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人生迷走者  作者: 相川悠介
第三章
39/40

3ー10 「のんびりと」

 平原に着いた。

 薬草採取の依頼があって安心した。

 受付嬢に魔物討伐を勧められたが断った。

 危険なのは嫌だからね。


 薬草は取らずに地面に仰向けになる。 

 時間制限があるなんて言ってなかったから、その気になったら採取することにした。


「寝ようかな」


 涼しい風が吹いて気持ちいい。

 眠くなってきた。

 周りには誰もいないから気にすることはない。

 目を閉じて、リラックスする。


「あー!お兄さんだ!」


 昨日、会った少女の声。

 目を開けようとしたけど、寝たフリをしてやり過ごす。

 少女が走ってくるのが分かる。


「すぅ……すぅ……」


「寝てる……?」


 他人の睡眠の邪魔をしちゃダメだからね?


「起きて〜」


 頬を突いてくる。

 寝させてくれよ。


「ねえってば〜」


 構ってちゃんかな?

 でも、俺は起きないからね。

 残念だけど、代わりに動物と遊んでくれば?


「本当は起きてるんでしょ〜?」


 バレてる?

 そんなバカな!

 本当に寝ているということを証明するには、どうしたらいいんだ?


 いびきはしたくない。

 気持ち悪いって印象は勘弁だ。


 悩んでいると、腹に何かが乗ってきた。

 小動物みたいな軽さ。

 少女じゃない。


「あ!ラビッツ!」


 ラビッツ、俺のことが好きなのか?

 申し訳ないけど、ダーウィンさん一筋なんだ。

 悪く思わないでくれ。


「こっちおいで。お兄さんの邪魔になっちゃうよ?」


 そうそう。

 離れたところで、ラビッツと遊んでくれ。

 こっちは寝たいんだ。


「アンナ!そこにいたのね!」


 女性の声が聞こえる。

 少女の名前はアンナというのか。


「姉様?」


 お姉さんか。

 アンナちゃんを探していたのか。

 よし、これで1人になれる。


「ラビッツ!?アンナ、離れて!そいつは魔物!」


 魔物絶対殺すっていう考え?

 敵意や殺意とか無いのに、ひどいな〜。


「知ってる。でも、かわいいよ?それに、攻撃してこないから大丈夫」


「その油断がダメなの」


 油断大敵ってやつだね。


「お兄さん、起きてよ〜」


 なんで俺なの?

 一緒に説得させる気か?


「まさか、被害者が……」


 とんだ勘違いだ。

 寝息を立てているのが分かってないのか?


「違うよ!寝てるだけ!ほら、起きて!」


 べしべし、と頬を叩かれる。

 起こし方、間違えてない?

 普通は肩を揺らすんじゃないの?


「起きて!」


 ヒリヒリしてきた。

 起きればいいんでしょ!


「わ〜かったよ……」


 目を開けて起き上がる。

 ラビッツは、俺から降りて擦り寄ってくる。

 その頭を撫でる。


「生きていたのね……よかった」


 ラビッツを持ち上げて、立ち上がり後ろを振り向く。

 金髪を三つ編みにした、青い瞳の女性がいた。

 軽装備で帯剣している。

 歳は16ぐらいか?


「あなた、ラビッツが魔物って分かってるの?」


 女性とアンナちゃんを見比べる。

 アンナちゃんも髪色と瞳の色は同じ。

 だけど、髪は結んでない。

 ポニーテールやツインテールが似合いそう。


「聞いてるの?」


「聞いた上で無視してた。ごめんね〜」


「ふざけてるの!?」


 剣の柄を掴んでいる。

 やべ、怒らせたか。


「姉様!やめて!」


「暴力反対。落ち着こう」


「……はあ」


 柄から手を離した。

 魔物だからって警戒しすぎでしょ。

 こんなにかわいいウサギなのに。

 ラビッツを地面に降ろすと、どこかへ行ってしまった。

 殺されそうになったら、そうなるよね。


「アンナ、勝手に外に出ちゃダメでしょ」


「だって、つまらないんだもん」


「我慢して」


「やだ!」


「アンナ……」


 苦労してるね〜。

 今のうちに薬草を取りに行くか。


「待ちなさい」


 歩みを止める。

 そして、再び歩き始める。


「待ちなさいって!」


 後ろに振り返る。


「何かな?君と違って忙しいんだ。言いたいことがあるなら、手短によろしく」


「寝てたわよね?」


「まさか。んじゃばい」


「待ってってば!」


 草が両脚に絡みついて動けない。

 うえー、なんか嫌だな。


「魔法?」


「これで話せるわね。疲れたわ……」


「お疲れ」


「誰のせいだと思ってるのよ……」


 ジト目で見てくる。


「楽しそうだね。姉様!」


 アンナちゃんが明るい笑みを浮かべる。


「どこが……いえ、なんでもないわ。自己紹介するわ。私はネモ。エイゼア家の長女」


「わたしはアンナ。姉様の妹だよ。よろしくね!えーっと……?」


「クロス。歳は18」


「クロスお兄さん!えっとね、わたしは8歳で姉様は16歳だよ!」


「情報ありがとね」


 アンナちゃんが手を握ってくる。

 頭を撫でると「えへへ〜」と喜んでいる。


「ちょっと!アンナに気安く触らないで!」


 ネモが俺の腕を強く掴む。


「悪かったよ。ごめんね。アンナちゃん」


「なんで謝るの?」


「なんでだろうね?」


 肩をすくめて、ネモを見る。


「な、何よ?」


「なんでも?それより、手を離してくれると助かる」


「これからはアンナに手を出さないで。分かった?」


 妹想いのお姉さんだね。

 これは失礼。


「了解」


「今回は許してあげる」


 ネモは腕から手を離して、顔を背ける

 好感度低いな〜。

 別にいいんだけどさ。


「クロスお兄さん」


 小声で声をかけてくるアンナちゃん。

 屈んで耳を傾ける。


「何かな?」


「姉様、友達がいないから、どうすればいいのか分かってないの」


「そうなんだ。へえ〜」


「聞こえてるわよ」


 睨んでくる。

 皺できちゃうから、やめたほうがいいよ。


「はは……聞いておくけど、貴族?」


「そうよ。何か問題でも?」


 厄介だな〜。

 関わりたくない系で苦手。

 自分の地位が上だから、平民を下に見る。

 貴族に対して、そういう偏見がある。


「確認したかっただけ。それで、なんで俺に構うの?」


「アンナに何かしてないか。昨日、アンナからここで男と会ったって聞いて」


「俺が怪しいと……なるほど」


 自分の妹が見ず知らずの人、それも男性だったら心配するよな。


「依頼で薬草採取。以上」


「依頼?あなた、冒険者なの?」


「これで分かってくれ」


 訝しげな視線を向けるネモに、冒険者カードを見せる。


「本当なのね。『初級』……まだ駆け出し?」


「そう。雑魚でヘタレだから依頼は全部、薬草採取だよ」


「そこまで卑下しなくても……」


 憐れみの視線を受ける。


「そうだよ!姉様も『初級』のときは、クロスお兄さんと同じようなことしてたから!」


「アンナ!」


 ネモは頬を赤らめている。

 そんなに恥ずかしいことじゃないでしょ。


「ネモの階級は?」


「『中級』よ。それと、馴れ馴れしく私の名前を言わないで」


「なんでさ?別にいいじゃん」


「私が歳下だから?」


「それもあるけど……うん、それだけだね」


 青筋を立てている。

 短気な人だな。


「イラつかせるのが上手なのね?友達いないんじゃないかしら?」


「何を〜。失礼だね。友達ぐらいいるよ。指で数えるぐらいにはね」


「嘘ね。絶対にいないわ」


 何を根拠に?

 勝手に決めつけないでほしい。


「はあ……そう思ってくれて構わないよ」


「じゃあ、友達になろう!」


 アンナちゃんが手を掴んでくる。

 友達はこれ以上作りたくないんだがな。


「この男と?嫌よ。ストレスで胃が痛くなるわ」


 そこまでか!

 そんなに嫌いなのか!


「同感。嫌味は聞きたくないからね」


「あら?喧嘩を売ってるのかしら?」


「そんなつもり無かったんだけど?」


 互いに笑いながら、言葉を交わす。

 その言葉には、悪意が孕んでいる。


「2人とも!そこまで!」


 アンナちゃんが、かわいらしい声で怒鳴る。

 これが男だったら、びびってた。


「アンナ……?」


「2人が友達になるまで、姉様とは口を利かない!クロスお兄さんは……変質者って呼ぶ!」


 それは困る。

 社会的に死ぬし、精神的ダメージが痛い。


 ネモと顔を見合わせて頷く。


「クロス、これからよろしくね!」


「こちらこそ!」


 互いにぎこちない笑みを浮かべて握手する。

 辛いな〜。


「姉様、よかったね!友達が作れて!」


「うん、とっても嬉しい!」


 絶対に思ってないよな。 

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