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マルボとキャス  作者: 苺堂本舗


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16/16

【第15話:贈物】

ガチャッガチャギリッガチャ…


玄関の鍵が開くまでのその音は

いつもより乱暴で焦りを感じる…



マルボは読んでいた本をそっと閉じ

ソファから立ち上がりドアの方を注視する…



ドアが開くと同時に

マルボは安堵した…


「なんだ、ロゼか…」


しかし次の瞬間

マルボの表情が固まった…



「キャス?」



ラークに背負われた血まみれのキャス…


マルボが二歩、三歩とおそるおそる近づく



「キャ…ス?」



ロゼがキャスを抱き取りソファにそっと寝かせる。


横たわるキャスの服は、赤黒い血が広がっていた。



「……誰だよ…」



マルボがラークに詰め寄る


「誰がキャスを!! こんな目に!!!」

怒り。混乱。焦り。

感情を制御できず、拳が震える。


ラークの服を握りしめさらに詰め寄る…



その横で、ロゼが膝をつく…


「ごめん…ごめんねマルボ…

 私が……私が悪いの……


 私がヘマしたから……」



ラークはマルボの両肩にそっと手を置き

しゃがみ目線を合わせる…



「マルボ。キャスは無傷だ。いいから落ち着け」



「でも、あの…血……」

かすれた声。



マルボは目を伏せて言葉を詰まらせる…



ラークが、優しく微笑みかける…



「全部、返り血だ。キャスのじゃない。な?」

乗せていた手に力をこめる…


マルボの肩の震えを抑えるように…



「……ふぅ……ロゼぇ〜…?」


「お前シャワー入ってこい

 せっかくの美人が台無しだぞ♪」



「え……うん…でも…」

とロゼはキャスを見つめる


「大丈夫。俺が見てる…マルボも…な」



「それじゃあ…うん…入ってくる…」


ロゼは立ち上がり、ふらつきながら脱衣所へ向かった。


扉が、力なく静かに閉まる。


部屋には静寂と、微かなシャワー音だけが響く。



ラークがキャスを見つめながら、マルボに声をかける。


「お前ら……過去に何があったんだ?」



「……それが…覚えてないんだ」


「…そっか」


ラークは優しく乱暴にマルボの頭を撫でる。



「また、キャス……暴走したんだな?」

「そんなところだ」



「……そっか……」



しばしの沈黙。


キャスの寝顔に、涙が一筋流れる。



「マルボ……ひとりに、しないで……」



「ダメだああああああ!」

突然、ラークが大声を出す。



「だめだって!

 おじさんもう、涙腺が! 年だから! わあああ!」

その声に、キャスのまぶたがピクリと反応し

すぐに見開き状態を起こすー


「ロゼはっっ!!!」


その声は起き抜けとは思えないほど

殺気をはらんでいた。


「シャワー中だよ。安心しろ、キャス」

マルボの声に、ふっと緊張が解ける。


「マルボぉぉぉぉぉ!!」


涙をぼろぼろとこぼし、飛びつこうとするが——

マルボは無言でキャスの額に手を当て、制止した。


「その服のままで来るな。ロゼのとこ行ってやれ」


「うんっ♪」

パッと笑顔を見せて、キャスが駆けていく。


その直後、シャワールームからは明るい声が響いてくる。



「じゃあおじさんも混ぜてもらおうかな〜♪」

ラークがウキウキとシャワー室へ向かう——が。


「嫌われるぞ」

マルボの一言でピタリと足が止まる。


「だいぶマシな顔になったな〜マルボ」


「うるっせぇ…」

顔を背け、冷蔵庫のドアを開くマルボ


「こわいねぇ〜思春期の男子は〜

 あっそうそう、土産に新しいクラフトコーラ

 見つけて来たんだよ、今回は一缶だけな」


男2人の雑談が続く、笑顔も戻り

くだらない話が優しく部屋を包み込むー


そこへキャスとロゼがリビングへ戻ってきた。


ふわりとした湯上がりの香り。


キャスがふと立ち止まり

マルボの手元をじっと見つめる。


「……そのコーラ!またマルボにだけ!?」

膨らむほっぺ。


「——あっ!」

ロゼが声を上げて、脱衣所へ向かい。


何食わぬ顔でキャスの隣に戻り

しゃがみ、キャスの髪を耳にかける…


「ロゼぇ、くすぐったいってば!」

「いいから、ジッとしてなって♪」


カチッ。

耳元で、金属音が鳴る。


一瞬、小さな痛み。

「……っ!」


そして、もう片方の耳にも——



「キャス、鏡見てごらん?」

促されて、鏡の前に立つ。


耳元に輝くのは、淡いピンクの宝石がついた

小さなイヤリング。


「……え、なにこれ。可愛い……でも、耳……」


「大丈夫。これ、磁石式のやつだから。

 手入れの必要無し♪」



「ありがとーーー!!ロゼーーー!!

 大事にする、すごく、すっごく大事にする!

 ……

 ……

 でもね…

 でも〜…」



キャスは、そっと片方のイヤリングを外し

ロゼの手にそっと乗せた。



「ロゼにも、つけて欲しいな……って」



ロゼが俯き、目が潤いはじめるーがー

顔を上げ満面の笑顔で


「キャス…もぉ〜〜可愛いすぎ!!!!!!」


「で?」

キャスのがラークを見て微笑む。


「おじさん。私に渡すものあるよね?」


手を腰に当て、じりじりとプレッシャーをかける。

「この前は、マルボにしか渡さなかったし…」

「今日もマルボに新しいのあげてた…」


ラークが両手を挙げ


「はいはいはい〜!まぁまぁまぁまぁ〜!」


と後ずさるー



その横で、マルボがぽつりと


「戦いの基本は……逃げ道を用意しておくこと」


「マルボ!それ、正解!!!」

バタン!と玄関のドアが開き、ラークは逃げ出した。


「……逃げたわね、あのオッサン」


「ふふ…いや〜戻ってくるぞ。たぶん」

マルボがテーブルのタバコとライターを眺めながら

そう呟いた。



——数十分後。



「バッタバタバターーーン!!!」


騒がしい音と共に、ラークが戻ってきた

息を切らせながら、紙袋をキャスに差し出した。


「……ったく、もう……」


キャスはその袋を受け取り、袋の中を覗き込む。

一瞬、ぽかんとするも。

次の瞬間——ふわっと、顔がほころぶ。


中に入っていたのは、真っ白なワンピース。



ロゼがキャスにこっそり耳打ちをする。


キャスがニヤリと笑い、くるりとラークに向き直る。



そして——



紙袋をギュッと握り



「すっごく嬉しい…すっごく…

 すぐ着てくるから、待っててね」



少し上目遣いで


「……パァパ♡」




——。




「ロ、ロゼ!!おまえ……

 なんちゅーこと吹き込んでんだッ!!!」


ラークが顔を真っ赤にして叫ぶ。


キャスはくすくす笑って部屋の奥へ。


その背中に、ふっと息をついて

ラークがソファーにどさりと倒れ込んだ。



天井を見つめながら、ぽつりと。

「……もう、死んでもいいかも……」

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