【第2話:現実】
「ハァ……ハァ……ハァ……ッ」
息を切らしながら、二人は人気のない路地裏へと駆け込んだ。
壁にもたれかかる少年が、荒い呼吸を整えながら声を漏らす。
「……キャス、やりすぎだぞ。また……」
「いつも言ってるだろ、程々にしろって……」
キャスは下を向いて、指先をもじもじといじりながら呟く。
「……ごめん、マルボ……止められなくて……」
―静寂―
「ガサッ」
マルボがキャスの手元に目をやる。
「……キャス?それ…なんだ?」
キャスが小さく笑って袋を持ち上げた。
「あ、これ?これ〜なんか……勢いでおじさんの荷物、持ってきちゃった♡」
マルボが、あきれたようにため息を吐く。
「ガサガサッ…ガサッ」
キャスが紙袋の中を漁る音が、路地の静けさにやけに響いた。
「見て、マルボ!!」
彼女が取り出したのは、
くすんだ赤のリボンがついたブレザータイプの制服だった。
同じ赤系のチェック柄のスカートが添えられている。
キャスの目がキラキラと光る。
クリスマスプレゼントをもらった子供のような笑顔が溢れる。
「これ…ねぇ!これで私も学校行ける???ねぇ!マルボォ〜♡」
その言葉に、マルボは静かに、重たく――
「……いや、無理だろ。申請とか許可とか……」
「そもそも、俺らには人権なんて……ない…」
その一言で、キャスの目から光が消える。
笑顔も、夢も、ふっとどこかに消えていった。
「……そ、そうだよね……」
キャスは制服をそっと紙袋に戻す…。
マルボは頭を抱え、深いため息をひとつ吐いたあと、
キャスに向かってぽつりと呟く。
「……ほら、帰るぞ」
キャスは言葉もなくうなずく。
紙袋を抱きしめるように抱え、
二人は廃ビルの自分たちの家へと帰って行った
玄関の扉を開き部屋に入るないなや。
キャスは
「ガンッ!! ガシャァンッ!!」と
棚の上のガラス瓶を叩き落とし、
テーブルを蹴り飛ばし、机の上の書類をばら撒いた。
「なんでよ……なんで、私だけ……ッ!!」
激しい音と悲痛な呟きの後に静けさがやってくる。
マルボはキャスの方を一瞥し、何も言わずに靴を履いた。
「……ちょっと出てくる」
扉が閉まり、カチャと鍵の閉まる音が響く。
キャスはまるで力尽きたように床に座り込んだ。
「なんで…私だけ…」
膝に額を伏せたその肩は、小さく震えていた…




