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人生迷走者  作者: 相川悠介
第ニ章
24/39

2ー11 「ダル絡み」

 どんなに探してもカイラムさんとチェイさんが見つからない。聴覚を鋭くしようとしたが、周囲の人の鼓動音や風の音などが大音量で聞こえてきて、頭痛がするだろうと思ってやめることにした。


「見つからないものなんだなー。ダルくなってきた」


「もう少しだけ頑張ってみませんか?」


「……分かった」


 頑張るのはいいけど、疲れてるじゃん。

 俺はなんともないけど。


「あ……」


 つまづいて転びそうなところをキャッチ。

 ちょっと休んだほうがいいね。息が少し上がってる。


「ありがとうございます……」


「休もうか。座れるところは……あった」


 ベンチに座って休憩。

 無理しちゃダメだからね。


「体力がもっとあれば……」


「どんなに体力があっても疲れるときは疲れるんだ。人ってそういう生き物だから」


「そうでしたね。焦っていたので……すみません」


 焦る?

 多分、船頭の警告かな?

 知らない人から狙われていることは怖いもんね。

 それも、男性で変態だったら尚更。


「謝るのが悪いって言いたいわけじゃないけど、謝りすぎはよくないかなって思うよ」


「え……?」


「謝れば謝るほど、謝意が薄れていくから……あー、やっぱりいいや。忘れて」


 上から目線はダメだし、変なこと吹き込むのはやめたほうがいいな。俺の考えでもあるわけだし、自分の考えを他人に押しつけるのはよくないって、前世の友達が言ってたな。その通りすぎる。


「ありがとうございます」


「な、何が……?さっきのは忘れていいんだよ?俺なりの考えを押しつけるようなことだったからさ」


 首を横に振って微笑んでいる。


「アドバイス、ありがとうございます」


「ヤミネスさんのことを思って言ったことだから……じゃなくね、でも……えっと……あれ……?」


 悪化していってないか?

 言葉が出てこない。

 混乱してきた。


「ワタシのことを思って言ってくれたのですよね?」


「そうだよ!それが言いたかったんだ。だから……」


 不器用な自分を情けなく思う。

 困らせてどうする。

 このままじゃ、嫌われるじゃないか。


「落ち着いてください。大丈夫ですよ。ワタシは、クロスさんを嫌いになることはありません」


「本当に……?」


「はい」


 天使かよ。

 めっちゃ嬉しいこと言ってくれるじゃん。

 気づいてないかもだけど、大胆なこと言ってるからね?


「それは、ありがとう。うん……そう、か……」


 膝に肘を乗せて、頬杖をついてヤミネスさんから視線を逸らす。

 すると、こっちを見ている男性がいた。

 俺に気づいたのか視線を逸らした。

 あの二人を早く見つけないと絶対に面倒事になる。

 早くどこかに移動しないと。


「ヤミネスさん、そろそろ……」


「やあ、初めまして。美しい人」


 ヤミネスさんの前に一人の金髪の男性が近づき、手を差し出して微笑んでいる。

 おいおい。嘘だろ。


「初めまして……あの……なんでしょうか?」


「これは失礼。僕の名前はアラン。よかったら、僕と一緒に……」


「ヤミネスさん、早く二人を見つけよう」


「は、はい!」


 ヤミネスさんの手を強引に掴んで歩く。

 面倒事はごめんなんだ。悪いね。


「待ちたまえ。僕は彼女と話している途中だ。君、失礼だとは思わないのかい?」


 俺の前に立ち塞がる。

 はあ、最悪だ。


「思ってないです。では……」


「なんだって?」


 横を通り抜けようとしたら、肩を掴まれる。

 ダルすぎ。カイラムさんとチェイさん、どこ?


「聞き間違いではないといいのだが、君……」


「聞き間違いでしょう。幻聴じゃないんですか?」


 肩に掴まれている手を右手で強く握り締めると、男性は手を離して、俺を睨む。

 早くこの街から出たい。


「いい加減にしたまえ!」


「うっ!」


「クロスさん!」


 顔面を殴られ、膝をつく。

 いって〜。頬がヒリヒリする。

 歯が抜けてもおかしくない威力だったよ?

 強すぎじゃないかな。


「君は人の話を聞かないのかい?どういう環境で育ったのかな?」


 怒ってることは分かる。

 たしかに話を最後まで聞いてない俺が悪いね。

 だけど、早く帰りたいんだよ。


 街の人たちが見てるんだ。

 注目されるのは嫌いなんだ。


「……あの、注目されてますよ?」


「だからなんだっていうんだい?」


「はあ〜、ダルすぎ。……それで、ヤミネスさんに何か用があるんですか?デートのお誘いだったら悪いですね。今、デート中なので」


 深いため息をして、ヤミネスさんの肩を掴んで引き寄せる。

 男性は顔を歪ませて、もう一度殴ってくる。


「うっ!」


 さっきよりも強い。

 血は出てないけど痛いな。


「なんだ?」

「何?喧嘩?」

「勘弁してくれよなー」


 周りの人たちから声が聞こえてくる。

 うわー、もう嫌なんだけど。


「アランさん……でしたっけ?歳下を殴るのはやめたほうがいいと思いますし、嫉妬は醜いですよ?」


「君って奴は……!いいだろう。君に決闘を申し込む」


 その一言で周囲の人たちがざわつく。

 決闘?戦うの?この人と?


「マジかよ!歳下相手に容赦ねえな……」

「絶対にアランさんが勝つだろ!俺は賭けるぜ!」

「あの子が可哀想だわ」


 引いている人がいれば、賭ける人もいるし、俺を心配してくれる人もいる。

 引いているなら止めてよ。人の戦いに賭けるのはやめてよ。心配してくれるなら助けてよ。


「断りたいのですが……」


「ダメだ」


「拒否権はあるはずですけど?」


「ダメだ」


 どうしても戦いたいらしい。

 俺、この人に勝てる気がしないんだけど。


     ◇


 街を歩いていると、視線が集まる。

 ボロボロだからね。僕の服装。

 この服装、かっこいいと思うんだけどな〜。

 綺麗より、少しボロボロなのがいいと思うけど。


 隣にいるチェイ君を見ると、うんざりとした表情を浮かべている。

 どうしてだろう?

 寝不足かな?それとも、朝食を済ませてないのかな?


「お前といると、胃が痛くなるねえ」


「なんでなんで?一緒にいるだけでストレス感じることあるんですか?ひどいですね〜」


 僕って、そんなにウザいかな?

 うーん、どういう風にしたらいいのかな?


「何回も聞くが、服装は変えないのかい?」


「ぜーったいに嫌です。お気に入りなんですもん」


「だよなー、はあ……」


 何回このやりとりをしているのかな?

 少なくとも100回は超えてるよね。


「あの二人は満足してくれたかな〜?」


「……なんであの宿屋にしたんだい?他にもあっただろう?」


「僕って、人の恋を応援したい性格なんです。だから、あそこを選んだんですよ?二人は僕に感謝しているはずです!」


「……安い宿屋はあったのにな。……逆に嫌われても俺は知らないからねえ」


 嫌われる要素が見当たらないね。

 ふふん、僕の予想だと、あの二人はもう一線を超えた。

 その次は?クロス君が責任をとることになる。

 そして、結婚して幸せになる。

 完璧な計画だ。

 僕ってば、なんて優しい人なんだろう!


「ふふふ……」


「……余計なお世話になると思うがねえ」


「それはどうですかね?楽しみ〜」


 今日、帰るから、馬車の中で聞こう。

 二人は僕に感謝するさ!


「なんか騒がしいな……」


 街の人たちが、ざわついている。

 なんか事件でも起きたの?


「そうですね。何かあったんでしょうか?」


 近づくと、クロス君とヤミネスちゃん、そして、アラン君がいた。

 クロス君は殴られたのか、頬に手を当てている。

 喧嘩じゃないよね?なんかの遊びだよね?


「やばいな。……アランが相手となると、決闘を申し込まれたか……」


 アラン君は『上級』冒険者だ。

 実力は、『超級』にギリ届きそうなぐらいだ。

 冒険者の中では、結構知られている冒険者。

 今のクロス君じゃ勝てないよ。


「そんな!ど、どうしよう……どうします?」


「下手に動かないほうがいい……」


 難しい表情を浮かべながら、手を握り締めている。

 チェイ君の言う通りだけど、助けないと!

 『隠密』を使ってなんとか二人を救出できないかな。


「なんの騒ぎだ?」

 

 その一言で騒ぎが収まる。

 声がするほうに振り向くと、フィン君がいた。

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