表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マルボとキャス  作者: 苺堂本舗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/16

【第14話:暴走】

————————————

母親の愛情?

そんなのは覚えていない。

10歳のときには、もういなくなった存在。

10歳まで一緒だったから何?

覚えているのは、娘の前でも構わず

カミソリで手首を傷つける女の姿だけ。

……アイツは私を娘とも思っていなかったかもね…

目に映っていたのは息子だけだろから…

————————————


「ロゼ?」


「ん? どした〜キャス〜」

「ロゼのピアスって、なんか意味あるの?」


「ん〜…特にないなぁ。

 あるとすれば……

 大人になりたかったからーかな?」


「痛くなかった?」

耳に触れながら、不安そうに聞くキャス。

「いったいよ〜。

 ちゃんと消毒しないと

 可愛いキャスちゃんの耳がボトって

 落ちちゃうかも〜?」

「ひっ……や、やめとく……こわすぎ……」

「よしっと、化粧〜完璧!」

「私、アンダーベアー行ってくるから

 いい子で待っててね〜」


そう言って部屋を出ていくロゼ。


マルボは夏休み中ということもあって

まだ眠っている。



「ひーまー……」



バルコニーに出て、通りを見ると

ロゼが気づいて手を振ってくる。

キャスも、それに手を振って返す。


ロゼが背を向けた瞬間。

ふっと、心に寂しさが入り込んできた。



「……もう一回、振り向いてくれないかな…」




ロゼは商店街を通り抜け、アンダーベアーへ向かっていた。


人けがまばらな通りについた時、ふと、気配に気づく。


プロにしては、あまりにもバレバレ…。

(尾行か…たぶん素人……それにしても…今日は暑ちぃ……)


脇道に入り、タバコに火をつけ隙を作り待ち構える。


近づいてくる足音。


3…2…1…

思い切り振り返り

伸ばされた腕をサクッとかわし

その腕を掴む

状態を捻りー背負いー投げるっ


ドサっと倒れた相手の顔に

タバコの火をグッと近づける——


「誰の差し金?答えないと…


ガン!!!!


目の前が真っ白に光る

そして後頭部に鈍い痛みが走るー


(くっ……まずった、2人か……)


意識が遠のき、静かにロゼは、その場に崩れ落ちた。





「来ちゃった……怒られるかな、勝手に来て……

でも……ここまで来たら、さ……」

軽いベルの音が、アンダーベアーの店内に響く。

「……鍵開いてる…」



「ロゼ〜?」

呼んでみるが返事がない…


ポスンとカウンターの椅子に腰を下ろし

クルクル回る…


「どこいったんだろ…」

椅子から軽く飛び降りカウンターの奥の冷蔵庫から

勝手にオレンジジュースを取り出す。


カランカラン……


ベルの音が鳴る


(やば……勝手に飲んだのバレたら……)


その場で身を縮めるキャスー



だが入ってきたのは、知らない男たちだった。


4人の男のガサツな足音とタバコの臭い…

そして店内に漂う異様な空気。


「お客さん?」

そっとカウンター越しに辺りを見渡すキャス…



ふと目に留まったのは…

——床。そこに、赤い点が等間隔に落ちている…


……血?

考えることもなく

一瞬にしてキャスの身体は動いていた。

無意識のうちに右手でフォークを握り

ためらいもなく

「おじさん……ロゼは、どこ?」

その一言の直後——

振り向いた男の目に、フォークが突き刺さる。

「ぎゃあああッ!!」

その叫び声に混じり酒瓶が割れる音ー

次の男は頭から酒まみれになり、酒と血が混ざった床にドサリと頭を押さえながら倒れる。

そして3人目の男の腹に、手に残った割れた酒瓶を深く深くねじ込む。


ラストの1人に血塗れの瓶を向けるキャス。


「おい、そこのガキ。その辺でやめとけ」

店の奥の陰から別の男が現れる…


その男の腕の中には、ガムテープで拘束され気絶しているロゼ…その喉元にナイフをあてがいキャスに話しかけるー


「これ以上やったら……この女、殺すよ…フヒ♡」

男はニヤリと笑いながら、キャスを睨む。


「動くなよぉ〜?こーゆーの、興奮すんだよね♡」


ナイフの先端をロゼのタンクトップの肩紐にかける。

「あんた…何してるか分かってんの?」


「は?分かってるよ!分かってるに決まってんだろ?おっと…今、動いたよな?2センチ…」


「動いてない…動かないから…やめて…」


「だ〜め♡2センチは切る♡」

そう言うと男はロゼの肩紐をスパっと切り裂いた…

ハラリと落ちる肩紐…


「フヒャ〜いいねぇ、いいねぇ〜その目……絶望と罪悪感で、歪んじゃってさぁ〜」


「もっと見せてくれよぉ〜その目ーーー!!」


チ……ッと

ナイフが、ロゼの肩をなぞるように切り裂く…

じわっと血がにじみ……その痛みで、ロゼが目を覚ますっ


「いった…!なに?あんた何して!?」


「おっと〜お目覚めですか〜フヒ!なにしてるかって?しつけだよしつけ〜」


「意味わかんないし!離しなさいよ!!」

ロゼが体を動かし抵抗するもー


ナイフが首元にあてがわれ

「立場分かってる?おねぇちゃん?分かるよね〜フヒ♡死ぬよ♡」


ロゼは体の力を抜き、抵抗をやめる…

そして目の前のキャスに気付く…


「キャ…ス?」


「ご…ごめんなさい…」

うつむき…声を震わせ謝るキャス…


「ふひっ♡ そうだそうだ、もっと声出せよ〜!

 そうだよ〜全部全部お前のせぇなんだよ♡」


男はロゼの胸をゆっくりと撫で回しながら、気狂いのような笑みを浮かべる。


「ねぇちゃん…あのガキが動いたから、お前はこうなった……血が出た……なぁ?」

「ごめん……なさい……」

キャスの声が震える。

「また謝ってやがる!おら!!もっとデケェ声で謝れよ!ヒザマズイテ!!アヤマレ!!!」

「ごめん……なさい……」

血塗れの両手で顔を覆い隠し——




「ごめん……なさい……ごめん…なさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい——



「キャスッ!!」



ロゼが叫ぶ!



宙を舞うキャスー

そしてフォークが、男の顔面に突き刺さるっ


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

フォークを、何度も、何度も、何度も。

キャスの手が、赤に染まる。


ロゼは床に転がり何度もキャスを呼びつつ

拘束しているガムテープを必死に剥がす…


「私が守れなかったから……私が可愛くなかったから……


ひとりに……


ひとりにしないでよ……


ひとりにしないで…


おにいちゃん…



ザクッ ザクッ ザクッ……


ザクッ ザクッ ザクッ……



血の水たまりが大きく広がるー

振り下ろし続ける腕…流れ落ち続ける泪…

聞き取れない言葉の数々…



—その小さな背中を、ふわりと温もりが包みこむ。



静かで、あたたかい……そして大きい……

その腕の中で、キャスの震えが少しずつ

ゆっくりとおさまっていく…。


「もう、大丈夫だ……大丈夫だ…かわい子ちゃん……

落ち着いて……大丈夫、大丈夫だから……」


——そして、キャスはそのまま、眠るように意識を失った——


ラークはそのままキャスを抱き抱え

ソファーにそっと寝かせる。


ロゼの頭を撫で

「こりゃ〜…掃除が大変そうだな…」


そして自分のコートを脱ぎ、そっとロゼにかけー

ガムテープを剥がしていく。


テープが剥がれると同時に

キャスの元へと駆け寄り、顔を覗き込む。


「大丈夫。寝てるだけ……」


ロゼは、キャスの顔に付いた血を拭き取りながら


「ごめんね…私のために…」とつぶやいた…


ラークは、タバコを取り出しながらロゼに語りかける


「寝顔……可愛いよなぁ〜」


…手に取ったタバコは、火をつけずに箱に戻した…


「うん、めちゃくちゃ可愛い………」





「よいしょっと」

キャスを背負い、立ち上がるラーク。

ロゼが笑いながら言う。


「こりゃ、パパにしか見えないわ……」

店のベルがまた鳴る。

「パパ、か……なりたかったな」


「ていうかマジで体中〜痛いんですけど!!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ