【第5話:承認】
部屋はシンと静まり返っていた。
真っ暗闇の中で一人イスに座り
テーブルに顔を突伏すキャスの隣に
マルボは腰を掛け
ランプに火を灯す
明るくなっても顔をそむけ不貞腐れるキャスの
頭の上にそっとロゼから貰った封筒を置く…。
「……ほら」
キャスは無言で封を切り、書類を取り出す。
目を何度も擦りながら何度も見返す。
「……嘘……」
疑いの色を含んだ声で、ゆっくりとマルボの顔を見上げた。
彼女の手にあるのは――
『学校の入学証明書』
マルボは冷蔵庫の中を覗き込みながら棒読みで発する
「ごにゅ〜がく、おめでと〜ございま〜す」
突然の言葉に、キャスは嬉しそうに走り寄り、マルボに抱きついた。
「マルボォ〜だいすき〜♡」
「……だ〜!そう言うの、マジでやめてくれ」
キャスはいたずらっぽく笑い、
さらに問いかける。
「でも、マルボも行くの?」
「え?」
キャスはマルボにもう一枚の紙を差し出す。
そこにはしっかりと
“マルボ・マイセン本校の入学を許可する”
と記されていた。
マルボは一瞬、ロゼからの封筒を見つめる。
「あいつ……」
部屋の静寂を破り、ガチャリとドアが開く音。
二人の体がぴりりと緊張に包まれた。
「たっきゅーびんでーす!
忘れ物お届けにあがりましたー!」
キャスが飛び跳ねるように駆け寄り
「あっ、ロゼだ!!!」
キャスが荷物を受け取り
満面の笑みでマルボに差し出されるー
目の前に差し出されたそれは…
男性用の制服だった。
「追加料金払えねぇぞ……」
マルボが呟くと、ロゼはクスクスと笑い、
「ごにゅーがくおめでとーございまーす♡」と
からかうように声を響かせた。
「マジで最悪……」
「……おい」
マルボがぼそりと声を漏らす。
「ん?」
ロゼは首を傾げる。
「楽しんでんだろ」
「いやいやいやいや~~
そんなことぉ~~~……あるかな♡」
悪びれもなく笑うロゼ。
「……チッ」
マルボの舌打ちが、小さく部屋に響く。
そして、奥の方から、ふんふふ〜ん♪と鼻歌が聞こえてくる。
キャスが制服に着替えているようだ。
ロゼは目を細めながら、ぼそっと呟く。
「あんたがいないと、学校が血の海になるわよ」
「……あの殺戮兵器止められるの
アンタだけなんだから」
一瞬だけ視線を伏せ、
マルボがぽつりと呟く。
「……絶対、払うから…」
ロゼは少しだけ目を細め、やわらかい声で返す。
「お金より、“ありがとう”の方が
おねーさん嬉しいんだけどなぁ〜♡」
マルボは俯き両手をパーカーのポケットに入れ
小さな声でポツリと…
「……あ、あ……ありが……」
「見て見て見て見てーっ!!」
制服に身を包んだキャスが、勢いよく部屋から
飛び出してくる。
「可愛い!?可愛いよね!?超撃かわだよね!!」
スカートを翻しながら、クルクルと回転する。
ロゼが即座に叫ぶ。
「ちょーーーー可愛いッ!!
マジ天使降臨って感じ!!
映えすぎて爆発する〜ッ♡」
マルボは、一瞬だけ視線を逸らし―
ふっと、少しだけ笑った。
ほんの一瞬だけ、
味わったことのない温かさを感じたー




