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人生迷走者  作者: 相川悠介
第三章
37/39

3ー8 「初めての依頼」

 数分考えた結果、冒険者協会に行くことにした。

 歩いていると、嫌でも聞こえてくる。


「あれがクロス?」

「弱そうな奴だな」

「決闘でアラン様に勝ったらしいけど、あの方法だと流石に……」


 陰口を叩かれてる。

 無理に小声で会話しなくてもいいんだよ?

 帰りたくなっちゃうからさ、やめてほしいんだよね。


 冒険者協会に着き、扉を開けて入る。


「この依頼はどうかな?」

「武器、新しくしたんだぜ」


 冒険者たちが騒いでいる。

 あんなに静かだったのに、残念だな。

 にしても、俺の服装は場違いだな。

 例えると、卒業式なのに私服で来た感じ。

 まあいいや。

 受付に行くか。

 フィンさんがいるか聞いてみよう。


「すみませーん……」


「どけ」


 受付嬢に聞こうとしたが、男性冒険者に割り込まれた。

 そして、睨まれた。

 そんな理不尽な。

 こういう人とは、関わりたくないな。


「すみませんでした」


 謝って離れる。

 別の受付は空いてないかな。


「なあ、このあと飯でも食いに行こうぜ」


「え、えっと……」


 飯食いに誘うために割り込んだのかよ。

 受付嬢が困ってる。

 助けるか?

 しかし、助けたら助けたで面倒ごとに発展する。


「いいだろう?」


「その……」


 受付嬢からの視線を受ける。

 不本意だけど、仕方ないな。

 男性冒険者は、隙だらけ。

 こっちのことは眼中にない。

 右脚に力を入れて、男性冒険者の股間に蹴りを入れる。


「あああっ!だっ!あああああ!」


 男性冒険者は股間を押さえて、蹲る。

 股間を蹴る以外、方法がなかった。

 会話は絶対に無理だよ。

 だって、コミュ障だから。


「うるさいです」


 男性冒険者の頭を掴んで、床に強く叩きつけると動かなくなった。

 手加減はしたから、死んではないね。


「テメェ!よくも俺らのリーダーを!」

「ぶっ潰してやんよ!」


 パーティー仲間を怒らせてしまったか。

 謝りたいんだけど、そうはいかないらしい。

 1人の男性冒険者が殴りかかってくる。

 咄嗟にリーダーの頭を掴んで、拳を防ぐ。

 拳は顔面に当たった。


「やべえ!?」

「何してんだよ!?」


 リーダーの体を投げて、2人を押し倒す。

 鞘から『コンバットナイフ』を抜いて、投げる。

 『コンバットナイフ』は、起き上がった2人の冒険者の頬を通り抜け、柱に突き刺さっている。


「黙ってください」


 2人は青ざめて動かない。

 柱から『コンバットナイフ』を抜いて、鞘に納める。

 最悪な気分になっちゃったよ。

 受付嬢の元に向かい、話しかける。


「フィンさんはいますか?」


「きょ、協会長は休みです。あ、あなたは?」


「クロス」


 誰だって休みは必要だから仕方ないか。

 依頼でも受けてみようかな。

 バイト経験はある。

 スーパーで品出しだったけどね。


「クロス様でしたか!失礼しました!協会長からの手紙でクロス様のことは確認済みです!」


 名乗っただけで驚かれるってマジか。

 いい意味で人気なのか悪い意味で人気なのか、どっちだろう?

 そもそも、人気者なのかすら分からない。


「あっはい。それで、『初級』にぴったりの依頼はありますか?」


「そうですね……薬草10本採取、ラビッツ3匹討伐……です。どちらにしますか?」


 ラビッツ?

 ウサギのことかな?

 動物殺すの嫌だからな〜。

 薬草採取でいいや。


「薬草採取でお願いします」


「分かりました。その前に冒険者カードをお渡ししますね。どうぞ」


 冒険者カードを受け取る。

 クレジットカードのサイズ感だ。

 カードには、こう書かれている。


 ・名前 クロス

 ・階級 『初級』

 ・この者は冒険者である。


 こういうのって、魔力量や身体能力値も書かれてると思ったけど、違うのか。

 何かで測定したわけじゃないから、分からないか。

 フィンさんが作ってくれたのかな?


「ありがとうございます」


 冒険者カードをズボンのポケットに入れる。


「あと、これを」


 薬草らしき絵が描かれている紙を受け取る。

 依頼の紙か。

 これを取ってこいと。

 場所も書かれてる。

 ありがたいね。


「じゃあ、行ってきます」


     ◇


 街から少し離れた平原に行く。

 平原で紙に書いてある薬草の特徴を見て、薬草を採取する。

 青色の四つの花弁だから分かりやすい。


「こういうのをちまちまやってれば、俺は十分だ。戦うのは嫌だからね」


 この世界に存在している生物を殺すと罪悪感が襲う。

 ただでさえ、汚くて醜い心に自分で泥をかける。

 そんな感じがする。


 料理の食材として殺された生物に感謝を込めて「いただきます」なんて、綺麗事すぎて吐き気がする。

 何が「感謝を込めて」だ。

 そんなこと思ってないくせに。


 だけど、世界は弱肉強食という構造で出来ている。

 弱い存在は暗く、強い存在は明るく照らされる。


「はあ……」


 暗い考えはダメだ。

 機嫌が悪いとすぐこうなる。

 悪い癖だ。


「なんだ……?」


 後ろからガサガサ、と芝生を踏んで何かが近づいてくる。

 鼓動音は一つ。

 周囲を見渡すと、白く小さなウサギがいた。

 これがラビッツ?

 足元に来て、擦り寄ってくる。


「かわいいな〜」


 地面に座り、ラビッツの頭を撫でる。

 嫌がることはなく、嬉しそうに唸っている。


「いた!ラビッツ〜」


 少女がこっちに走ってくる。

 ラビッツは驚き、俺の後ろに隠れる。

 少女は、ラビッツの反応に頬を膨らませる。


「ラビッツ……」


「ほら、お嬢さんが呼んでるよ」


 ラビッツを持ち上げ、少女の前に下ろす。

 表情が明るくなったかと思いきや、ラビッツは俺のところに来て、暗くなってしまった。


「えっと……え?」


 声をかけようとした瞬間、2匹の小鳥が俺の両肩に乗る。

 少女は俺を見て、目を輝かせている。


「お兄さん、すごいね!」


「あー、うん。こっちに来たら?」


「その子たちが逃げちゃうから……」


「逃げないよ。ほらほら」


 手招きして隣に来るように促す。

 少女はゆっくりと近づく。

 動物たちは逃げること気配はない。

 少女が隣に座ると、ラビッツは少女に近づく。


「こっちこっち……捕獲!」


 ラビッツを持ち上げ、抱き締めている。

 すごく嬉しそうだ。


「えへへ〜」


「君は動物が好きなんだね」


「うん!大好き!お兄さんも動物は好き?」


「そう……だね。うん、好き……だよ?」


 曖昧に答えてしまう。

 動物が好きかなんて、聞かれたことがなかったから。


「本当に?」


「本当かも」


「う〜ん?」


 首を傾げている。

 これ以上、付き合うと依頼が達成できないな。

 薬草採取に戻るか。

 立ち上がると同時に2匹の小鳥は飛んでいく。


「冒険者?」


「うん、『初級』だよ」


「『初級』?何それ?」


「冒険者には、階級があるんだって。俺は駆け出しだから『初級』なんだ」


「つまり、一番弱い?」


 ドストレートだね!

 今の子どもは強いな。


「あー、そう、だね。俺が一番弱い。うん」


 薬草を10本採取完了。

 早く冒険者協会に行くか。


「どこに行くの?」


「どこだろうね?」


 親密な関係は作りたくない。

 歩くスピードを速くする。


「お兄さんの意地悪!でも、嫌いじゃない!」


 少女が大きな声で言ってくる。

 無視だ。

 止まるな。


「……」


「またね!」


 振り向いたらダメだ。

 代わりに手を挙げて、少女と別れる。


     ◇


 受付嬢に依頼の紙と薬草10本を渡す。


「依頼達成ですね。おめでとうございます。報酬は銅貨5枚です。お受け取りください」


「ありがとうございます」


 受付嬢から銅貨5枚を受け取る。

 久しぶりに働いたな。

 前世のバイトの品出しより楽な仕事だった。

 このまま続けながら、夢探しをしよう。


 冒険者協会を出ようとすると、誰かとぶつかる。


「おっと。すみません」


「こちらこそ、悪かった」


 男性冒険者も謝ってくる。

 わざとじゃないよね?

 謝ってくるんだもん。

 まさかね。


 冒険者協会から出て、『安楽』に向かう。

 『安楽』に着き、部屋の中に入り、お金が入っている袋に銅貨5枚を入れる。


「明日も頑張るか」

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