表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生迷走者  作者: 相川悠介
第一章
3/13

1ー3 「転生完了」

 目を開けると見知らぬ天井。

 転生したんだし、当たり前だよな。

 ベッドで横になっているのは分かるが、ベッドも枕も少し固い。

 贅沢は言わないが、もう少し柔らかいほうがよかった。


(動くか?)


 10年も寝ていたんだ。

 そんな簡単に動けるはずはない。

 試しに手を握ろうと力を入れると、手を握れた。


(ということは起き上がれるはず)


 上半身に力を入れると起き上がることができた。

 体に異常はないのかな。

 そのことを確認して、周囲を見渡す。

 広い部屋で木造建築。前世とは違って機械的な物は置いていない。


「俺の姿ってどうなってんだろう?」


 ベッドから降りて窓に近づく。


「うわ、これが俺?」


 髪は青空のような色に染まっていて、瞳は赤くなっていて充血しているわけじゃない。

 何より前世よりもかっこいい顔立ちだ。

 他人から見ればかわいいと思われるかもしれないけど。

 体も太ってはいなく、痩せ気味だ。大丈夫なのかな。

 声は若干高めだ。


「髪は染めてるってわけじゃないし、目はカラコンではないな。すげえ」


 体は思うように動ける。

 これは部屋から出ていいのか判断に迷う。

 そう悩んでいると、部屋の扉が開く。

 一人の女性が入ってきて、俺を見て固まっている。

 俺はメデューサではなく人間だ。


「ク、クロス……あなた……」


 女性は目に涙を浮かべ、震えた声で名前を呼んで近づいてくる。

 言語は大丈夫だな。

 それにしてもかっこいい名前じゃないか。

 そんなことを思っていると抱きついてきた。


「やっと起きたのね。本当に……よかった」


「……誰でしょうか?」


 感動的なところ申し訳ないが、誰なのか分からない。

 髪の色は同じで瞳の色も同じ。

 しかし、この世界の母さんにあたる人ではない可能性がある。


「喋れるのね!あなたの母さんよ!」


 本当の母さんだった。

 それなら敬語は必要ないか。


「そうなんだ。母さん、よろしく」


「ええ!よろしくね!今から、父さんを呼んでくるから、ベッドに座ってて!」


「分かった」


 母さんは走って部屋から出ていった。

 ベッドに座って、ダーウィンさんと会話したことを思い出す。

 血液操作の力と俺が求めたもの。


「血液操作、楽しみだな。でも、血を出すときって傷つかないといけないか」


 血液操作の欠点があった。他にもあるだろう。

 それに、銃は見当たらないし、戦闘知識もない。

 どういうことだろう。


「クロス……起きたんだな」


 母さんと一人の男性が入ってきた。

 その男性も髪の色と瞳の色が同じ。

 疲れているのか消え入りそうな声だ。


「母さん、この人が俺の父さん?」


「そうよ。薬剤師で病気を治してくれるの」


「すごいね。……疲れてる?」


「まあ……そうだな。研究とかで忙しくてあまり寝てないんだ」


 父さんは、俺を見て眉を顰めている。

 態度が悪かったかな。


「もう少しだけ薬の調合をしてくる。またな」


 父さんは、目頭を強く押して、部屋からよろよろと出ていく。


「そうだ。料理作ってくるわね」


 母さんも部屋から出ていく。

 よし、一人だけになれた。


「試してみるか……ステータスオープン」


 誰にも聞こえないように呟く。

 しかし、何も起こらない。

 ゲームみたいに自分の状態などを見たかったが残念。


「ダメか」


     ◇


 足を揺らして待っていると、母さんが入ってきた。


「できたわよ。こっちにおいで」


「うん」


 ベッドから降りて部屋を出る。

 リビングに入ると肉が焼けたいい匂いがしてくる。

 ダイニングテーブルには、料理が並べられていた。

 パン、ステーキ、サラダ、水。

 前世とあまり変わらないかな。


「さあさあ、食べてみて。あ、でも」


 椅子に座ってナイフとフォークを持つ。


「いただきます」


 ステーキにフォークを刺して固定し、ナイフで切って口に運ぶ。

 

「美味しい」


 なんの肉かは分からないけど美味しい。

 母さんは、なぜか絶句している。


「……食べ方まで分かるのね。よ、よかったわ。どんどん食べてね」


 母さんも椅子に座って料理を食べ始める。

 父さんはまだ薬の調合でいない。

 体調崩さないといいけど。


「クロス、食べ終わったら村長に挨拶に行きましょう」


「分かった」


 俺の出身地は村か。

 村長はどんな人だろう。

 そういえば両親の名前聞いてなかったな。


「母さんと父さんの名前は?」


「そうだったわ。教えないとね。私はスノム。父さんはケイル。家名はマイマイ」


 家名がマイマイって、まあ異世界だからこれが普通か。

 普通という定義が分からないけど。


「そうなんだ。教えてくれてありがとう」


 料理を食べ終え、水を飲んで息を吐く。

 普通に美味しかった。

 母さんも食べ終えて、食器を洗っている。


 窓から外を見ると、青空の下で子どもたちが楽しそうに走り回っている。

 友達を作ったほうがいいかな。

 陰キャな人がいたら助かる。


「クロス、行きましょう」


「あ、うん」


     ◇


 家から出て、歩いていると一人の女性が近づいてきた。


「スノム!その子ってクロスなの?」


「そうよ。目が覚めたの」


「初めまして、クロスです」


 自己紹介すると女性は驚愕する。

 そんなに驚くことなのか。


「ええ!よろしくね!」


「あはは……」


 女性の明るい挨拶に苦笑いしていると村の人たちが集まってくる。


「あれ?クロスなのか!」


「おお!やっと目覚めたのか!」


 どうやら俺のことを知っている。

 なぜだろう。


「ほら、これでも食べて大きくなれ」


「私からもどうぞ」


 果物や野菜などを渡されるが、一人では持てない。

 困っていると母さんが全部持ってくれた。

 すげえ力持ち。


「ねえねえ!あそぼ!」


 俺と同い年ぐらいの男子が手を引っ張ってくる。

 母さんに視線を送る。


「遊んできていいわよ。挨拶は明日にしましょう」


「分かった」


 頷くと男子と一緒に広い平原を走っていく。

 その先には、他の男子と女子がいた。

 そこに着くと一人の男子が前に出る。

 この集団のリーダーかな。


「えーっと、クロスだよ。よろしく」


 挨拶すると睨むように目を細めている。

 一緒にいた男子は、あの集団のほうにいた。


「お前、あの距離走ってなんで汗一つかいてないんだ?」


 その質問で気づいた。

 約50メートルの距離を走っても疲れを感じていない。


「さあ?どうしてだろうね?」


「10年も寝ていたんだろ?普通なら途中で疲れて歩くもんだろ」


 いきなり怖い男子に会うなんて最悪だ。

 いや、偏見はよくないな。

 もしかしたら、優しいかもしれない。


「まあまあ、疑うのはそこまでにしよう」


 女子が男子の肩に手を置く。

 すると男子は「チッ」と舌打ちをして一歩下がる。


「ごめんね。この人、疑い深い人なの。許してあげて」


 女子は申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 異性に免疫ないからどうしよう。

 前世では、女子が集団で前を歩いているところを後ろから通り過ぎたことがない。

 とにかく反応しよう。


「あ、うん。……それで何をしてたの?」


 名前は聞かないようにした。

 この集団の中で友達になれそうな人はいないし、なってくれたとしても何かあったとき、助けてくれなさそう。

 最近の子どもって怖いな。


「かくれんぼで誰を見つける側にするか話してた。あ、かくれんぼ知らないよね」


 ここで知ってると言うと怪しまれる。

 知らないふりをしておこう。


「かくれんぼ?何それ?」


「結構楽しいよ。君も遊ぶ?」


「うん」


 一度だけ遊んでみるか。

 意外と楽しくなりそうな気がする。


「じゃあ、君が見つける側ね」


「え?」


「10秒間、目を閉じて待っててね。10秒経ったら目を開けて動いていいから。みんな、隠れろー!」


 女子の言葉で子どもたちは隠れ始める。

 慌てて目を閉じて、声に出さずに10秒数える。

 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。

 目を開けて歩き始める。


「どうせ木の上とか岩陰にいるんだろうな」


 緑一色な森林の中、小鳥たちが囀っている。

 木の上には誰もいない。

 岩陰にもいない。


「隠れるの上手だな」


 子どもたちの隠密力に感心しながら、地面を見ると足跡があった。


「その先にいるのかな」


 足跡を辿って歩くと、木の前で足跡がなくなっている。

 木を見上げるがいない。


「どうなって……まさか」


 聞いたことがある。

 かくれんぼで隠れている人が、気づいたらみんな帰っていて一人ぼっちになっていた。

 それは見つける側でもあり、数えている間にみんな帰っているということ。


「いじめ?」


 本当にそうだったらショックだな。

 探すのは諦めて帰るか。

 どうせみんなも家にいるだろうし、大丈夫だよね。

 森林の中から出て、家へ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ