3ー2 「元クナリ村へ」
ジェノさんについて行くと、木製の壁が見えた。
壁っていうよりも門に近い形だ。
ていうか、門だな。
門番らしき人が1人いるもん。
手には槍を持っていて、軽装備だ。
門番の人はこっちに気づいたらしく、敬礼している。
ジェノさんがいるから?
「ジェノ様!お戻りになられましたか。そちらの人間は?」
警戒している。
危害は加えない人間だってことを証明するには、どうすればいいんだ?
一応、『コンバットナイフ』は持ってきた。
何かあるか分からないからね。
「こいつはクナリ村出身の人間だ。俺たち魔族には、友好的な奴で名前はクロス」
ジェノさんが言うと、門番の人は驚き、頭を下げた。
「これは失礼しました!クロスさん、失礼な態度をとってしまい、すみません!」
「えっとー?」
謝られるようなことは、されてない。
反応に困るな。
「クロス、お前のことは、『魔王』様や俺以外の幹部、部下などに言っておいた。特徴は言っていなかったな。すまない」
悪いことは言わない。
休んだほうがいい。
『魔王』にも俺の存在を知ってしまったか。
面倒なことにならないことを祈ろう。
「肝心なところを言い忘れたら、警戒されるのは無理はないですね」
「自分が情けない」
分かりやすく肩を下ろして、卑下している。
「はいはい。それで通してくれますか?」
「もちろんですとも!どうぞ、お入りください!」
門番に会釈して、ジェノさんと一緒に入っていく。
「失礼しまーす……」
中は、元のクナリ村とあまり変わっていなかった。
変わってるところは、訓練場があるぐらいかな。
「どう思う?」
少し期待しているかのように聞いてくる。
答えづらいな。
「俺はいいと思いますよ。俺は」
『は』を強調した。
個人の感想なんでね。
「それはよかった。人間たちが来ても冷静に対処できるようにしたんだ。みんな、よく頑張ってくれている」
ここにいる魔族たちを見て、そう言う。
その眼差しは優しいものだ。
そして、俺の存在に気づいた魔族たち。
その視線は不安によるものばかり。
気づけば空気が、不穏になっている。
一度、帰ったほうがいいかもしれない。
「みんな、落ち着いてくれ。この者がクロスだ。俺たちに安息の場所を与えてくれた人間だ」
魔族たちが不安になっているのを気づいたらしく、俺の印象をよくしようと言っている。
ここを与えたのは、村長じゃなかったっけ?
「本当なんですか……?」
魔族の1人が恐る恐る聞いてくる。
これは、挨拶したほうがいいな。
第一印象はしっかりしないとね。
「俺の名前はクロス。夢探しをしているただの人間。世間知らずのガキだと思ってくれて構いません。以上です」
適当な自己紹介。
事実はしっかりと言ってるから。
魔族たちの反応はどうなるかな?
「うーん……」
「本物なのかな?」
「やっぱり、怖いよ」
信じてもらえてないか。
証拠となるものがあればいいのか?
「みんな、信じてくれ。頼む」
ジェノさんが頭を下げると、魔族たちがざわめく。
「ジェノ様が言うのなら……」
「頭を下げてまでだからな」
「本物なんじゃないか?」
だんだんと空気が緩くなっていく。
幹部の力ってすげえ。
「クロスさんだったわね。疑って悪かったわ」
「感謝するよ。クロスさん」
「よろしくな!」
俺のところに集まってくる。
感謝の言葉を受けたり、握手をした。
ジェノさんは、ホッとしたように息を吐く。
「ジェノさん、本当に幹部なんですか?なんていうか、威厳がないっていうか……優しすぎます」
「別に幹部だからといって、厳しくする必要はないだろう?」
その通りかもしれない。
幹部というのは、厳しい人って認識だった。
それが、自然と常識になってしまったのか。
「そうかもですね」
他の幹部は、どんな性格なのか気になるところ。
『魔王』もどんな存在なのだろうか?
「今日は宴にしよう。このまま帰らせるのは、申し訳ないからな」
魔族たちのテンションが上がる。
ジェノさん、マジのマジで優しいな。
◇
準備を手伝おうとしたけど、「大丈夫」と言われて、ちょうどいい岩に座って魔族たちを見る。
「これ運ぶの手伝ってくれ」
「こっち準備終わったぞ」
「あー、重い重い」
頑張ってんな〜。
やることなくて暇になった。
少し寝ようかな。
目を閉じていると、誰かに手を掴まれていて、目を開ける。
目を輝かせた少年だ。
「ねえねえ!一緒に遊ぼう!」
遊びか。
暇つぶしに付き合うとしよう。
かくれんぼだったらごめんだね。
迷子になっちゃうから。
「いいよ。何して遊ぶの?」
「ついて来て!」
少年は俺を連れていく。
魔族たちに会釈をしながら、歩いていく。
そこは訓練場だった。
決闘のときの観客席がない闘技場みたいな構造だ。
そして、この少年よりも背が高い少年がいた。
的に向かって手を翳している。
「慈悲などいらぬ、灰にせよ……グノケート!」
炎の弾が的に当たる。
しかし、威力が弱かったのか、的には焦げた跡がない。
背が高い少年は、悪態をつき、もう一度手を翳す。
「慈悲などいらぬ、灰にせよ……グノケート!」
的には当たっているが、全然壊れる気配がない。
エイムはいいよね。
「アルト兄さん!」
「クラック?それと……たしか、クロス?」
クラックがアルトの元へ向かう。
アルトはクラックの頭を撫でて、俺を見て警戒する。
そうなる人?もいるよね。
「魔法が使えるんだね。すごい」
「魔族は人間と違って、誰でも使える。人間には、使える奴と使えない奴がいるらしいじゃないか」
挑発的に言ってくるが、それは気にしない。
気まずい空気にはしたくないから。
「そうなんだ?初めて知ったよ」
「義務教育は終えてるよな?」
これって常識だったの?
後々、バカにされるやつじゃん。
「もちろん。俺って、赤ん坊の頃から10年も寝ててさ。それで、なんやかんやあって、今18歳」
「待て待て、疑うところが多すぎる」
俺の今までって、急展開が多すぎて説明するのが面倒なんだよな。
気にしたら負けだよ。
「そうかな?気にしないほうがいいと思うよ?」
「そうだよ。クロスさんの言う通り」
「クラック?」
だよね。
まだ幼いのに賢いじゃん。
「クロスさんの人生はどうでもいいの!」
がはっ!
悪意のない純粋な一撃。
それも幼い子だから強烈すぎる。
「クラック……言っていいことと悪いことがあるんだ。さっきのが悪いことだよ?」
「そうなんだ!ごめんなさい!」
笑顔で謝ってくる。
反省はしてるんだよね?
「クラック、謝ることはない。……何しにここに来た?」
ひえー、辛辣。
俺が人間だからかな?
「クラックに連れてこられたんだ」
「うん、暇そうだったから、どうせならここで暇つぶししたらいいんじゃないかなって。アルト兄さんがいるとは思わなかったよ」
「暇つぶしなら他の場所にしてくれ。邪魔になる」
アルトの言う通りだな。
魔法が使えない俺がいても目障りだもんね。
「分かった。ごめんね」
「待って!」
立ち去ろうとすると、クラックがしがみついてくる。
目をうるうるして、俺を見ている。
今にも泣きそうになっている。
困ったな。
「ダメ!ここにいて!」
「でも……」
アルトを見ると、目を逸らされる。
どんだけ嫌いなんだよ。
「アルト兄さん!謝って!」
「クラック……」
「謝らないアルト兄さんは嫌い!」
「なっ!?わ、分かった。……クロス、悪かったな」
笑顔で謝り、握手を求めてくる。
バレてるからね?
顔引きつってるし、握手してるけど、めっちゃ力入れて、俺の手を砕こうとしてる。
幸いなことに頑丈だから大丈夫だけど。
「あはは……クラック、アルトを許してあげて」
「うん!アルト兄さん大好き!」
クラックはアルトに抱きつく。
手を離して、自分の手が正常に動くか、握ったり開いたりして確認しておく。
痛みは感じないし、骨は折れてないね。
「あの的って壊れないようになってるの?」
「喧嘩売ってんのか?」
アルトは青筋を立てている。
どうやら壊れるらしい。
特殊な魔法がかけられてると思ったんだけど。
「まさか」
「威力が弱いってだけなんだよ?ちなみにボクは壊せるよ。見てて」
的に手を翳すクラック。
「慈悲などいらぬ、灰にせよ……グノケート!」
炎の弾が的に命中して、壊れる。
かわいらしい声と裏腹に力は強いな。
「すげえ」
「でしょでしょ!ヘヘーん!」
腕を組みドヤ顔をしている。
アルトはクラックの頭を撫でている。
「クラックの言う通り、俺は弱い。なんか文句あるか?」
すぐに喧嘩腰になる癖を直したほうがいいと思う。
「なんでも。……修復するんだ」
的が修復していて、元通りになっている。
魔法が仕組まれているのかな?
「お前は魔法は使えるのか?」
「使えないよ。その代わり、変なことができる」
「それって何?」
血を見ても大丈夫か確認しておくか。
「血は見慣れてる?」
「変な質問だな」
「大丈夫だよ」
2人とも頷いている。
俺の能力って、そんな大したことじゃないけど。
「ちょっと待ってね」
右手を強く握り締めて、血を流し出す。
そして、血をナイフの形に変化させる。
「これが俺の能力。血液操作」
2人は絶句している。
そういう反応になるよね。
「すごい!貸して!」
「どうぞ」
クラックに赤いナイフを渡す。
目を輝かせて赤いナイフを見ている。
「それがお前の力か……他にもできるのか?」
「今のところはあれだけ。武器を見ないと再現できないから」
「そういうものなのか……」
アルトの俺に対しての評価は少しは上がったかな?
できれば、気軽に話せる関係にはなりたい。




