3ー11 「ピリピリ関係」
ネモと強制的に友達関係にされた。
アンナちゃん――子どもに変質者って街中で言われたら困る。
「クロスお兄さん、わたしとも友達になって!」
「分かった」
「よろしくね!」
アンナちゃんは、悪意のない明るい笑顔を浮かべる。
心が汚れている俺には、眩しい光だ。
「ネモ、これ解いてよ」
「あら、解いて『ください』でしょ?」
ニヤニヤと笑っている。
だから、友達が出来ないんじゃないかな。
「ダル」
「なんて?」
むかついてきた。
自力でやろう。
『コンバットナイフ』を抜き、草を斬ろうとするが、全然斬れない。
「あれ?」
「そんな刃物じゃ斬れないわよ。ほら、早く言いなさい」
絶対に嫌だね。
こんなことで敗北したくない。
『コンバットナイフ』を鞘に納めて、手で草を千切った。
「なんで!?」
「力が強いだけだよ。そんなのも分からないの?」
両脚に巻き付いた草を千切ってネモを煽る。
何か言いかけようとしたネモは、目と閉じて深呼吸をしている。
我慢してるのか。
「……落ち着くのよ。冷静に……」
今のうちに薬草採取して、冒険者協会に行こう。
これ以上相手してると、依頼を達成できない。
紙を見て、薬草を探す。
昨日と同じ薬草だけど、念のため紙を見る。
「わたしも手伝う!」
「え?あー、うん。一緒に探そうか」
アンナちゃんと一緒に探す。
やる気満々なアンナちゃんに対して、やる気ゼロ。
ぼーっと、してたらアンナちゃんが10本取ってきた。
見つけるの早いし、明るいし、敵わないな〜。
「ありがとね。アンナちゃん」
「これぐらい大したことないよ!」
あとは、冒険者協会に行くだけ。
「クーロースー!」
ネモが近づいてきた。
怒ってるな。
「どうし……いて」
頭を叩かれた。
痛くないけど、痛いって言ったほうがいいか。
無反応だったら、更にひどいことされると思う。
「アンナ、怪我してない?」
「してないよ。楽しかった!」
「よかった……クロス」
睨んでくるネモ。
理不尽を感じる。
「殴り足りないのかな?だとしたら、絶交するかも〜?」
「いい加減にして!アンナが怪我したら、責任取れるの?」
我慢の限界らしく、激昂している。
「取らないし、取るつもりもない」
これで好感度めっちゃ下がったな。
頼むから絶交してほしい。
正直、ダーウィンさんさえいれば、俺は十分だ。
悪いのは、出会ってしまう運命だ。
「あなたみたいなクズ、初めて会ったわ。二度と会いたくないわ」
他人からクズって言われるとはね。
心は痛むけど、これでいいんだよ。
「姉様!わたしが頼んだの!だから、クロスお兄さんは悪くないの!」
俺の前に出て、両手を広げるアンナちゃん。
随分と必死だね。
そこまでして、絶交させたくないのか。
「だってさ。俺をクズだと思うなら、それでいいよ。会いたくないなら、それもいい。分かってると思うけど、俺以上のクズは、星の数まで……じゃないけど、いるから。んじゃばい」
薬草を持って、冒険者協会に向かう。
◇
気に入らない男ね。
何かあっても絶対に助けてあげない。
それに、余計なお世話よ。
クロス以上のクズがいるぐらい、分かってるわ。
上から目線で言われるの腹立つのよ。
「姉様……ごめんなさい」
アンナが手を掴んできて、謝ってくる。
「気にしてないわ」
頭を撫でて元気づける。
でも、まだ表情は暗い。
「カフェに行きましょう」
「うん」
甘いものでも食べさせてあげましょう。
そしたら、元気になるはず。
アンナは、カフェでメニュー表を見て、悩んでいる。
「パンケーキ……でも、プリンも美味しそう……」
「私は……ショートケーキにするわ」
「じゃあ、わたしも!」
呼び鈴を鳴らして、店員に二つのショートケーキを頼む。
「姉様、クロスお兄さんのことだけど……」
「いいのよ。あんな男のことなんて忘れたほうがいいわ。どうしようもない男だから」
「……分かった」
アンナは俯き、店員がショートケーキを持ってくるのを待つ。
そこまでクロスに懐く理由が分からないわ。
あの男は不気味なくらいに不思議。
私の魔法を手で千切るほどの力がある。
『身体強化』の魔法を使ってはなかった。
あの行動から分かることは、魔法は使えないが、尋常じゃない力を持っている。
思いっきり千切ったのではなく、一枚の紙を破くような軽い力だった。
「姉様?」
アンナの声で考えごとから抜け出した。
クロスとは、もう会わないって決めたから、考えても時間の無駄ね。
「これから受ける依頼について、少し考えてたの。いただきましょう」
「うん、いただきます」
フォークを持ってケーキを口に運ぶ。
普通の味ね。
期待していたのと違ったわ。
だからといって、文句を言うつもりはない。
「今日の依頼は、どんなの?」
魔物討伐だけど、そんなこと言ったら、落ち込むから誤魔化すしかないわね。
「魔石採掘」
「本当に?」
「本当よ。冒険者には、そういう依頼もあるの」
「そうなんだ」
なんとか誤魔化せたわ。
「アンナは、お留守番。平原に行っちゃダメよ。魔物がいるんだから」
「分かった……」
不服そうな返事。
心配になってくるわ。
昨日、今日といい、勝手に1人でどこかに行っている。
何事もなかったから、よかったけど。
昨日は、リベータ3匹討伐で無事依頼を達成した。
アンナに、宿でお留守番を頼んだけど、帰ってきたら、いなくて血の気が引いたわ。
無事に帰ってきたから安心した。
今日も勝手に平原に行ったから、また行きそうで怖いわね。
執事に見張るように言っておいたほうがいいかしら。
「ごちそうさま」
「美味しかったね。姉様」
「え、ええ。そうね。宿に戻りましょう」
「うん」
会計を済ませて、宿に向かう。
宿の部屋、203号室に入る。
執事が椅子に座って、紅茶を飲んでいた。
こっちに気づくと、カップをテーブルに置いて、椅子から立ち上がり、頭を下げる。
「おかえりなさいませ。ネモ様、アンナ様。お見苦しいところを見せてしまい、すみません」
そんなことで怒るほど、私の器は小さくないのよ。
「楽にしていていいの。お母様とお父様はいないんだから」
「ありがとうございます」
執事は、屋敷でお母様とお父様に、こき使われている。
それほど、優秀な人ということだけど、倒れたことが何回もある。
私が2泊3日で、ラバウクに来たのは、執事の休暇もある。
本命は、『中級』から『上級』になること。
明日、『上級』になれる依頼を達成する。
昨日と今日は、ウォーミングアップ。
「執事、アンナと……そうね。トランプで相手していて。外で買い物でもいいわ。アンナが1人にならないようにして。絶対よ」
「かしこまりました」
「じゃあ、私は冒険者協会に行ってくるわ。アンナ、執事と一緒にいなさい」
アンナの頭を撫でる。
「分かった。気をつけてね」
◇
昨日と同じ洞窟に向かい、リベータ3匹を探す。
洞窟は全面岩で出来ている。
冒険者は、パーティーを組んだほうがいいと、元『上級』冒険者だったお父様に言われたけど、私は1人でやっていける。
もし、パーティーを組んだとしても、足を引っ張られたら困る。
「来たわね」
3匹のリベータが、警戒しながら物陰から現れる。
剣を抜いて走る。
1匹のリベータが喰い殺そうと走ってくる。
「ふっ!」
跳んで体を逆さまにするように捻り、首を刎ねる。
もう1匹のリベータが走ってくるが体勢を低くして、横に回転して避ける。
リベータが振り返る前に距離を詰めて、首元を突き刺す。
「オオオオオオウウン!」
咆哮をあげて、残りの1匹のリベータが背後から襲ってくる。
地面に手を当てる。
すると、背後に岩の壁が現れる。
「グウウウウン!」
岩の壁に衝突したことが分かる。
跳んで、岩の壁に乗り、剣を逆手に持って降り、リベータの頭に剣を突き刺す。
「グウウウウウ……」
剣を抜き取り、血を払うように一振りして、鞘に納める。
「これなら、明日は大丈夫ね」
リベータの頭から降りて、3匹のリベータの死体を確認して、洞窟から出る。




