2ー11 「ダル絡み」
どんなに探してもカイラムさんとチェイさんが見つからない。聴覚を鋭くしようとしたが、周囲の人の鼓動音や風の音などが大音量で聞こえてきて、頭痛がするだろうと思ってやめることにした。
「見つからないものなんだなー。ダルくなってきた」
「もう少しだけ頑張ってみませんか?」
「……分かった」
頑張るのはいいけど、疲れてるじゃん。
俺はなんともないけど。
「あ……」
つまづいて転びそうなところをキャッチ。
ちょっと休んだほうがいいね。息が少し上がってる。
「ありがとうございます……」
「休もうか。座れるところは……あった」
ベンチに座って休憩。
無理しちゃダメだからね。
「体力がもっとあれば……」
「どんなに体力があっても疲れるときは疲れるんだ。人ってそういう生き物だから」
「そうでしたね。焦っていたので……すみません」
焦る?
多分、船頭の警告かな?
知らない人から狙われていることは怖いもんね。
それも、男性で変態だったら尚更。
「謝るのが悪いって言いたいわけじゃないけど、謝りすぎはよくないかなって思うよ」
「え……?」
「謝れば謝るほど、謝意が薄れていくから……あー、やっぱりいいや。忘れて」
上から目線はダメだし、変なこと吹き込むのはやめたほうがいいな。俺の考えでもあるわけだし、自分の考えを他人に押しつけるのはよくないって、前世の友達が言ってたな。その通りすぎる。
「ありがとうございます」
「な、何が……?さっきのは忘れていいんだよ?俺なりの考えを押しつけるようなことだったからさ」
首を横に振って微笑んでいる。
「アドバイス、ありがとうございます」
「ヤミネスさんのことを思って言ったことだから……じゃなくね、でも……えっと……あれ……?」
悪化していってないか?
言葉が出てこない。
混乱してきた。
「ワタシのことを思って言ってくれたのですよね?」
「そうだよ!それが言いたかったんだ。だから……」
不器用な自分を情けなく思う。
困らせてどうする。
このままじゃ、嫌われるじゃないか。
「落ち着いてください。大丈夫ですよ。ワタシは、クロスさんを嫌いになることはありません」
「本当に……?」
「はい」
天使かよ。
めっちゃ嬉しいこと言ってくれるじゃん。
気づいてないかもだけど、大胆なこと言ってるからね?
「それは、ありがとう。うん……そう、か……」
膝に肘を乗せて、頬杖をついてヤミネスさんから視線を逸らす。
すると、こっちを見ている男性がいた。
俺に気づいたのか視線を逸らした。
あの二人を早く見つけないと絶対に面倒事になる。
早くどこかに移動しないと。
「ヤミネスさん、そろそろ……」
「やあ、初めまして。美しい人」
ヤミネスさんの前に一人の金髪の男性が近づき、手を差し出して微笑んでいる。
おいおい。嘘だろ。
「初めまして……あの……なんでしょうか?」
「これは失礼。僕の名前はアラン。よかったら、僕と一緒に……」
「ヤミネスさん、早く二人を見つけよう」
「は、はい!」
ヤミネスさんの手を強引に掴んで歩く。
面倒事はごめんなんだ。悪いね。
「待ちたまえ。僕は彼女と話している途中だ。君、失礼だとは思わないのかい?」
俺の前に立ち塞がる。
はあ、最悪だ。
「思ってないです。では……」
「なんだって?」
横を通り抜けようとしたら、肩を掴まれる。
ダルすぎ。カイラムさんとチェイさん、どこ?
「聞き間違いではないといいのだが、君……」
「聞き間違いでしょう。幻聴じゃないんですか?」
肩に掴まれている手を右手で強く握り締めると、男性は手を離して、俺を睨む。
早くこの街から出たい。
「いい加減にしたまえ!」
「うっ!」
「クロスさん!」
顔面を殴られ、膝をつく。
いって〜。頬がヒリヒリする。
歯が抜けてもおかしくない威力だったよ?
強すぎじゃないかな。
「君は人の話を聞かないのかい?どういう環境で育ったのかな?」
怒ってることは分かる。
たしかに話を最後まで聞いてない俺が悪いね。
だけど、早く帰りたいんだよ。
街の人たちが見てるんだ。
注目されるのは嫌いなんだ。
「……あの、注目されてますよ?」
「だからなんだっていうんだい?」
「はあ〜、ダルすぎ。……それで、ヤミネスさんに何か用があるんですか?デートのお誘いだったら悪いですね。今、デート中なので」
深いため息をして、ヤミネスさんの肩を掴んで引き寄せる。
男性は顔を歪ませて、もう一度殴ってくる。
「うっ!」
さっきよりも強い。
血は出てないけど痛いな。
「なんだ?」
「何?喧嘩?」
「勘弁してくれよなー」
周りの人たちから声が聞こえてくる。
うわー、もう嫌なんだけど。
「アランさん……でしたっけ?歳下を殴るのはやめたほうがいいと思いますし、嫉妬は醜いですよ?」
「君って奴は……!いいだろう。君に決闘を申し込む」
その一言で周囲の人たちがざわつく。
決闘?戦うの?この人と?
「マジかよ!歳下相手に容赦ねえな……」
「絶対にアランさんが勝つだろ!俺は賭けるぜ!」
「あの子が可哀想だわ」
引いている人がいれば、賭ける人もいるし、俺を心配してくれる人もいる。
引いているなら止めてよ。人の戦いに賭けるのはやめてよ。心配してくれるなら助けてよ。
「断りたいのですが……」
「ダメだ」
「拒否権はあるはずですけど?」
「ダメだ」
どうしても戦いたいらしい。
俺、この人に勝てる気がしないんだけど。
◇
街を歩いていると、視線が集まる。
ボロボロだからね。僕の服装。
この服装、かっこいいと思うんだけどな〜。
綺麗より、少しボロボロなのがいいと思うけど。
隣にいるチェイ君を見ると、うんざりとした表情を浮かべている。
どうしてだろう?
寝不足かな?それとも、朝食を済ませてないのかな?
「お前といると、胃が痛くなるねえ」
「なんでなんで?一緒にいるだけでストレス感じることあるんですか?ひどいですね〜」
僕って、そんなにウザいかな?
うーん、どういう風にしたらいいのかな?
「何回も聞くが、服装は変えないのかい?」
「ぜーったいに嫌です。お気に入りなんですもん」
「だよなー、はあ……」
何回このやりとりをしているのかな?
少なくとも100回は超えてるよね。
「あの二人は満足してくれたかな〜?」
「……なんであの宿屋にしたんだい?他にもあっただろう?」
「僕って、人の恋を応援したい性格なんです。だから、あそこを選んだんですよ?二人は僕に感謝しているはずです!」
「……安い宿屋はあったのにな。……逆に嫌われても俺は知らないからねえ」
嫌われる要素が見当たらないね。
ふふん、僕の予想だと、あの二人はもう一線を超えた。
その次は?クロス君が責任をとることになる。
そして、結婚して幸せになる。
完璧な計画だ。
僕ってば、なんて優しい人なんだろう!
「ふふふ……」
「……余計なお世話になると思うがねえ」
「それはどうですかね?楽しみ〜」
今日、帰るから、馬車の中で聞こう。
二人は僕に感謝するさ!
「なんか騒がしいな……」
街の人たちが、ざわついている。
なんか事件でも起きたの?
「そうですね。何かあったんでしょうか?」
近づくと、クロス君とヤミネスちゃん、そして、アラン君がいた。
クロス君は殴られたのか、頬に手を当てている。
喧嘩じゃないよね?なんかの遊びだよね?
「やばいな。……アランが相手となると、決闘を申し込まれたか……」
アラン君は『上級』冒険者だ。
実力は、『超級』にギリ届きそうなぐらいだ。
冒険者の中では、結構知られている冒険者。
今のクロス君じゃ勝てないよ。
「そんな!ど、どうしよう……どうします?」
「下手に動かないほうがいい……」
難しい表情を浮かべながら、手を握り締めている。
チェイ君の言う通りだけど、助けないと!
『隠密』を使ってなんとか二人を救出できないかな。
「なんの騒ぎだ?」
その一言で騒ぎが収まる。
声がするほうに振り向くと、フィン君がいた。




