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人生迷走者  作者: 相川悠介
第ニ章
23/41

2ー10 「小舟」

 朝。

 昨日はいろいろあって充実した1日だった。

 人を殺したのを除けば。

 好奇心で行くべきではなかったけど、人助けしたから、善行になるのか?殺してる時点でダメだと思うけど。


 夜、寝るときはなんとか理性は耐えることができた。

 耐えるの大変なんだよね。童貞だから仕方ないね。


「どうしようかな?……買い物はしなくてもいいぐらい、貰っちゃったし、散歩したし……」


 窓から外を見て、考え込む。何かないかな〜。


「……クロスさん……おはようございます……」


「おはよう」


 うとうとしながら挨拶をしているヤミネスさん。

 まだ眠そう。緊張してあまり眠れなかった感じだ。

 ベッドで一緒に寝るときは、お互い緊張してた。


「眠いならまだ寝ててもいいのに」


「……我慢します」


 かわいらしい欠伸をして、ベッドから降り、服を脱ぐ。

 え?待って待って!寝ぼけてる!外!外を見てよう!

 ダメだ!窓で見えちゃう!体育座りしてよう!

 指摘したいけど、ヘタレだから言えない。

 情けない自分が嫌になってくる。


「どうしたのですか……?」


 かわいい声が聞こえてくる。

 寝ぼけてるから更にかわいさ増しだ。

 どう答えよう?うーん、適当に答える!どうにかなれ!


「こうしたい気分なんだ。気にしなくていいよ」


「うーん……そうですか……」


 納得してもらえた。よかった〜。

 何か考えて、その考えに集中しよう。

 銃の種類はどうだろう?いいんじゃないかな?

 知識あるし、銃を持った自分を想像して、敵を撃つ。

 これなら大丈夫でしょ。


「……あれ?……ん……下着が……」


 下着!?ダメだ!声が聞こえてくるから集中できない!

 着替えで苦戦してる!

 いやいや、着替えで苦戦ってなんだよ!


「あ、よかった……」


 心臓に悪いな。人が着替えてるだけなのに。


「着替えないのですか……?」


 着替え終わったか。あー、安心した。

 俺も着替えるか。


「着替えるよ。だから、ちょっと部屋の外で待ってて」


 立ち上がって、振り向く。

 白一色の服装だ。

 よし、ちゃんと着替えられてる。

 どこも問題なさそうだね!


「はい……」


 ふらふらしながら、部屋から出た。


「はあ〜」


 深いため息をして、着替え始める。

 朝から殺しにくるとは、ヤミネスさん、恐ろしい。


     ◇


 やることもないから、外に出て、カイラムさんとチェイさんを探すことにした。

 合流して早く帰りたい。


 この街が嫌いになったわけじゃない。

 今日はやたらと視線がヤミネスさんに集中している。

 それも男性からのものだ。


 昨日も複数の視線がヤミネスさんに集中していた。

 異世界のことだから、少し焦りを感じている。

 絡まれたら面倒事は確定だ。


「適当に歩いてたら会えるか」


 暇になるんだよな。

 なんか暇潰しになりそうなのがあったらいいんだけどなー。

 そんなことを思いながら歩いているとヤミネスさんが立ち止まった。


「どうしたの?」


「あれに乗ってみたいです」


 指差したほうを見ると、小舟があった。

 俺も乗ってみたかったんだよな。


「暇潰しに乗ろう」


「はい!」


 階段を降りて小舟に着く。

 男性の船頭が俺とヤミネスさんを見て笑う。


「熱い夜は、もうしたのかい?」


 マジで恋人関係に見えるのかな。

 ヤミネスさんは首を傾げている。普通に分かっていない。分からなくていいんだ。そのままでいてくれ。


「まだ……じゃなくて、乗ってもいいですか?」


「へいよ。銀貨一枚」


 ポケットから袋を取り出して、銀貨一枚を船頭に渡す。


「たしかに受け取った。乗りな」


 先に小舟に乗って、ヤミネスさんに手を差し出す。

 その手を掴み、小舟に乗る。

 俺とヤミネスさんが座ったのを確認して、船頭は小舟を漕ぎ始める。


 意外と揺れないものなんだな。

 こういうの新鮮でなんかいいな。

 前世で、体験したことのないことだからだろうけど。


「お二人さんは、この街は初めてかい?見かけない顔だからなー」


「そうですね。おすすめの場所はありますか?」


「ねえかな〜。わりぃな。この街は普通だから」


 申し訳なさそうな顔を浮かべる。

 普通ね。殺人事件が発生する場所はあったけど。

 だけど、あれは、俺の質問のせいか。


「そうだ!お二人さんにぴったりなところがあったな」


 それは嬉しい。どういう場所だろう?


「どこでしょうか?」


「『熱い夜』っていう、宿屋があってな。そこで……」


「もういいです。情報提供ありがとうございます」


 はあ、聞かなきゃよかった。


「おいおい。最後まで言ってないぞ」


 船頭はニヤニヤしている。


「その宿屋は、ワタシとクロスさんが泊まっているんですが……?」


 嘘でしょ?カイラムさん、何を考えているんだ。


「嬢ちゃん、本当かい!?じゃあ……え?え?」


 船頭が俺を見てくる。うぜえ。


「初耳だったんだけど……本当なの?」


「カイラムさんが、ここに泊まるように、と。あと、楽しんでね、と言ってたような……?」


 船頭はやれやれと言った感じで、息を吐く。


「兄ちゃん、嘘はいけねえな。なに、恥ずかしがるようなことじゃねえ。な?」


「してませんから……」


「分かってる分かってる。……で、どうだったよ?」


「だから……」


 誤解を解くように言った姿が面白かったのか、船頭は、ずっと楽しげに笑っていた。

 ヤミネスさんは、会話の意味を分かっていなかったが、楽しそうだった。

 そんなこんなで、元の場所に戻った。


「終わっちまったか。楽しかったのにな〜」


 船頭は名残惜しいように言う。

 それはよかったね。俺はあまり楽しめなかったけど。


 俺が先に降りて、ヤミネスさんの手を掴んで引っ張る。


「ありがとうございました。まあ、楽しかったです」


 ムスッとした表情で言うと、船頭は肩をすくめる。


「悪かったって。ははっ、また来てくれや」


「では、これで。行こう、ヤミネスさん」


「はい。……ありがとうございました」


「おう。兄ちゃん」


 まだからかい足りないのか?


「なんですか?」


「気をつけてな。視線が集中してた」


 真剣な眼差しで言ってくる。船頭も気づいていたか。


「……はい」


「嬢ちゃん、変な男に誘拐されんなよ。兄ちゃんがいるから大丈夫だろうけどよ」


 俺が身につけている『コンバットナイフ』をチラッと見て、ヤミネスさんに警告する。


「は、はい」


「んじゃな」


 俺たちは階段を上り、船頭は手を振って見送ってくれる。

 これから厄介なことになりそうだな。


「あの人の言う通り、気をつけないとね」


「そう、ですね。頼りにしてます」


 笑顔で言ってくるヤミネスさんに頷く。


「任せて。あと、ヤミネスさん」


「なんでしょうか?」


「自分が、かわいいっていうこと自覚してね」


 そう言うと、ヤミネスさんの顔が真っ赤になる。


「かわ、いい……!?きゅ、急に何を……?」


「俺なりの警告かな。かわいい人って、変な人に襲われるんだよ。外見がよくても中身が獣っていうのがある。気をつけてね」


「そ、それを言うなら……クロスさんも気をつけてくださいね!」


「え?うん。……気をつけるよ?」


 よく分からないな。

 ヤミネスさんが、両手を掴んでくる。


「クロスさんも……かっこいいので、その……」


 俺がかっこいい?そんなわけない。

 今は、前世よりかはマシかもしれない。

 けど、調子に乗っちゃダメなんだ。


 失恋3回経験したんだぞ。それで二次元に逃げた。

 そして、女性が怖くなった。

 うぐっ、自分で言うと悲しくなってきた。


「ありがとう。……痛いから離してくれると助かるかな」


「す、すみません!えっと……」


 掴んでいた手を離して、俯くヤミネスさん。

 かわいいかよ。


「クライムさんとチェイさんを探そう。早く帰って、家や教会を掃除しないと」


「そうですね!ダーウィン様が機嫌を損ねてないといいのですが……」


「ダーウィンさんは、そういう神様じゃないと思うから大丈夫だと思うけどね〜」


 気分屋で普通の少女みたいな神様だから、怒るときはあるだろうけど、掃除してないだけで怒りはしないと思う。


「だといいのですが……」


 首に下げている十字架を持って、不安げな表情を浮かべる。

 ヤミネスさんの肩に手を置く。


「探しに行こう」


「はい」

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