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マルボとキャス  作者: 苺堂本舗


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2/16

【第2話:現実】

「ハァ……ハァ……ハァ……ッ」




息を切らしながら、二人は人気のない路地裏へと駆け込んだ。


壁にもたれかかる少年が、荒い呼吸を整えながら声を漏らす。




「……キャス、やりすぎだぞ。また……」


「いつも言ってるだろ、程々にしろって……」




キャスは下を向いて、指先をもじもじといじりながら呟く。




「……ごめん、マルボ……止められなくて……」




―静寂―




「ガサッ」




マルボがキャスの手元に目をやる。


「……キャス?それ…なんだ?」




キャスが小さく笑って袋を持ち上げた。


「あ、これ?これ〜なんか……勢いでおじさんの荷物、持ってきちゃった♡」




マルボが、あきれたようにため息を吐く。




「ガサガサッ…ガサッ」


キャスが紙袋の中を漁る音が、路地の静けさにやけに響いた。




「見て、マルボ!!」


彼女が取り出したのは、


くすんだ赤のリボンがついたブレザータイプの制服だった。


同じ赤系のチェック柄のスカートが添えられている。




キャスの目がキラキラと光る。


クリスマスプレゼントをもらった子供のような笑顔が溢れる。




「これ…ねぇ!これで私も学校行ける???ねぇ!マルボォ〜♡」




その言葉に、マルボは静かに、重たく――




「……いや、無理だろ。申請とか許可とか……」


「そもそも、俺らには人権なんて……ない…」




その一言で、キャスの目から光が消える。


笑顔も、夢も、ふっとどこかに消えていった。




「……そ、そうだよね……」




キャスは制服をそっと紙袋に戻す…。


マルボは頭を抱え、深いため息をひとつ吐いたあと、


キャスに向かってぽつりと呟く。




「……ほら、帰るぞ」




キャスは言葉もなくうなずく。




紙袋を抱きしめるように抱え、


二人は廃ビルの自分たちの家へと帰って行った




玄関の扉を開き部屋に入るないなや。


キャスは


「ガンッ!! ガシャァンッ!!」と


棚の上のガラス瓶を叩き落とし、


テーブルを蹴り飛ばし、机の上の書類をばら撒いた。




「なんでよ……なんで、私だけ……ッ!!」




激しい音と悲痛な呟きの後に静けさがやってくる。




マルボはキャスの方を一瞥し、何も言わずに靴を履いた。




「……ちょっと出てくる」


扉が閉まり、カチャと鍵の閉まる音が響く。




キャスはまるで力尽きたように床に座り込んだ。






「なんで…私だけ…」






膝に額を伏せたその肩は、小さく震えていた…

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