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人生迷走者  作者: 相川悠介
第三章
31/41

3ー2 「元クナリ村へ」

 ジェノさんについて行くと、木製の壁が見えた。

 壁っていうよりも門に近い形だ。

 ていうか、門だな。

 門番らしき人が1人いるもん。

 手には槍を持っていて、軽装備だ。


 門番の人はこっちに気づいたらしく、敬礼している。

 ジェノさんがいるから?


「ジェノ様!お戻りになられましたか。そちらの人間は?」


 警戒している。

 危害は加えない人間だってことを証明するには、どうすればいいんだ?


 一応、『コンバットナイフ』は持ってきた。

 何かあるか分からないからね。


「こいつはクナリ村出身の人間だ。俺たち魔族には、友好的な奴で名前はクロス」


 ジェノさんが言うと、門番の人は驚き、頭を下げた。


「これは失礼しました!クロスさん、失礼な態度をとってしまい、すみません!」


「えっとー?」


 謝られるようなことは、されてない。

 反応に困るな。


「クロス、お前のことは、『魔王』様や俺以外の幹部、部下などに言っておいた。特徴は言っていなかったな。すまない」


 悪いことは言わない。

 休んだほうがいい。


 『魔王』にも俺の存在を知ってしまったか。

 面倒なことにならないことを祈ろう。


「肝心なところを言い忘れたら、警戒されるのは無理はないですね」


「自分が情けない」


 分かりやすく肩を下ろして、卑下している。


「はいはい。それで通してくれますか?」


「もちろんですとも!どうぞ、お入りください!」


 門番に会釈して、ジェノさんと一緒に入っていく。


「失礼しまーす……」


 中は、元のクナリ村とあまり変わっていなかった。

 変わってるところは、訓練場があるぐらいかな。


「どう思う?」


 少し期待しているかのように聞いてくる。

 答えづらいな。


「俺はいいと思いますよ。俺は」


 『は』を強調した。

 個人の感想なんでね。


「それはよかった。人間たちが来ても冷静に対処できるようにしたんだ。みんな、よく頑張ってくれている」


 ここにいる魔族たちを見て、そう言う。

 その眼差しは優しいものだ。


 そして、俺の存在に気づいた魔族たち。

 その視線は不安によるものばかり。

 気づけば空気が、不穏になっている。

 一度、帰ったほうがいいかもしれない。


「みんな、落ち着いてくれ。この者がクロスだ。俺たちに安息の場所を与えてくれた人間だ」


 魔族たちが不安になっているのを気づいたらしく、俺の印象をよくしようと言っている。

 ここを与えたのは、村長じゃなかったっけ?


「本当なんですか……?」


 魔族の1人が恐る恐る聞いてくる。

 これは、挨拶したほうがいいな。

 第一印象はしっかりしないとね。


「俺の名前はクロス。夢探しをしているただの人間。世間知らずのガキだと思ってくれて構いません。以上です」


 適当な自己紹介。

 事実はしっかりと言ってるから。

 魔族たちの反応はどうなるかな?


「うーん……」

「本物なのかな?」

「やっぱり、怖いよ」


 信じてもらえてないか。

 証拠となるものがあればいいのか?


「みんな、信じてくれ。頼む」


 ジェノさんが頭を下げると、魔族たちがざわめく。


「ジェノ様が言うのなら……」

「頭を下げてまでだからな」

「本物なんじゃないか?」


 だんだんと空気が緩くなっていく。

 幹部の力ってすげえ。


「クロスさんだったわね。疑って悪かったわ」

「感謝するよ。クロスさん」

「よろしくな!」


 俺のところに集まってくる。

 感謝の言葉を受けたり、握手をした。

 ジェノさんは、ホッとしたように息を吐く。


「ジェノさん、本当に幹部なんですか?なんていうか、威厳がないっていうか……優しすぎます」


「別に幹部だからといって、厳しくする必要はないだろう?」


 その通りかもしれない。

 幹部というのは、厳しい人って認識だった。

 それが、自然と常識になってしまったのか。


「そうかもですね」


 他の幹部は、どんな性格なのか気になるところ。

 『魔王』もどんな存在なのだろうか?


「今日は宴にしよう。このまま帰らせるのは、申し訳ないからな」


 魔族たちのテンションが上がる。

 ジェノさん、マジのマジで優しいな。


     ◇


 準備を手伝おうとしたけど、「大丈夫」と言われて、ちょうどいい岩に座って魔族たちを見る。


「これ運ぶの手伝ってくれ」

「こっち準備終わったぞ」

「あー、重い重い」


 頑張ってんな〜。

 やることなくて暇になった。

 少し寝ようかな。

 目を閉じていると、誰かに手を掴まれていて、目を開ける。

 目を輝かせた少年だ。


「ねえねえ!一緒に遊ぼう!」


 遊びか。

 暇つぶしに付き合うとしよう。

 かくれんぼだったらごめんだね。

 迷子になっちゃうから。


「いいよ。何して遊ぶの?」


「ついて来て!」


 少年は俺を連れていく。

 魔族たちに会釈をしながら、歩いていく。


 そこは訓練場だった。

 決闘のときの観客席がない闘技場みたいな構造だ。

 そして、この少年よりも背が高い少年がいた。

 的に向かって手を翳している。


「慈悲などいらぬ、灰にせよ……グノケート!」


 炎の弾が的に当たる。

 しかし、威力が弱かったのか、的には焦げた跡がない。

 背が高い少年は、悪態をつき、もう一度手を翳す。


「慈悲などいらぬ、灰にせよ……グノケート!」


 的には当たっているが、全然壊れる気配がない。

 エイムはいいよね。


「アルト兄さん!」


「クラック?それと……たしか、クロス?」


 クラックがアルトの元へ向かう。

 アルトはクラックの頭を撫でて、俺を見て警戒する。

 そうなる人?もいるよね。


「魔法が使えるんだね。すごい」


「魔族は人間と違って、誰でも使える。人間には、使える奴と使えない奴がいるらしいじゃないか」


 挑発的に言ってくるが、それは気にしない。

 気まずい空気にはしたくないから。


「そうなんだ?初めて知ったよ」


「義務教育は終えてるよな?」


 これって常識だったの?

 後々、バカにされるやつじゃん。


「もちろん。俺って、赤ん坊の頃から10年も寝ててさ。それで、なんやかんやあって、今18歳」


「待て待て、疑うところが多すぎる」


 俺の今までって、急展開が多すぎて説明するのが面倒なんだよな。

 気にしたら負けだよ。


「そうかな?気にしないほうがいいと思うよ?」


「そうだよ。クロスさんの言う通り」


「クラック?」


 だよね。

 まだ幼いのに賢いじゃん。


「クロスさんの人生はどうでもいいの!」


 がはっ!

 悪意のない純粋な一撃。

 それも幼い子だから強烈すぎる。


「クラック……言っていいことと悪いことがあるんだ。さっきのが悪いことだよ?」


「そうなんだ!ごめんなさい!」


 笑顔で謝ってくる。

 反省はしてるんだよね?


「クラック、謝ることはない。……何しにここに来た?」


 ひえー、辛辣。

 俺が人間だからかな?


「クラックに連れてこられたんだ」


「うん、暇そうだったから、どうせならここで暇つぶししたらいいんじゃないかなって。アルト兄さんがいるとは思わなかったよ」


「暇つぶしなら他の場所にしてくれ。邪魔になる」


 アルトの言う通りだな。

 魔法が使えない俺がいても目障りだもんね。


「分かった。ごめんね」


「待って!」


 立ち去ろうとすると、クラックがしがみついてくる。

 目をうるうるして、俺を見ている。

 今にも泣きそうになっている。

 困ったな。


「ダメ!ここにいて!」


「でも……」


 アルトを見ると、目を逸らされる。

 どんだけ嫌いなんだよ。


「アルト兄さん!謝って!」


「クラック……」


「謝らないアルト兄さんは嫌い!」


「なっ!?わ、分かった。……クロス、悪かったな」


 笑顔で謝り、握手を求めてくる。

 バレてるからね?

 顔引きつってるし、握手してるけど、めっちゃ力入れて、俺の手を砕こうとしてる。

 幸いなことに頑丈だから大丈夫だけど。


「あはは……クラック、アルトを許してあげて」


「うん!アルト兄さん大好き!」


 クラックはアルトに抱きつく。

 手を離して、自分の手が正常に動くか、握ったり開いたりして確認しておく。

 痛みは感じないし、骨は折れてないね。


「あの的って壊れないようになってるの?」


「喧嘩売ってんのか?」


 アルトは青筋を立てている。

 どうやら壊れるらしい。

 特殊な魔法がかけられてると思ったんだけど。


「まさか」


「威力が弱いってだけなんだよ?ちなみにボクは壊せるよ。見てて」


 的に手を翳すクラック。


「慈悲などいらぬ、灰にせよ……グノケート!」


 炎の弾が的に命中して、壊れる。

 かわいらしい声と裏腹に力は強いな。


「すげえ」


「でしょでしょ!ヘヘーん!」


 腕を組みドヤ顔をしている。

 アルトはクラックの頭を撫でている。


「クラックの言う通り、俺は弱い。なんか文句あるか?」


 すぐに喧嘩腰になる癖を直したほうがいいと思う。


「なんでも。……修復するんだ」


 的が修復していて、元通りになっている。

 魔法が仕組まれているのかな?


「お前は魔法は使えるのか?」


「使えないよ。その代わり、変なことができる」


「それって何?」


 血を見ても大丈夫か確認しておくか。


「血は見慣れてる?」


「変な質問だな」


「大丈夫だよ」


 2人とも頷いている。

 俺の能力って、そんな大したことじゃないけど。


「ちょっと待ってね」


 右手を強く握り締めて、血を流し出す。

 そして、血をナイフの形に変化させる。


「これが俺の能力。血液操作」


 2人は絶句している。

 そういう反応になるよね。


「すごい!貸して!」


「どうぞ」


 クラックに赤いナイフを渡す。

 目を輝かせて赤いナイフを見ている。


「それがお前の力か……他にもできるのか?」


「今のところはあれだけ。武器を見ないと再現できないから」


「そういうものなのか……」


 アルトの俺に対しての評価は少しは上がったかな?

 できれば、気軽に話せる関係にはなりたい。

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