第三十七話 魔王の挑戦状
殺すしかなかった......
手足を氷で動かないようにしても、だめだった。
人間とは思えないほど凶暴で、まるで魔物に乗っ取られてしまったようだった。
周りの人たちも、なにかおかしい。
辺りはいつの間にか暗くなり、人々の顔は青ざめ、動きはまるでナマケモノのように遅い。
......イエリスとグランは、大丈夫みたいだ。
えっ......
殺したはずの男が、ゾンビのように起き上がった。
暗く低い声で喋り始めた。
「私を倒したければ......未踏の迷宮を......攻略しろ」
倒す?未踏の迷宮?どういうことだ。
その瞬間、男は役割を終えたように倒れた。辺りの暗さはなくなり、人々ももとに戻った。
魔物や人間では到底できなそう。もしこれが魔王ならば。
選択肢は、最初から一つしかなかった気がする。
未踏の迷宮とは、世界三大迷宮なのか。それとも見つかってすら無いものなのか。
でも攻略できれば、時間のズレもなくなるかもしれない。
とりあえずは世界三大迷宮の一つを目指そう。
......行くしか、なかった。
前は謎解きの迷宮だった。
だから生きて帰れた。
次に目指す迷宮は、謎解きではなくとても強い敵が五階層全域にいるらしい。
正直、三人では心もとない気がする。
五秒の巻き戻しが通用しない場面も、きっと出てくる。
即死をすればきっとそうだろう。
仲間を探したいところだが、ここは王都も近い。追放勇者という噂も広まっている。
集まってくるのは、グランみたいなやつばかりだ。
力不足と考えていたら迷宮に行くと言っていた、フェリの顔が頭をよぎった。
フェリが来る保証はない。
来たところで、生き残れる保証もない。
せめて俺の装備を強くしよう。まともに攻撃を受けたら死んでしまうだろう。
でもお金が全然ない。他の依頼をやっている時間はない気がする。そんな気がした。
仕方ない。考えながら戦うしかない。迷宮を攻略したら金銀財宝が手に入る。
それで考えよう。
出発しよう。ここから近いはずだ。
とても嫌な方向に転びそうな感じがした。




