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【第3話:風船】
街。
明るい商店街。
暖かそうな灯り。笑い声。子供のはしゃぎ声。
マルボはフードを深く被り、歩きながら顔をしかめる。
「……苦手なんだよな、この空気…」
花屋と靴屋の間ーその前で、クマの着ぐるみが親子連れに愛想を振りまいて風船を配っていた。
ふわりと揺れる赤い風船。
子供の笑い声。
そんな光景に、マルボは苛立ちを隠せず、舌打ちをする。
「おい」
着ぐるみの足を、軽く蹴る。
クマがゆっくり振り返る。
「これ、頼む」
マルボは、小さな紙切れをクマの手に押しつける。
紙を受け取ったクマは無言で風船を差し出してきて、マルボの頭を撫でる。
マルボはその手を振り払い、風船を受け取りその場をすぐに離れた。
商店街の裏手――人気のない路地裏。
マルボは周囲を見渡し、誰もいないことを確認すると、
風船の紐に括られていた小さな紙をほどいた。
「河川敷のいつもの店で待ってるクマ〜♡」
文字は丸っこく、楽しげで、
今のマルボの精神状態とは真逆のテンションだった。
「……はぁ。浮かれやがって……」
メモをポケットに押し込み、
風船をぐっと壁に擦りつけるせる――
パンッ!!
風船は、乾いた破裂音と共に消えた。
「……マジで最悪…」
小さく吐き捨て、マルボはまた歩き出した。




