【第1話:傲慢】
――夜。
ビルの明かりは遠くまばらで、街はすっかり夜…。
不揃いの大きさの石が敷き詰められた道の上を、二人の子どもが歩いていた。
少年は小柄で黒いパーカーのフードを目深に被り、
遠くの月をぼんやりと眺めながら、隣の少女の話に気のない相槌を返している。
その少女はというと。
黒を基調にしたショートドレス。
手には透明なビニール傘を持ち、カラカラと引き摺るように歩き、隣の少年に話し続けていた。
「ねぇ〜さっきのカフェの店員見た?
全然笑ってなかったんだけど〜。
あれ、客商売としてどうかと思うわけ!」
少年からの返事はない…。
少女は立ち止まり不満げに頬を膨らませる。
ーそのときだった…ー
向かいから走ってきた見知らぬ男が、少女の肩に激しくぶつかった。
「邪魔なんだよ、クソガキ!!」
男が少女の横を通り過ぎようとした時には、男は腹部を押さえ地面でもがきうずくまっていた。
少女はしゃがみ男の顔を覗き込む。
その瞳は、冷たく、さげすむ様に笑っていた。
「ねぇ……誰がクソガキだって?」
男は唾を垂らしながら苦しそうに身をよじらせる。
少女はゆっくりと立ち上がり、ビニール傘の先を男の頬に当て。
「ねぇ……言うことあるよね?」
傘の先が男の頬をなぞる。
「す、すみません……っ、すみません……!」
「うん、そうだよね〜…。でも――全然足りない…」
少女は微笑みながら言った。
少年はその様子を呆れ顔で見てため息をこぼす。
「ねぇ、私……可愛い?」
「可愛いよね?」
男が口ごもったその瞬間ー
「……答えなさいよ!」
その言葉を聞くと男は少女に背を向け
立ち上がり走り出そうとするが、すぐさま少女の傘の柄に足を捕られ、また床に転がる。
少女は男をまたぎ、喉元にピタリと傘の先が突き立てられた。
「……ほら、言って♡」
男は震え、言葉を発せず、ただただ恐怖に潰されていく。
「たのむ!金ならやるから!」
瞳孔は開き始め必死にせがむ
「おれが悪かったから!な?な?」
「可愛いかって聞いてんだけど…」
少女は男の胸に足を乗せ体重をかける…
「わかった頼むから許してくれ!」
「殺さないでくれ!な?コロサーーーー!」
「残念……時間切れ♡」
少女の傘を持つ手が10cmほど上がったその時
「キャス!! やめろ!!」
少年が初めて声を上げた。
だが、その声も虚しく。
少女の手は振り下ろされ
傘の先が、男の腹部にズブリと突き刺さった。
男の叫び声が、夜の街に響く。
少年はキャスの手を乱暴に掴み、走り出した。
二人の後ろには
腹部に傘が刺さったままの男が
静かに倒れていた。




