きるためにはしなきゃだよなぁ?』

——


クマの手の中のフォークが震える


「家の娘なんか、もぉ完全に俺のオモチャよ♡

 おもちゃ♡」


——ザザザザ

『なんで犬が服着てんだ?あ?躾が必要か???』

——


(もぉ…やめて…喋らないで)

クマの頭の中のロゼの瞳に涙が溜まる

過去の自分が何度もフラッシュバックする


(でも…相手は3人…

 勝てる?守れる?怖い…嫌だ…思考が混戦する)


そうしている間に、男がまたキャスに絡みつくー


「ほら、顔見せてみな?

 どんなツラしてんのよ、えぇ?」


男がキャスの髪を乱暴に掴み

顔を力づくで見ようとしたその瞬間ー



ーゴッー


重く、湿った音…

キャスのブーツが男のスネにめり込む。


ーミシッー


何が起きたかも分からず

ゆっくりと膝から崩れ落ちる男。


「テメェこのガキ!!」

二人目の男が飛びかかるが

キャスはその男の耳を掴み、ふわっと体を浮かせ

体重をかけ思い切り床に叩きつける。


ーブチッッッー

耳が裂け、悲鳴を上げながら床をのたうち回る男。



そして三人目が逃げようとしたその時——

キャスはすぐ側にあった傘立ての傘を手に取り

柄で男の足を引っ掛けると、男はそのまま浮き

頭から倒れ落ちた…


ーグシャァッー



キャスが振り返り、脚を抱きもがく男の顔を踏みつけ

少しづつチカラを加えていく…


「ねぇ〜おじさ〜ん。キャスともっと遊んでよ〜?」

その顔は笑顔で満ちていたー


「ねぇ〜?おじさんの娘と〜私、どっちが可愛い?」

キャスの足が胸元から腹部へと移動していく…

ゆっくりとーじらすようにー…


ガタガタ震える男。



「おもちゃにしてるんだよね〜娘ちゃんをさぁ〜」



「おじさんの娘も、こんなふうに震えてたの?」



「泣いてた?それとも…諦めてたのかな?」


クマの着ぐるみの中は涙で溢れていた

(諦めてた…諦めて…従うしかなかった…)



「こんなのがあるから、いけないんだよね?」

(この子…私の代わりに?)


フッと笑うキャスに

「やめてくれ」と懇願する男



「おじさんも〜やめなかったんでしょ?」




——プチン——




キャスの足が、男の股間を押し潰す。

絶叫し、のたうち回る男。嘔吐。痙攣。


(なんなの?なんなのこの子?

 過去の記憶が消えていくのを感じるー)


呆気にとられていたそこに


カランカランと、またドアベルが鳴り響くー




「…最悪…」




ドアを開けて状況を把握したマルボが

目の前で倒れ起きあがろうとしていた男に話す。


「アレ連れて帰れよ…」


アゴで指すと、男は何も言わず

死体のような仲間2人をを抱えて出ていく。


マルボはカウンターの席に座り

キャスは懐いた子犬のようにマルボの隣に座る。



「マルボ。わたし殺さなかったよ〜偉いでしょ?」


「はいはい、えらいえらい

 で?いつまで、その頭つけてんだよ?」

マルボがロゼを見て言う。


(私…今まで何してたんだろ……)

(あの子、ただのクソガキかと思ってた……けど…)



「ごめんねクマさん、びっくりさせて」

 キャスが小さく笑う。



「でも、キャス頑張ったんだよ。

 お店、壊さないように」



「え?」



…その言葉で——全部やられたー

 この子…この店と私も守っていたの?



全てが理解不能で思考が停止ー

私の価値観ではこの子は測れない…



「もう、あっついんだよコレ!!」

ロゼは着ぐるみの頭を脱ぎ捨てる。



「ふふっ、やっと正体を明かしたわね!」


キャスが覗き込み、ロゼの顔をのぞき見る。


「え…

 …

 …

 やだ…

 …嘘…」


「…私より……可愛いかも……」



ショックに唇を尖らせるキャス。


ロゼはニヤリと笑い




「ううん、キャスのほうが100倍可愛いよ〜♡」


思わずキャスの頭をくしゃくしゃ撫でる。


「でっしょ〜そうでしょ〜」

調子に乗るキャスに


「マジでキャスたん、カワイさ神ってる〜〜〜♡」

「ロゼのギャル語、うらやましい〜ずる〜〜〜い!」


マルボはため息をつき


「ロゼ、いいから飲み物くれ……」

疲れた声でつぶやいた。




ーこれが私の中の天使との出会いだったー

私の過去なんか知らないこの子が、知らず知らずのうちに私の闇に光を差してくれたー

自分のためじゃなく、他人のために動く…

そんな人間がいることを知らしめられた…

(後から話を聞いたら「は?人のため?ないないないない。あれはただムカついただけ」だったらしい…まったくキャスらしい…笑)


そして、時間は経ち日常へと戻るー


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