第三十八話 影に潜む
邪悪なオーラが迷宮からする。ここは入口だが誰もいない。冒険者が一人もいない。
だが、焚き火の後だけがあった。
灰はまだ温かい。
だが、足跡は一つも残っていなかった。
一階層。
暗くて何も見えない。夜から月が消えたみたい。
しばらく歩いたがなにもない。もうすぐ二階層への階段が見えてきそう。
――グサ
何かいるのか?
グランが声も出さずに崩れ落ちた。
――グサ
今度はイエリスが。
でも倒れているだけで、死んではなさそうだ。
魔物......なのか?
一瞬にして二人とも攻撃されていた。後ろになにかいる?
――来るっ
振り向いた瞬間、影が立ち上がった。
壁に貼り付いていた闇が、形を持ってこちらを向いている。
影に潜み、人を襲う魔物シャドウクリーパー。
『巻き戻し』
「イエリス、グラン。後ろだ!シャドウクリーパーだ。」
確かに、全滅は免れた。
だが、さっきと同じ場所に立っている。
次は、誰が狙われる?
氷の槍は、確かに命中した。
だが、突き抜けただけだった。
まるで、影を刺したみたいに。
影に潜んでいるのにどう攻撃している。実態があるわけでも無さそう。
――俺が攻撃された。攻撃されていると言うより、転ばされている感覚。
『巻き戻し』
ふと俺の影を見ると、シャドウクリーパーが俺の影に潜んでいた。すかさず、短剣で攻撃してみたが意外と効いた。でも他の影を使いすぐに逃げられてしまった。
影に潜んでいるんじゃない。
影そのものが、あいつの居場所だ。
でもそれがわかったところで、消耗戦に持ち込まれて負けてしまう。
攻略方法は......一体。
伝える瞬間もなく、シャドウクリーパーはすでにイエリスとグランの影に潜んでいた。




