3ー4 「襲撃」
訓練場から出ると、冒険者たちが魔族たちを襲撃していた。
「殺戮パーティーの始まりだ!うひょー!」
「魔族は邪魔なんだよ!」
「この世から消えろ!」
「さいっこうだぜー!」
冒険者の人数は4人。
魔族たちは魔法や武器を使って、抵抗しているが、殺られている。
「がはっ!」
「ぐふっ!」
「づあっ!」
次々と倒れていく魔族たち。
相手のほうが一枚上手だ。
「な、に?これ……?」
クラックは青ざめている。
やべえ!早く逃げないと!
「ジェノさん……あれ?」
見当たらない。
どこに行ったんだ?
「アルト兄さん!」
クラックの視線を辿ると、アルトが血を流して倒れていた。
手を離したクラックは、アルトに向かって走る。
「ダメだ!そっちに行ったら……あぐっ」
追いかけようとしたが転ぶ。
力が入らない。
血を消費しすぎた。
「アルト兄さ――」
どこからか放たれた矢が、クラックの胸を貫く。
「クラック!」
吐血したクラックは倒れる。
血液操作なんてするんじゃなかった!
ゆっくりと立ち上がっていり、近くの壁に寄りかかる。
「なんで冒険者が……だっ!」
爆風に吹き飛ばされる。
このままだと巻き込まれて死ぬ。
何か食べるものがあれば。
周囲を見ると、リンゴらしき果物が落ちていた。
誰かの血で少し汚れている。
「仕方ない」
力を振り絞って、リンゴもどきを拾いに行く。
氷の槍や炎の弾を避け、跳び前転をして拾う。
物陰に避難して、躊躇うことなく食べる。
芯を投げ捨て、深呼吸をする。
「ジェノさんは……いた!」
剣を使い、男性冒険者と戦っている。
男性冒険者は、柔軟に戦っていて、テーブルの上に跳び乗り、跳んで空中で体を逆さまにするように回り、ジェノさんの背後に回り、体を捻って横に剣を振る。
ジェノさんは後ろに振り向くのと同時に剣を下から上に振り、冒険者は吹き飛ぶ。
すかさず、左手を翳すジェノさん。
赤く燃える炎を発射する。
しかし、冒険者も同じ魔法を使い、炎の弾が衝突して爆風が発生する。
ジェノさんは息が上がっている。
対する冒険者は余裕の表情だ。
「そんなもんか?ああ?」
「はあ……はあ……」
何かおかしい。
周りで魔族が魔法を使っているが、冒険者と違って弱い感じがする。
それに顔色が悪く、息が上がっている。
「魔族を弱体化させる魔法でも使ったのか……?」
デバフというやつだ。
「だとしたら、全滅する。どうしたらいい?」
魔族たちの断末魔があがる。
逃げている魔族にも容赦なく殺している。
戦うしかないのか?
戦いを見るに相手は手練れだ。
今の状態の俺が勝てるか?
「助け――」
「逃げんなや!」
近くで幼い子どもが血を流して倒れる。
反射で立ち上がってしまう。
子どもを殺した冒険者は、訝しげに俺を見る。
「どうして人間がここに……?お前、どこかで……アランに勝った奴だな!いいもの見せてもらったぜ!」
血が付いた斧を俺に向けて、口角を上げる。
闘技場の観客席にいたのか。
とにかく、戦闘は避けたい。
「戦う気はないです」
「俺にはある。ははっ!」
男性冒険者は斧を振り下ろす。
横に回転して回避。
「楽しませてくれよ!」
斧を振り下ろされる直前に体勢を低くして、足を蹴って男性冒険者を地面に倒す。
「うおっ!」
「ふっ」
跳んで距離を取る。
攻撃手段を考えないと。
『コンバットナイフ』だと、決め手に欠ける。
血液操作しかないか。
武器は、鉤爪にしよう。
右手を強く握り締め、血を出す。
持ち手を作り、手の甲を赤く染めて、手のひらと手の甲からの血で3枚の刃を作る。
冒険者が立ち上がり、その場で斧を振る。
「おらあ!」
強風で吹き飛ばされそうになるが、踏ん張る。
動きを封じられた。
「おしまいだ!」
冒険者が距離を詰めて斧を横に振る。
狙いは腹。
上半身と下半身が分かれることになる。
俺の人生終了?
『そ、そんなことないよ!ボクもタクミくんのことが大好きだよ!本当の本当に大好き!』
無意識に腹に力を入れる。
斧を脇腹で受け止める。
「な……うっ!?」
歯を食いしばって顔面を強く掴み、頭蓋骨を砕く。
男性冒険者は斧を手放し、後ずさる。
「うあああっ!」
少し食い込んだ斧を取って、放り投げる。
脇腹を見ると傷はすぐに治った。
痛みはあるけど。
「楽にしてやる」
男性冒険者に近づき、赤い鉤爪を頭部に向けて斜めに振る。
顔面に三つ斬り込みが入り、上から順に崩れ落ち、血を流して倒れる。
「なんとか倒せた」
本当なら、脚に力を入れて、一気に距離を詰めて赤い鉤爪で顔面を斬り、横を通り抜けるようにしたんだけど、勝てたからいいか。
赤い鉤爪が手のひらの傷口に吸い込まれる。
こんなことができるんだ。
周囲はまだ冒険者たちと魔族たちが戦っている。
「残りは3人」
先に弓を使う冒険者を殺るか。
でも、見つからない。
隠れて魔族たちを殺していってる。
矢の発射場所は、変わっている。
次に矢が発射されたら、そこに槍を投げるか。
血を赤い槍に変えて周囲を見渡す。
「がっ!」
魔族の男性が矢で胸を貫かれた。
場所は、建物の上。
右腕に力を入れて、助走をつけて赤い槍をぶん投げる。
「だらあ!」
「あ……?」
再び隠れようとしたらしいが、頭に赤い槍で貫かれて倒れる。
赤い槍は屋上にあった壁に突き刺さっている。
あと2人。
「野郎!」
その声と同時に氷塊が俺に向かってくる。
「よっ!と」
横に回転して紙一重に避ける。
男性冒険者が、手を翳して氷の槍を発射してくる。
死体を踏まないように避ける。
「あっぶえ!」
跳び前転したり、側転したりして、ひたすら回避。
終わりが見えない。
「どっかに何か……あった!」
近くにあった剣を拾い、走りながら氷の槍を弾く。
弾いて、避けてを繰り返して、少しずつ距離を詰める。
「やるじゃねえか!ああ?」
テンションが上がったらしく、追加で円盤を発射してくる。
それを避けて、氷の槍を弾く。
あと少しで届く!
「へへへっ!」
その声を聞いて、嫌な予感がして屈む。
円盤が俺の頭上を通り抜ける。
追尾型か。
「ふっ!」
バク転して氷の槍を避けると、円盤が迫ってきた。
即座に剣で弾くと同時に刀身が砕ける。
氷の槍が迫ってきて、避けようとしたが、滑って倒れる。
回避が間に合わない!
「させるか!」
岩の壁が目の前に出現した。
助かった!
「クロスさん!援護します!」
「魔法は任せてください!」
「あなたは走ってあの人間にトドメを!」
魔族たちが俺に言ってくる。
頼まれたからには、それに応えないとね。
立ち上がって、岩の壁が崩れるのと同時に走り出す。
「分かりました!」
氷の槍や円盤が迫ってくるが、炎の弾で消される。
「ざけやがって!」
男性冒険者は短剣を鞘から抜き、斬りかかる。
左腕に力を入れて防いで、砕けた剣を男性冒険者の左胸に突き刺す。
「がはっ!」
男性冒険者は吐血して、短剣を手放す。
剣を抜くと、男性冒険者は倒れる。
砕けた剣を放り投げ、左腕に食い込んだ短剣を落とす。
砕けていたけど、刀身が残っていてよかった。
「ジェノさんは……いた」
◇
弱体化の魔法か。
厄介なものを仕掛けてくれたな。
「ほいしょ!」
斬撃が重く感じる。
後ろに跳び、お互いに距離を取る。
「へへーい!」
走ってきて、体勢を低くして脚を斬ろうとする。
バク宙で回避して、着地し、脚に力を入れて跳び、一気に距離を詰めて剣を振る。
「ふっ!」
速さに対処できずにいた相手の首を刎ねると、弱体化の魔法が解けた。
こいつが仕掛けたのか。
「はあ……」
剣を鞘に納めて、周囲を見る。
他の人間たちは、どこにいる?
「ジェノ様!」
部下が来た。
「他の人間は?」
「クロスさんが倒しました」
貧血気味のあいつが?
「ジェノさん、お疲れ様です」
クロスが手を振って来た。
部下を見ると、頷いている。
「どうしました?」
「クロス、よく殺ってくれた。感謝する」
「あっはい。どうも。……なんでこんなことになっちゃったんでしょうね」
同族の死体が転がっていて、ボロボロになった村を見て、ため息をする。
「さあな」




