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人生迷走者  作者: 相川悠介
第ニ章
19/24

2ー6 「感謝」

 ヤミネスさんより先に起きて、ベッドから降りる。

 寝ていたのと緊張であまり眠れなかった。

 何かあったのかな?積極的だった。

 理性が耐えてくれてよかった。

 ヤミネスさんに毛布をかける。


「今は昼か……外に出るか」


 テーブルにあるベルトをつける。

 『コンバットナイフ』が鞘に入っているのを確認する。

 いやー、これを持ってきて正解だった。

 血が出せないからね。


 そう考えているとベッドから音がする。

 振り向くと、ヤミネスさんがゆっくりと起き上がっている。


「……おはようございます……」


「おはよう」


 ベルトの音で起こしちゃったか。申し訳ないな。


「昨日のこと覚えてる?」


 試しに聞いてみる。


「昨日……?何かありましたか……?」


「ああ、なんでもない。ごめんね」


 寝ぼけて記憶が曖昧なのか、本当に忘れたのか。

 できれば後者のほうが助かる。

 いーや、絶対に後者にしてくれ!


「ここってどこなの?宿屋?」


「はい……カイラムさんがお金を出してくれました……う〜ん……」


 かわいい唸り声をあげて答えてくれる。

 街に入れたのか。

 それに、お金出してくれたのか。

 カイラムさんには、あとで感謝しないとね。 


「どこかに行くのですか……?」


「せっかく街に入れたから、何か見てこようかなって。ヤミネスさんはどうする?」


「ワタシも行きます」


 ベッドから降りて、背伸びをするヤミネスさん。

 疲れていたから分からなかったけど、服装が変わっている。

 白い長袖に黒のスカート。

 スカートで寝るのは、ちょっと、いや、かなり危ないのでは?

 それに寝づらそう。


「服、買ったんだね。かわいいよ」


「この服、かわいいですよね。商人の方が買ってくれたのです」


「あ、うん」


 服もそうだけど、ヤミネスさん自身に言ったんだけど、まあいいか。

 にしても、羨ましいな。買ってくれたのか。


「クロスさんにも買ってくれるそうですよ。よかったですね!」


「おー、それはありがたいね〜」


 よっしゃ!お金節約できる!

 街の物価が分からないから、一応、全財産持ってきた。

 盗まれることがないようにしないとね。


「寝癖直したら?」


 ぴょんと髪の毛が、はねている。


「クロスさんもですよ」


 そう指摘され、自分の髪の毛を触る。

 うーん、分かりづらいな。鏡で確認しよう。


「うわ、これはひどいな。クシないかな?」


 あー、でも、クシ持ってきてないな。

 泊まることになるなんて思わなかったから。


「ありますよ。これも買ってくれたのです」


 リュックから二つのクシを取り出し、一つ渡してくれる。

 家にもあるんだけど、まあいいや。

 俺とヤミネスさんは、寝癖を直し、俺はリュックを背負う。


「行こう」


「はい」


     ◇


 冒険者協会にある、協会長室――


「冒険者たちに遠征……?なんで今なのさ」


 僕とチェイさんは、協会長である男性、フィン君と話している。

 冒険者協会には、フィン君しかいなかった。

 騒ぎにならないから、よかったかもだけど。


「今の冒険者は、正直に言うと弱い。依頼は失敗が多い。だから、熟練の冒険者に頼んで、遠征をさせた」


 わー、正直。たしかに否定できないけど。

 昔と比べるとそうだけどさ。


「だからって、全員じゃなくてもいいじゃないか。僕たち、クロス君がいなかったら、ゴブリンに殺されてたかもしれないよ」


 あのゴブリン、咆哮をあげるだけだったけど、時間経過で暴走する可能性だってあった。


「全員というわけではないが……それより、クロスという奴は、ゴブリンをどうやって倒した?」


「自分の血をナイフにして、ゴブリンの目に刺した」


「……それだけか?」


「そうだよ。ね、チェイ君」


 隣に座っているチェイ君は頷く。


「おそらくだが、クロスは血を流し込んだのだろうな。武器も魔法も通用しなかったからな」


 その言葉に、フィン君は眉を顰める。


「血を……?武器に変化……」


 フィン君は、呆れたようにため息をする。

 なんで、ため息するのさ。

 そもそも、ゴブリンが出たことを信じてない?


「それ以前に、ゴブリンは本当に出現したのか?」


 やっぱり。えーっと、証拠はある。


「あ!地面が揺れたのは分かったでしょ?ゴブリンが出たのは、それが証拠に――」


「揺れ?そんなものなかったぞ」


 え?いーや、おかしいよ!揺れたよ!


「フィン、揺れたのは本当だ。商人たちも門番も知っている。……街にいた人たちは、揺れを感じていなかった様子だった。なんらかの魔法を街に仕組んだか?」


 チェイ君はフィン君を疑っているのか。実は僕も!


「魔法?知らないぞ」


「えー!?怪しい!冒険者たちの遠征、ゴブリンの出現、君が仕組んだことじゃない?犯人は君だ!そうでしょ!」


 立ち上がってフィン君に指を差す。

 ふふーん、我ながら素晴らしい推理。


「ひどい言いがかりだな。はあ……」


「カイラム、フィンは犯人ではないぞ」


「裏切り者!」


 なんなのさ!


「あのなあ……わりぃなフィン。お前が犯人じゃないのは分かった。遠征に行かなかった冒険者か外部の奴が仕組んだんだろう」


 マジ⁈本当に?


「冒険者たちに遠征をさせ、ゴブリンが出現したことに気づかなかったことは悪かったな。怪しまれるのは当然だ」


「あのゴブリンは、死を望んでいた。実験体だったかは知らんがな」


 僕、空気になってない?あれれ〜?


「ゴブリンの死体は?」


「こっちが処分する。冒険者たちが戻ってきたら、このことを伝えてくれ」


「分かった」


 チェイ君が僕の手を引っ張る。

 言うべきことを言わないとね!


「勝手に犯人って言っちゃってごめんね!」


「構わない。気にするな」


 その言葉を聞いて、僕とチェイ君は協会長室を後にした。

 心が広い人で助かった!


     ◇


 宿屋を出て、街を歩く。

 北欧みたいな感じで、心が躍る。

 川が流れていて、小舟に乗って移動している人がいる。

 暇なときに乗ってみようかな。

 小舟に乗って、街を見るのかなり憧れてたんだよね。


 建物もたくさん建築されていて、どんなのが売ってあるのか、ワクワクしてくる。


「楽しそうですね」


「え?ああ、見たことのない景色だから。はは……」


 ニコニコしてるヤミネスさん。

 ちょっと興奮してたか。


 前世で、テレビの番組で日本人が海外旅行に行って、テンション爆上がりで、海外ニキと楽しそうにしてたのが羨ましかった。

 俺も海外に行って、海外ニキと写真でも撮って交流してみたかったな。

 英語はスマホで解決すればいいだけだからさ。


(ここは、あの世界じゃないんだ。でも、一回ぐらいは海外ニキと話し合ったり遊びたかったな。今、悔やんでも仕方ないか)


 ここは異世界。

 魔法という概念が存在する世界。

 それで十分だ。

 前世にないものがたくさんあるからね。


「あの〜、すみません。あなたがクロスさんですか?」


 突然、男性が話しかけてきた。


「はい、クロスです。何か?」


 自己紹介をすると、男性は笑顔になり、握手してくる。

 ちょちょ、なになに!


「あのときは、助けていただきありがとうございます」


「えーっと……すみません。あのときってのは?」


「ゴブリンを倒してくれたではありませんか!」


 ああ、あのときね。あそこにいたのか。


「はいはい……それで何か……?」


「これは失礼しました!あなたにお礼をしたくて!隣にいる恋人さんにもお礼を!」


「こ、恋人……」


 お礼はありがたいね。

 それと恋人関係って勘違いされやすいな。

 ヤミネスさん、昨日のこと思い出さないといいけど。


「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


「はい!では、何か欲しい物はありますでしょうか?商人をしていまして!」


 すごい興奮している。

 欲しい物ね。食材とか飲料?洋服?

 調理器具や食器は大丈夫かな。


 考えてみれば、8年間、よく食材とか飲料、尽きなかったな。

 それに、腐ることもなかった。


「……洋服ってありますか?」


「もちろんです!では、案内します!」


 商人について行くと、ホテルみたいな建物に入る。

 内装は、清潔感があり、衣類が豊富だ。


「どうぞ!お好きな物を!恋人さんも!」


「は、はい……」


 もう訂正しなくていいかな。

 実際は、友達以上恋人未満って関係みたいな感じだと勝手に思ってる。

 ヤミネスさんは、どう思ってるんだろう?


「品揃えすごい……」


 ここで問題が発生する。

 俺は、ファッションセンスが皆無だ。

 前世だと、服なんて、親が適当に買ってきてくれた。

 それに、物価を知らない。

 ここは適当でいいか。高い物でも大丈夫だよね。


「これでいいですか?」


 選んだのは、黒いスーツに白いワイシャツ、黒い長ズボンがセットになっている物だ。

 ジェノさんみたいな服装になるけど、いいか。


「分かりました!恋人さんは……決まったみたいですね!」


 じーっと、一つの洋服を見ていた。

 黒いワンピースだ。


「それ?」


「はい、これがいいです」


 店員が洋服を袋に入れて、渡してくる。


「では、差し上げます。お金は大丈夫です。本当にありがとうございました!」


「はは……こちらこそ。では、これで」


「ありがとうございます」


 俺とヤミネスさんは、お礼を言って、店を出る。


「サイズ大丈夫……だよね……」


 試着しておけばよかった。やらかしたな。


「大丈夫ですよ。サイズに問題がなかったから、何も言ってこなかったのでしょう」


 ヤミネスさんが、不安を取り除いてくれるように言ってくれる。


「そうかな……」


「そうですよ。ワタシが着ているこの服、貰ってからサイズが心配だったのですが、大丈夫でした」


「なら、いいけど……今度からは試着するようにしよう」


「そうですね」


 そう会話しながらお互いが満足するまで街を歩いた。

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