【第6話:入学】
ガヤガヤとざわめく教室。
窓からは日が差し込み
他の生徒がより一層キラキラと輝いてる様に見えた。
マルボは自分の席に座り
誰に話すこともなく頬杖をつき
机の角を見ていた
分かっていた
馴染むことが難しいことなんてー
自然と溜め息が漏れる
平和すぎるこの空間が
笑い声が響くこの空間が
自分には相応しくない…
斜め後ろのキャスを見る
キャスはキョロキョロと周りを見ては
顔を赤くしー俯くを繰り返している
「お前もそうだよな…」
ボソッと呟き、また机の角を見つめるー
ガラガラーっと教室のドアが開き
コツ…コツ…と足音が中央に向かう
嫌な予感はしていた。
でも、まさか――
ー登校前夜ー
制服姿ではしゃぐキャス。
スカートをクルクル回しながら、鏡の前で無邪気に笑っていた。
ロゼは玄関で、帰宅の準備を終え
「それじゃーーーーっ!二人とも!
ちゃんとお勉強頑張るんだぞぉ〜♡
ちゃ〜んとしないと〜先生にぃ〜すっごくすっごく
怒られちゃうからね〜〜っ♪じゃあね〜!」
マルボは
「マジで、うるせぇな…」とぼやきながらも、
嫌な予感をしていた…
そして、嫌な予感は的中するー
足音が止まると同時に、聞き慣れたハイテンションな声が教室を支配した。
「はじめまして〜♫
今日からこのクラスを担当するぅ〜
ロゼ先生でぇ〜〜〜〜す♡」
「ロゼちゃんでも!
ロゼたんでも!
ロゼっちでも呼び方は
好きにしていいからねぇ〜♡
みんな、仲良くしてねぇ〜〜〜っ♪」
マルボの思考回路がが一瞬で停止する。
「……なぜ、お前がいるーーー!!!」
全力で突っ込みたい気持ちを押し殺し
頭を抱えるしかない…
チラッとキャスの方を見ると
キャスは目をキラキラさせてロゼを見つめてる
「まぁ…いっか…」
「しっかし」
マルボは思わずぼそりと呟く。
「……どんな手使ったんだよ、あのギャル教師……」
教室内はロゼのせいで騒がしく
容赦なく明るい空気がマルボを覆う…
「やっぱ……人多いな……」
「フードかぶりてぇ……」
「落ちつかねぇ……」
窓の向こうでは、桜が風に舞っていた。
チャイムが鳴り終わると、ロゼはいなくなったが
教室内の騒々しさは止まない。
生徒たちがそれぞれ思い思いに声を交わす中、
キャスのまわりにも女子たちが集まり始める。
「ねぇねぇ中学で一緒じゃなかったよね?」
「ねぇねぇ、マジ可愛い〜〜♡」
「ほんとそれ〜!てか地元の子じゃないよね?」
「そのヘアピン可愛い!」
「え〜髪もツヤツヤで可愛い〜」
キャスは、固まっていた。
笑顔だけはなんとか貼り付けていたけど、目が完全に迷子。
(ひ、人……近い……はなし……わたし……)
口をパクパクとさせながらも、一言も発せない。
その小さな肩は、尋常じゃないほどこわばっていた。
一方マルボの方にも、男子生徒が2人近づいてくる。
「なぁなぁ、お前どこ中だった?」
「あの先生まじで可愛い〜このクラス当たりじゃね?
「好きなゲームとかある?」
マルボはノーリアクション。
それでも空気を読まない男子達はしゃべり続ける。
「あの子、お前の妹だよな?」
「妹ちゃん、可愛いよなぁ〜〜♡」
「紹介してよ〜!マジで付き合いてぇ〜」
「付き合ったらさ、お前のこと“おにぃちゃん”って呼ぶわwww」
――その瞬間。
ガタッ!
マルボが無言で立ち上がる。
「……」
男子たちは一瞬ビクッと固まり、空気が止まる。
マルボは静かに顔を近づけ、
周囲に聞こえない声で――
「……釣り合わねぇから、やめとけ」
その声は、低く、確実に“殺意”を孕んでいた。
男子たちは呆然と立ち尽くし、
教室に再びチャイムの音が鳴り響いた。
ー放課後 ー
夕陽が射し込む廃ビルの一室。
制服のまま、キャスとマルボは椅子に沈み込んでいた。
マルボが目を閉じたままぼそりと呟く。
「……マジキツイ」
キャスも頭をガクンと垂らしながら、
「……10年分の、いらない“可愛い”もらいました……」
その沈黙の中、ふいに聞き慣れた声が響いた。
「……社会人、つっら……」
ビクリと振り返る二人。
その視線の先――
ソファに倒れ込んでいるロゼ。
「って、なんでお前がいんだよ!!!」
マルボが叫ぶ。
「学校のあとまた職場(バーunderbearー)に帰んのが嫌なんだよぉ〜〜……」
ソファに倒れたままー魂の抜けた顔で呟いた。




