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人生迷走者  作者: 相川悠介
第ニ章
18/24

2ー5 「焦り」

 目を開けると、白い天井。

 今、どこにいるんだ?ベッドの上ってことは分かる。

 覚えているのは、馬車に乗って、急に現れたゴブリンを倒したことぐらいだ。

 その後は、なんだろうな。気絶かな?

 とりあえず、起き上がろう。


「あれ……誰もいない」


 視界が、ぼやけている。目を瞑って、開ける。

 だんだんと視界がよくなっていく。


「ここは……?」


 ベッドから降りて、周囲を見る。

 テーブルに椅子、クローゼットなどがある。

 誰かの部屋か、宿屋か?


 ベルトはテーブルにある。

 『コンバットナイフ』は鞘に入っている。

 回収してくれたのか。感謝しないとね。


「あっ……と」


 力が抜けて、両膝をつく。

 血の使いすぎで、上手く力が入らない。

 何か食べるか飲まないとダメだな。


 扉が開く音が聞こえる。誰か来たのか。


「クロスさん!起きたのですね!」


 ヤミネスさんだったか。強く抱きついてきた。

 心配してくれるのは嬉しいけど、まだ異性に抱きつかれることに慣れないな。


「ヤミネスさん……苦しい……」


「す、すみません!」


 力を弱めてくれた。

 抱きしめることはことはやめないんだね。

 ヤミネスさんの体、柔らかいから鼻血出そう。

 特に胸が当たってるから。

 あー、ダメダメ!煩悩は消えてくれ。


「もう大丈夫だよ」


「……本当ですか?」


「これ以上、血を流したくないんだ」


 鼻を押さえて、ヤミネスさんを見る。

 ヤミネスさんの顔は、一気に赤くなっていく。


「あ!……その、これは!」


「はは……はあ……」


 照れ顔に弱々しく笑い、ため息をする。

 やべえ、マジでダルい。


 立ちあがろうとすると、ふらふらして後ろに倒れそうになった。

 ヤミネスさんが体を支えてベッドに座らせてくれる。


「今、食べ物と飲み物持ってきますね!」


「ありがとう……」


 ヤミネスさんは、早足で部屋から出ていく。

 これじゃあ、まるで病人の気分だな。

 実際、病人に近い状態だけどね。


「あのゴブリン、なんだったんだろう?」


 攻撃をしても、抵抗はしない。

 ゴブリンになってしまった人間か、毒なんかで苦しんでたのか?

 いろんな可能性がある。


 扉が開き、ヤミネスさんがお盆を持って入ってくる。

 お盆の上には、果物や牛乳があった。


「持ってきました。口を開けてください」


 カットされたリンゴらしき果物をフォークで刺し、俺のほうに近づける。

 「あーん」は、恥ずかしいな。


「いやいや、そこまでしなくてもいいって。自分で食べられるから……」


「ダメです。ワタシが食べさせてあげますから。ほら、口を開けてください」


 珍しく強気だな。

 頬を少し膨らませている。


 仕方ない。口を開けてリンゴもどきを食べる。


「あー……ん……ありがとう……」


 リンゴの味だ。普通に美味しい。


「まだまだです」


 再び、リンゴもどきを俺に向ける。

 食べ終わるまで、やってくれるのかな?


「う、うん。あー……ん……」


 そうやってリンゴを食べさせてくれた。

 牛乳も飲ませてくれた。

 ありがたいけど、めっちゃ恥ずかしい。


「ありがとね。美味しかったよ」


「それはよかったです」


 お盆をテーブルに置いて、隣に座るヤミネスさん。

 なになに?近い近い。めっちゃいい匂い!

 じゃなくて!マジで強気じゃん。

 本当にヤミネスさんか?


「近くないかな……?」


「嫌ですか……?」


 ヤミネスさんは頬を赤く染めて、俺を見る。

 まさか、誘ってる!?いやいや!

 そんなことはないはずだ!


「いや、えっと……怒ってる?」


「いいえ」


「本当に?」


「はい」


「……」


「……」


 あまりの恥ずかしさに顔を背ける。

 本当にどうしたんだ?怖くなってきた。

 俺をじーっと、見つめている。


「……あー、外の空気吸いに行こうかな〜」


 気まずい空気に耐えられず、立ち上がるが、手を掴まれる。

 ヤミネスさんは、頬を膨らませている。


「まだ休んでください。いいですね?」


「……分かりました」


 思わず敬語になってしまった。

 ベッドに座って、チラッとヤミネスさんを見ると、目が合って、恥ずかしくなり、下を見る。

 ヤミネスさんらしくない。これは夢の中か?


「そんなにワタシと一緒が嫌ですか……?」


「そんなわけないよ!ただ、ヤミネスさんらしくないなって思ってさ。なんか……うん……」


 分かった!これは夢だ!

 失礼だと思うけど、俺の知ってるヤミネスさんじゃない!

 ならば、言ってみたいこと言っちゃおう!


「ヤミネスさん、好きだよ。俺と結婚してくれ」


 ヤミネスさんの両手を持って、耳に囁く。

 言っちゃったー!さあ、どうなる?

 このプロポーズを受け入れるか、受け入れないか。


「……え?あ、え……?」


 ヤミネスさんを見ると、顔を真っ赤にして、困惑している。

 え?これ夢じゃないの?現実?

 で、でも、冗談だって捉えるよね!

 俺ってそんなこと言う奴じゃないから!


「はい……よろしくお願いします!」


 目に涙を浮かべて、笑顔になってプロポーズを受け入れた。


「……え?マジで……?」


「はい!結婚しましょう!」


 自分の頬を触ってみる。この感触、現実だ。

 やっちまったー!やばいやばい!

 今、「冗談でした〜」なんて言ったら、嫌われる!

 まだ間に合う!嫌われてもいい!


「ヤミネスさん!さっきのは……」


「ふふふ……」


「……え?ヤミネスさん……?」


 涙を拭い、笑っている。

 もしかして、偽者!?


「ごめんなさい。からかいすぎましたね」


「あ、な、なんだ。びっくりした〜」


 深くため息をする。ガチで焦った。


「あのプロポーズは冗談のものですよね?」


「さあ?どっちだろうね?」


「ふふ、意地悪ですね」


 ヤミネスさんの新しい一面が見れて嬉しい。

 楽しそうでよかった。


「はあ、それで、他のみんなはどこに?」


「カイラムさんとチェイさんは、冒険者協会に行きました。ゴブリン?の件で協会長に問い詰めをしてくるとのことです」


 あの二人、絶対怒ってるじゃん。


「門番の二人は?」


「門にいます。仕事を続けると言っていました」


「そうなんだ。頑張り屋さんだね」


 すげえな。俺だったら、代わりの人を呼んで休んでたぞ。


「並んでいた方たちは、問題なく街に入られました。クロスさんに感謝していましたよ」


「照れるな〜。馬車とかも大丈夫なの?」


「はい。問題ないと言っていました。不思議に思ったことは、逃げることはなく、ただ、驚いただけで動かなかったことですね」


「へー、なんでなんだろう?脅威と感じなかったからかな?分かんないや」


 普通なら逃げると思うけどなー。


「クロスさん、ありがとうございます」


「え?」


「ワタシたちを助けてくれたことです。安心して明日を迎えることができます」


「あ、うん。どういたしまして」


「血を消費する戦いは、大変ですよね?」


「貧血になっちゃうから、あまり戦闘向きじゃないかもしれないね」


 ダーウィンさんの言う通りだし、分かってたことだ。

 その上で、ゴブリンを倒すために血を消費した。


「血が足りないのでしたら、ワタシの血を吸いますか?」


 また、からかってるのかな?


「俺は吸血鬼じゃないよ。それに、誰かの血を飲むことはないね」


「なぜですか?」


「不味いからだよ。飲んだことないけど」


 輸血ならいいけど、飲むのはダメだね。

 絶対に飲みたくない。


「うーん……」


「大丈夫だって。食べ物や飲み物でなんとかなるって」


「それならいいのですが……」


 そこまで心配してくれるとは、嬉しくて涙が出そうだよ。


「外に出たいんだけど、まだダメかな?」


「ダメですよ。しっかり休んでください」


「それでも出ようとしたら?」


「抱きついて一緒に横になりますよ。いいのですか?」


 微笑みながら手を掴んでくる。

 冗談だな。


「じゃあ、外に――」


 立ちあがろうとした瞬間、抱きつかれて、ベッドに横になる。

 マジだったか。


「ヤミネスさん……?」


「……なんでしょうか?」


 ならば、嫌われそうなことでも言って離してもらおう。

 もちろん、嫌われたくないけど。


「えーっと、いい匂いだね」


「……ありがとうございます」


「……胸当たってるよ」


「……触りたいのですか?」


 逃す気ないな。え?触っていいの?消えろ煩悩!

 さらに気持ち悪いこと言わないと、離さないか。


「襲っちゃうよ?」


「構いません。好きにしてください」


「……本当にしちゃうよ?」


「どうぞ。クロスさんが満足するまで」


 これはマジのマジだな。降参だね。


「……はいはい。休むから離れていいよ」


「このままじゃ、ダメですか?」


 やばい!ヤミネスさん、マジで俺と寝たいのか。

 掴んでる手の力、強くなってる。


「……いいよ。最初で最後だからね?」


「……ありがとうございます」


 そんなに俺と寝たかったのか。

 理性よ。耐えてくれよ!

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