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第三話

俺は勇者を辞めた。正確には追放された、と言った方が合っている。

今日中にこの街の外に出なければならない。


決闘の後、王様が銅貨十枚をくれた。

この世界の通貨は以下の通りである。

銅貨 :十枚で 大銅貨 一枚

大銅貨:十枚で 銀貨 一枚

銀貨 :十枚で 金貨 一枚

銅貨十枚だと宿に三日泊まれるか怪しいくらいだろうか。


市場に行っても路地に行ってもどこへ行こうと冷たい視線と罵倒が降り注いでくる。俺は悔しくなり早々と街を出た。


次の街まで行くには一週間はかかるだろう。なので俺は確かめたいこともあったので街の近くに合った森に向かった。


森の中に入ると人はいないので少し気が楽になった。でも少し木々がざわめいていた。俺は巻き戻しの能力を詳しく知りたかった。


今わかることは三つだけだ。

・リトライと唱えることで五秒巻き戻る。

・何度でも巻き戻しを使えるということ

・身体的な疲労は残らないが精神的疲労が残ること

それから三分くらい考えたが、結局何もわからなかった。


あたりが薄暗くなってきた頃、森が騒がしくなってきた。辺りを見回すとゴブリンが三体もいた。三体とも槍を持っている。


隠れようとしたが気づいたときには遅かった。一体のゴブリンが俺をめがけて勢いよく飛びかかってきた。俺は咄嗟にかわしたが、槍が頬にかすってしまった。


どう戦えば三体ものゴブリンに勝てるんだ?

せめて一体なら......。と考えていたら他の二体のゴブリンも攻撃しようと左右から挟み撃ちにしてきた。

避けようとするが、間に合いそうになさそうだ。このままだと当たって死んでしまう。なので「リトライ」と唱え巻き戻しをした。巻き戻しをして俺は急いで避ける。


ゴブリンは避けられるはずのない奇襲が避けられて混乱している。


俺はその隙にゴブリンにすかさず攻撃を入れた。・・・とはいえ、攻撃と言っても当たっても痛くなさそうなヘナチョコキックだ。


でもこれが意外に効いた。二体のゴブリンは怯んでいる。一体はどこ行った? ……草むらの向こうか?嫌な予感はするが考えている暇はない。もう一度、もう一度と絶え間なくキックを入れた。そしてやっとの思い出二体を撃破した。


よっしゃー!と無意識に大声で叫んだ

たった二体の撃破しただけでと思うかもしれないが......

もう動けるほどの体力は残っていなかった。


やっと終わったと思っていたが後ろからさっき何処かに行ったゴブリンが仲間を連れて戻ってきた。まじか.....もう無理.....と思ったがやるしかなかったので、巻き戻しをして時間の猶予を作った。


何度巻き戻しても、体は動かなかった。こんなとこで死ぬのかと悔しさと絶望が残った。――ここまでか。


槍が振り上げられた、その瞬間。


冷たい空気が走り、ゴブリンたちは固まって動かなくなっていた。


意味がわからず、思わず口から言葉がこぼれる。


「氷……!?」



一体、誰が――?



背後から、落ち着き払った澄んだ女の声がした。


「大丈夫? まだ動ける?」


女は近づいて

「.......プリンシヴァンテ、ヒール」と言い、回復魔法をかけてくれた。段々と痛みが引いてきた。


俺は何が起こったのか全くわからないが、助けられたことは確かなので深く感謝した。




辺りも完全に暗くなってきたので、一旦焚き火をすることにした。

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