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人生迷走者  作者: 相川悠介
第ニ章
20/25

2ー7 「貰い物」

 宿屋に着き、部屋に入る。

 ヤミネスさんに聞いたところ、一部屋で一緒に泊まることになったらしく、ベッドは一つ。

 つまり、寝るときは二人で使わなければいけない。

 そろそろ異性との免疫力を高めないとね。


 テーブルの下にリュックとたくさんの袋を置く。

 ヤミネスさんも袋を置く。


「まさか、こんなに貰うとは思わなかった」


「なぜか申し訳ない気持ちになります」


 ベッドに座って項垂れる。

 ヤミネスさんは隣に座って、手に持っている一つの小さな黒い箱を見る。


 それも貰い物だ。たしか、アクセサリーだったかな?

 どんなアクセサリーかを本人に聞いたら、「秘密です」と言われた。

 めっちゃ気になる。


「見てもいい?」


「はい」


 ヤミネスさんが箱を開けると、赤く光っている宝石の指輪が入っていた。

 なるほど。指輪か。


「お、綺麗じゃん」


 中身のないスッカスカの感想しか出てこない。

 綺麗だとは思っているよ。

 宝石に詳しくないし、キラキラしてるのは、大体綺麗という感想しか思いつかない。


「ですよね。あの方曰く、『珍しい宝石だから大事にして』と」


「はは―ん……そうなんだ。そんなに珍しいんだ」


 欲しかったわけじゃない。


「クロスさんもアクセサリーを貰ったのでは?」


「なんだっけかな?……貰いすぎて忘れた。取ってこよ」


 リュックかたくさんある袋かのどっちかだ。

 本当に貰いすぎた。


     ◇


 少し時間は遡る。

 まだ、街を歩いているとき、また見知らぬ人に話しかけられた。

 幼い少女だ。10歳ぐらいだろうか?


「ど、どうも……その、た……助けていただき、ありがとうございます。え、えっと……」


 人見知りなのか、話し方が途切れ途切れだ。

 誰だって初対面の人と話すときはこうなる。

 特に歳上だとね。俺だってそうだ。


「落ち着いて。ゆっくりで大丈夫だから」


「あ、す、すみません……気を遣わせてしまって……人と話すとき、いつもこう、なるんです……すみません」


 すごい。陰キャのコミュ障のそれだ。

 やっべ、すげえ失礼だった。


「まあまあ。感謝の言葉、ありがとう。んじゃ」


 再び歩き出そうとすると、手を掴まれる。


「あ!ま、まま待ってください!」


「どうしたの……?」


 掴んでいる手が強まってきていて、結構痛い。

 外見と違って力強いな。


「そ、の……私の両親が、お礼をしたいと言っていたので……一緒に、来てくれませんか……?」


 またまたお礼か。いいのかな?

 遠慮せずに貰っちゃう性格だからさ。


 例えば、「これをどうぞ」と言われて、「いえいえ、そんな」と言い、遠慮して最終的に貰うのが普通だが、俺の場合は、「ありがとう」って言って貰っちゃうんだよね。

 性格悪いほうかな?


 ヤミネスさんを見ると、頷いている。

 行きますという意味ね。


「分かった。どこかな?」


「あ、案内します……」


 少女について行き、小さな建物に着いた。

 他の建物が大きいだけで、これが普通かな?


「どうぞ、お入りください」


 少女が扉を開けてくれて、中に入る。

 中は、カフェらしい内装だ。

 清潔感があって、甘い匂いがする。

 カフェじゃないかな?

 で、客がいないんだけど、今日は休みなんじゃないかな?


「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」


 店員が聞いてくる。あれ、いたんだ。

 この時間帯は、客は来ないのかな。

 それで、女の子は人数に含めたほうがいいのかな。


「えーっと……」


「ママ、連れてきたよ」


 俺の後ろから出てきた女の子が店員に言う。

 ママ?この人が?店員じゃないの?


「あら!そうだったの!ありがとう、ララ」


「えへへ〜」


 ララちゃんは、ママに褒められて嬉しいようだ。

 かわいいね。


「あのー、すみません……」


「あ、ごめんなさいね。クロスさん、本当にありがとう」


「ええ、はい……それでここは……?」


「カフェよ。今の時間帯はあまりお客さんが来ないの。……そうだ!ちょっと待ってて!今、持ってくるわ!」


 何かを思い出したらしく、厨房に入った。

 ララちゃんも厨房に入った。


「また時間があったらここに来る?」


「はい、どのような物があるか気になります」


 厨房からママとララちゃん、一人の男性が出てきた。

 ララちゃんのパパかな?

 ママとパパの手には、袋がある。


「あなたが、クロスさんか。妻と娘を助けてくれてありがとう。俺はここの店長でな。……本当にありがとう。これを受け取ってくれ」


 店長は俺に、ママはヤミネスさんに袋を渡す。


「はい……これは……?」


「果物だ。いろいろ入ってる。命懸けで助けてくれたのに、これぐらいしかなくて、すまない」


「謝らないでください。すごく助かります。ちょうど食材が足りなかったので」


「そうか。それならよかった」


 店長は安心したように息を吐く。


「それでは、俺たちはこれで。ありがとうございます」


「ありがとうございます」


 お礼を言い、扉を開けてカフェを出る。


 リュックに貰い物を入れて背負う。

 重くなってきた。

 手には、袋があるし、これ以上はないでしょ。


「さて、次はどこを……」


「あれ?あなたは、あのときの……」


 歩き出そうとした瞬間、声をかけられる。

 待ってくれ。人違いじゃないのかな。

 頼む。そうであってくれ。


 声が聞こえたほうに振り向く。

 すると、女性が手を振っている。

 周りには、ヤミネスさん以外いないし、俺か?

 女性は近づいてくる。


「あなたがクロスさんね!私、あなたを探してたの!来て来て!恋人さんも!」


「ちょ……」


「……恋人……」


 腕を掴まれて、連れて行かれる。

 ヤミネスさんも頬を赤くしてついてくる。

 あの場所に人ってそんなにいたっけ?

 ついて行くと、女性は止まり、建物を指差す。


「ここが私の店。宝石店よ」


「宝石……?」


「……え?」


「あははっ!その表情、いいわね。じゃあ、入りましょう」


 中に入ると、宝石がたくさんあった。

 その他にも、アクセサリーがある。


「すごい……これが……」


「宝石……」


「そうよ。ささ、何か選んで。無料だから、お金は結構よ。何がいい?」


 宝石が無料で貰えるって、やばいな。

 こんな経験、初めてだ。


「えっと……あー、じゃあ、これでいいです」


 適当に選ぶか。

 宝石のこととかアクセサリーにあんまり興味ないし。


「早くない?いいの?」


 頷くと「分かったわ」と言って、緑のブレスレットを取って、黒い箱に入れて、渡してくれた。


「ありがとうございます」


「こちらこそ〜」


 そう言うと、女性はヤミネスさんのほうへ行く。

 俺はリュックの整理でもしておくか。


 手を振って見送ってくれる女性。

 俺とヤミネスさんも手を振って、宿屋に向かう。

 もう疲れた。休みたい。


     ◇


 そして現在(いま)

 袋からヤミネスさんと同じ箱を取り出す。

 ヤミネスさんの隣に座って、箱を開ける。

 入っていたのは、緑のブレスレットだった。


「ブレスレットでしたか。綺麗な色ですね」


「そうだね」


 宝石でできてるブレスレットって聞いたことがなかったな。

 それに緑を選んだのは、多分、ダーウィンさんを思い浮かべたからかな。

 イメージカラーが緑だった。


「まだ付けなくていいか。なんか抵抗感がある」


「そうですね」


 箱を閉めて、ヤミネスさんの箱を取って、袋の中に入れる。

 この量、馬車に入るか心配だな。

 外はまだ明るい。散歩でもしよう。


「ちょっと散歩してくるね」


「すみません。ワタシ、少し睡眠を……」


「分かった。ゆっくり休んで」


     ◇


 今の気分は最高。

 いい物たくさん貰っちゃったからね。

 散歩なんてする機会、あまりないからウッキウキ。


(はあー、最高だ)


 前世とは違う空気。

 車や自転車は通ってないから、二酸化炭素排出されないし、クラクションの音も当然ない。

 信号機なんて物もない。

 何度でも言おう。最高だ。


 魔物の血のおかげで体力は十分あるし、身体能力は上がっている。

 だから、疲れを感じない。

 あの疲れは、人とのコミュニケーションで疲れたんだ。

 前世は、人と話すことは、滅多になかったな。

 共通の話題が少なかった。

 話はあまり盛り上がらなかったな。

 

 そんな感じで歩いていると、路地裏から物騒な音が聞こえる。

 無視したいけど、路地裏ってワクワクするんだよね。

 見るだけならいいはず。バレなきゃいいんだ。

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