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マルボとキャス  作者: 苺堂本舗


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【第9話:笑顔】

キャスがロゼとマルボ2人の関係と仕事を知った

あの路地での出来事の帰り道ー


落書きされたコンクリートの壁。

剥き出しのパイプ。

チラつく照明。


そんな廃ビルの通路に

平和すぎるほど明るい声が響く―


「ねぇねぇねぇロゼェ〜〜〜

 帰ったら一緒にシャワー入ろ♫

 ねぇねぇ、でねぇ、でねぇ、洗いっこしてね〜〜〜

 それでぇ〜〜〜♡」


キャスがロゼの腕に絡みつき

幼い子供がお母さんに甘えるように話し続ける。


──ガチャ。


重たいドアを開けると、いつもの光景が広がる。


「たっだいまーーー!」

われ先に部屋へ入り、中央のソファに座って

玄関の方を見つめるキャス。


そして、満面の笑顔で叫ぶ。



「おかえりーーーロゼーーーー!!」



「た……ただいまぁ〜……?」


ロゼは照れくさそうに返事をしながら

そっとマルボをチラ見する。


「俺は知らねぇぞ」

相変わらずの仏頂面で、マルボがぽつりとこぼす。


「ロゼ〜ロゼは〜こーーーーっち!」

キャスは自分の隣のに座れとポンポンと叩いて

ロゼを誘導する。


「…私、さっきあの子に

 殺されかけたんだよなぁ〜…」


苦笑いしながらも、素直にその椅子へ腰を下ろす。


「うふふ♡ ローーーーゼ♡」

キャスは甘えるようにロゼの肩にもたれかかる。


ロゼは一度ため息をつき、俯いたままボソッと呟く。


「……あーーーあーーーなんか暑いなぁーーー……」

それは、棒読みで空気を誤魔化すように…。


「シャワー入ろっかなぁーーー」

その瞬間、キャスがビクッと反応してロゼの顔を見つめた。


「あっ……」

言った瞬間に、ロゼは自分の軽率さを後悔する。


「いこっ♡」

キャスが満面の笑みでロゼの手を引き、シャワールームへと突っ走る。


「マルボ〜〜〜、のぞいちゃダメだからね!!」


マルボは、面倒くさそうに手を振る。


「ロゼの背中、洗ってあげるねぇ〜〜♡」


シャワールームのドアが閉まった瞬間、ようやく一息つくマルボ。


冷蔵庫を開け、コーラを取り出してプルトップを開ける。


「プシュッ」


その音に、ほんの少しだけテンションが上がる。


飲み口に口を当て、一気に流し込んだ、その時――


「ロゼのおっぱいやわらかーーーい!!」


ぶはっ!!

コーラが逆流し、吹き出す。


雑巾を取りにキッチンへと向かったマルボ。


──その時。


「ほぉ〜〜〜キャスたんの体も

 なかなか大人になってきておりますなぁ〜〜〜

 でゅふでゅふ♡」


足を踏み外し、盛大によろける。


顔が真っ赤に染まるマルボ。


なんとか雑巾と水入りのバケツを持ち

床を拭こうと歩き出したその時――


「ねぇねぇ〜私の胸も、ロゼみたいに

 大きくなるかな〜〜〜?」


『ふっ…そのくらいのなら、かわせるぜ…』


「マルボにいっぱい、もんでもらったら

 いいじゃん!!」




……死んだ。




後ろに倒れるマルボ。

空中を飛ぶ水入りのバケツ。


「あいつらマジ……コロス……」




派手な音と共にバケツが転がり、水が床に撒かれる。


シャワールームから慌てて飛び出してきた二人が

マルボの姿を見て大爆笑する。


「ああ〜〜これは死にたいやつ……」

マルボはそのまま目を閉じた。


「くっくっくっくっ……」


「ぷぷぷぷぷぷぷぷっ……」


「……もぉ、そろそろ落ち着けよ、2人とも……」

不貞腐れながらつぶやくマルボ。


「ごめっ、ごめんっ……!でも……ねぇ、ロゼっ!」

涙を流して笑うキャス。


「いや……ぷっ……いや、まさか

 アタシたちの会話だけで……くくく……!」

ロゼも体をよじらせながら笑い転げる。


「……マジで……死にたい……」

マルボは机に突っ伏し、腕で顔を隠した。



「ねぇ〜ロゼ?」


「どしたのかな〜? キャスたん

 お姉さんに相談〜?」


「……あのね、マルボの――」


「だーーーめーーーだっ!!」

突っ伏したまま、マルボがキャスの言葉を遮る。


「まだ何も言ってないじゃん!!」


マルボは顔を少し上げて、低く言い放つ。

「どうせ……俺と同じ仕事がしたいって言うんだろ」


「そ、そうだけど……」


キャスは頬を膨らませてロゼに視線を向けるが

ロゼは知らん顔。


味方は、いない。


それでもキャスは負けない。


「……ほ、ほらっ!私の方がマルボより強いし〜〜〜

 そんで可愛いっ!」


「可愛いは関係ねぇだろ」

マルボがガタッと立ち上がる。


「私の方が躊躇なくコロせるしっ!!」


「こっわ……」ロゼがポツリと漏らす。


「絶対、私の方が向いてるって思うの、殺し屋♡」


「だから、だーーーーめーーーーだっ!!」


「なによ!!マルボがそう言っても

 私、勝手にやっちゃうからね!」


「キャスはキャスで、お姫様やってなよ〜〜?」

ロゼが優しく、後ろからキャスを抱きしめる。


「ロゼまでそ〜〜〜やってぇっっ!!!

 もういい!!!」


キャスはロゼの膝の上に頭を沈めて、うなる。

まるで、父親に叱られた駄々っ子のように――



そのまま、ロゼの膝の上で

キャスは寝息を立てていた。



「……寝顔、可愛い〜……

 マジで天使かよ、キャスたん……」



ロゼがぽつりとつぶやき、マルボへと視線を向ける。



「そりゃマルボも守りたくなるよねぇ〜〜」



マルボが低いトーンで答える。


「まるで母親だな」



「ちょ、は?さすがにそこまで年いってないし!」

ロゼがツッコむと、すぐに口を押さえ

マルボに伝えるように

唇に人差し指を当て、シーーーーーッと息を吐く。


「……いや、お前だけだし、声でかいの…」



「はぁ……キャスには絶対やらせねぇから。

 絶対に、仕事は渡さないでくれ」


「それはいいけどさ……でもこの子

 勝手に動くよ? 今日だってそうじゃん」



マルボが頭を抱える。



「……あんまりキャスに掻き回されると困んのよね……

 悪目立ちして“組織”にバレたら、マジで面倒だし」


「組織?」


マルボが身を乗り出すように反応する。



「ダーメ〜〜〜それ以上は言えません。

 言ったらアタシ、潰されかねないんで♡」


マルボは少し俯いて呟く。


「……俺だけなら、なんとか続けられるのか?」


「……あんた、なんでそこまで

 この仕事にこだわるわけ?」


「……それは……もう、いいだろ」


「いつか死ぬよ?」


「……死なない」


「人なんて簡単に死ぬし、殺される。殺せる。」



──ザザ。


ロゼのまぶたに、一瞬だけ影が差す。

血まみれのナイフ。

地面に倒れた、父親らしき男。

割れたグラス、滲む赤。

崩れた記憶が、脳裏をかすめる。



マルボの言葉が、ロゼを現実に戻すー


「……まだまだ見たいんだ……2人の笑顔……」


「へぇ〜……ふぅん……ふたり、ねぇ?」


ロゼは少し離れた場所から

軽く揶揄するように言葉を投げる。


マルボはその言葉に反応せず、ただ静かに頷いた。


「わかったわ、マルボ。だからちゃんと約束して。

 絶対に――生きるって」


マルボは、無言でうなずいた。


「はぁ〜〜〜……それはいいんだけどさぁ……」

ロゼが膝の上を見下ろす。


「……膝の上のコレ、どうしたらいい……?」


「知らね、俺は寝るわぁ……じゃな……」


マルボは奥のベッドにバサッと倒れ込む。


「……私も寝たいんですけどーーーーーっ!」

小声で叫ぶロゼ。


「んにゃ……」

キャスの寝言が聞こえた。


ロゼはふっと微笑む。

「……ほんと、可愛いよ……キャスゥ……」



少し、静かな間が落ちる。



そして。




「てか……タバコ吸いたーーーい!!」


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