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第三十二話 失われた時間
西の森に着いた。向かう途中、何もなかった。今まで色々あったから、何も無いのは逆に怖い。
少し歩くと一輪のスイカズラが咲いていた。
今までの感じだと、これを破壊すれば終わりだ。
——でも、本当にそれだけなのか?
周りに罠などがないか確認したけどそれらしいものはなさそうだ。
俺は恐る恐るスイカズラを破壊した。
その瞬間、巻き戻しをしたときと似たような感覚がして気絶していた。
———
「早く......こっちに」
誰かが呼んでる。森が燃えてる。
私はわけが分からず、動けずにいた。
でも火はもう目の前まで来ていて、後ろは崖。
熱い。もうだめ。
気づいたときには、私は宙に浮いていた。
今のは……何だったんだ?
横を見ると、
イエリスが、静かに泣いていた。
俺はかける言葉が見つからなかった。
——きっともう、戻らない時間......
この森にいれば、彼女はまた何かを失う。
俺はそう思って、町へ戻ることにした。




