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人生迷走者  作者: 相川悠介
第三章
38/40

3ー9 「身元」

 2日目。

 今日やるべきことは、フィンさんとの会話だ。

 この街に広がった情報。

 そして、俺の身元。

 ちゃんと伝えておかないとね。


「行きますか」


 冒険者協会に行き、受付嬢に聞く。

 幸いなことに、ダル絡みしてくる冒険者はいなかった。


「フィンさんは、いますか?」


「はい。協会長もクロス様とお話しがしたいと言っていました。協会長室は……」


「二階ですよね。ありがとうございます」


 二階に上がり、協会長室の扉をノックする。

 「入れ」と返事が聞こえる。


「失礼します」


「適当に座ってくれ」


 ソファに座る。

 フィンさんは、紅茶を飲んで一息つく。


「話すことがたくさんあるな。……最初になぜ、あの3人はヤミネスを殺したのか」


 なんでそのことを?

 スクアルドさんが報告したのか?


「スクアルドから聞かされたんだ。ヤミネスが殺されたことを」


 俺の疑問を解消するように言う。

 報告してくれたのか。


「そうでしたか」


「……嫉妬」


「え……?」


「アランはヤミネスに目をつけていた。そして、あの3人。それで分かるか?」


 嫉妬でヤミネスさんを殺したのか。

 頭おかしいって。


「……怖いですね」


「そうだな。……聞きたいことはあるか?」


 聞きたいことじゃないけど、言いたいことがある。


「小耳に挟んだんですけど、門番が殺されて街に魔族が侵入したらしいですね」


「推測だがな……何か知っているのか?」


 深呼吸をする。


「これから、一方的に話すので質問したいところがあったら言ってください」


「ああ、分かった」


「門番は、カイラムさんとチェイさんを逃して、4人の冒険者たちに殺されました」


「待て。カイラムとチェイを逃す?どういうことだ?」


「あの2人は魔族だったんです。それが冒険者たちにバレて逃げていたんです」


「なっ!?ま、魔族だったのか……」


 そりゃあ驚くよな。


「その2人は街から出て、クナリ村に向かいました」


「クナリ村……聞いたことはあるな」


 聞いただけで詳しくない感じかな。


「2人は冒険者たちに追いつかれて殺されました。そして、その冒険者たちはクナリ村に行き、そこで……」


 言うべきか?

 魔族の拠点ということを。

 そして、魔族たちと一緒にその冒険者を殺したこと。


「嘘偽りなく話してくれ」


 躊躇っている俺に真剣な眼差しを向けてくる。

 大丈夫だよね?


「俺と魔族たちによって冒険者たちは殺されました」


「……」


 唖然としている。

 その状態でも聞くことはできるよね?


「だから、魔族はこの街には侵入していません。安心していいと思いますよ」


 フィンさんは、深くため息をする。


「そうだったのか。あとで間違いだったと言っておこう」


 これで街の人たちは、安心できるはず。


「クロス……」


「俺のことですよね?」


 フィンさんは頷く。


「お前の出身地、家族、今までの出来事などを聞かせてくれ」


「分かりました」


 ちゃんと説明できるかな?

 不安だけど、やるだけやってみるか。


「俺はクナリ村出身です。それで……」


 今日まで起きた出来事を話した。

 クナリ村の滅亡。

 とある旅人との戦い。

 現在、シェイハ村で生活などを話した。

 魔族のことや俺がダーウィンさんの信者ということも全て話した。


 転生したことだけは言ってない。

 信じてもらえないだろうと思うからさ。


「なるほど……」


 そう言ってるってことは、ちゃんと伝わったかな?


「全て話しました。何か質問はありますか?」


「お前の父親は、『研究会』の者だったか?」


 『研究会』?

 なんだそれ?


「分かりません。『研究会』ってのは?」


「これを見てくれ」


 一枚の紙を受け取る。

 それに書かれていたことは、父さんが俺にしていたようなことだった。


「被験体?」


「お前の体には、魔物の血が流れている。『研究会』は被験体に魔物の血を注入して研究をしている。何か関係していると思っていてな」


「父さんは、『研究会』と関係ないと思います。俺の体に流した魔物の血の一覧がありますが……見ますか?」


「見せてくれ」


 メモ帳をフィンさんに渡す。 

 フィンさんは、書かれている内容に驚いている。


「これは……体に異常は無いのか?」


「問題ありません」


「これを言っては失礼だが、お前の父親は狂ってるな」


 全然失礼じゃない。


「理系で賢い人の思考は、よく理解できないです」


「分からなくもないな。これを預かってもいいか?」


「それ、あげますよ。俺には必要ないですから」


「感謝する」


 ソファから立ち上がり、紙をフィンさんに渡す。


「ありがとうございました」


「こちらこそ。ありがとな」


 軽く頭を下げて、協会長室から出る。


「暇になった」


 また依頼でも受けようかな。

 薬草採取で平原に横になって寝ようかな。

 階段を降りて、受付嬢の元に向かう。


     ◇


 紅茶を飲んで少し休もうとしたが、空になっていた。

 疲れは消えない。

 やはり家で飲む紅茶がいいのか。


「この量の魔物の血、普通の人間ならば死んでいるぞ。あいつの体、どうなっているんだ?」


 ページをめくり、魔物の血の種類を見る。

 一滴でも体に流れたら死に至るのだが、クロスには9()9()種類の魔物の血が流れている。

 しかし、クロスはなんともないという様子だった。


 『研究会』の情報収集をカイラムに頼みたかった。


「惜しい奴を亡くしたな」


 魔族だったとしても俺は気にしなかった。

 だが、他の奴らが許すはずがないよな。


 理由は魔族だから。

 たったそれだけのことで、魔族は殺される。

 存在が罪みたいなようになっている。


「他の奴に頼むか」


 冒険者協会長になってから、情報収集は、ずっとカイラムに頼っていた。

 他の奴となると、誰がいるんだ?


 信頼できて、頼りになる奴。

 スクアルドは拷問官だから無理だ。

 ルークぐらいしかいないな。

 他の冒険者でもいいが、重要なのは情報収集ができるかどうかだ。

 ルークならできるだろう。


「ルークに頼んでみるか。断られたら、別の方法を考えるか」


 『研究会』を知っている者がいればいいのだがな。


「クナリ村は俺1人で行ってみるか。しかし、シェイハ村も気になる。……クロスに同行を頼むか」


 魔族がいるクナリ村。

 冒険者たちによる襲撃で、滅亡しかけた。

 これが原因で人間に対する警戒心が高まったよな。

 クロスは大丈夫だと思うが、俺はどうなる?

 行った瞬間、殺されるかもしれない。

 やはり、クロスと行くしかないか。


「俺は他人に頼ってばかりだな。このままだと、1人で何も出来なくなる」


 ポッドを持って、カップに紅茶を注ぐ。

 紅茶を飲み、メモ帳をめくる。


 クロスがあらゆる戦いで勝てたのは、魔物の血のおかげだろう。

 腕力に脚力、人間の五感も普通の人間とかけ離れている。

 決闘のときの股間への蹴りは、相当痛かっただろう。

 『身体強化』を使っていなかったらと思うと寒気がする。


 それと、血液操作というものは初耳だ。

 固有魔法ではないと思う。

 自分の血液を武器にしたり、傷の治りが早くなったりと不思議な能力だ。


 欠点があるとすれば、貧血になることだ。

 最悪の場合、失血死に至る。

 便利ではあるが、危険な能力だな。


「ダーウィンという神は、怪しいな。恩恵は幸運。しかし、クロスに都合のいいように力を与えている」


 滅亡していたシェイハ村を創り変えた。

 20歳になると不老不死になる。

 あまりにも都合が良すぎる。

 クロスを利用しているのではないのだろうか?


 もしかして、世界の滅亡を望んでいるのか?

 だとしたら、無理だろう。

 たった1人の人間が、世界を滅ぼすなど無理に決まっている。

 神が人間に憑依しない限り。


「考えすぎか……クロスは夢を探しているからな。ただ、それの応援をしているだけか」


 俺は疲れているのか。

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