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人生迷走者  作者: 相川悠介
第ニ章
17/23

2ー4 「死を望んでいる者」

 ゴブリンが現れて、前に並んでいた人たちはパニック状態になっている。

 どうやら、商人や遠くから来た人たちで、護衛がいない。

 こういうのって、護衛をつけるべきでは?


 二人の門番が剣を抜き、ゴブリンの前に出る。

 勇気あるなー。流石は門番。


「なんでここにゴブリンが?!」


「運がわりぃな!」


 本当だよ。運がないね。最悪だ。

 俺なんて、怖くて体の震えが止まらない。


「……助かる可能性ってあります?」


「大丈夫だって!いざというときは、僕がなんとかするよ!魔法使えるからね!」


 俺の質問に頼もしい返答をしてくれるカイラムさん。

 なんだろう?めちゃくちゃ安心する。


「あ、あれが……魔物……」


 ヤミネスさんは、俺の背中に隠れてゴブリンを見ている。

 その声は震えている。


「俺のこと、忘れてねえか?」


 チェイさんは馬を撫でながら、ゴブリンを見ている。


「チェイさんも戦えるんですか?」


「おう。バカにしてるのか?あん?」


「い、いえ。そんなつもりは……」


「はっはっはっ!怒ってねえよ。悪かったな」


 マジっぽく聞こえるんだよな。

 そういう風に考える俺が悪いけど。


「オオォオオオオ!」


 ゴブリンは咆哮をあげながら、拳を地面に叩き込む。

 地面が揺れて倒れそうになるけど、なんとか踏ん張って耐えた。


「うっせえなあ!」


()ってやろうじゃねえか!ああ!?」


 門番こっわ。血気盛んじゃん。


 二人は、走ってゴブリンの背後に回り、アキレス腱を斬り、ゴブリンは両膝をつく。

 二人は斬ることをやめず、跳んで膝裏を突き刺す。


「オオォアアアア!」


 ゴブリンは、再び咆哮をあげる。

 両耳を手で塞ぐ。うるせえ!鼓膜が破れる!


「がっ!」


「うっ!」


 門番の二人は剣を抜き、跳び下がり、尻もちをつく。

 あの距離で聞いたら、意識なくなるぞ。

 よく耐えたな。


「あのゴブリン、攻撃してこないですね」


「しかも、傷が治っている。これじゃあ、倒せないぞ」


 カイラムさんとチェイさんは、ゴブリンを見ながら、冷静に分析している。

 それを聞いて、ゴブリンを見ると傷は消えていて、立ちあがろうとしている。


 門番の一人は、立ちあがって剣を鞘に納め、耳を塞いでいるもう一人の門番に近づく。


「聞こえるか!」


「大丈夫だ。……近距離はやめたほうがいい。魔法で倒すしかねえな……」


 魔法でも倒せるかな?微妙じゃないかな?


「オ……オオ……オレヲ、コ、コロシ……テ……アアアア!」


 さっき喋ったよな?

 咆哮というよりも苦しみにもがいているようだ。

 相変わらずうるさいけど。


「な、なあ、聞いたか……?」


「……殺してほしいのか?」


 門番の二人は、ただ立っているだけだ。


「どもどもです!お二人さん!」


 そこに、カイラムさんが明るい声と共に近づく。

 門番の二人は、カイラムさんを見ると、呆れた表情を浮かべる。


「うるさい奴がもう一体か……」


「困ったもんだ……」


「ひどいです!そんなこと言わないでくださいよ!」


 なんか親しげだな。知り合いかな?


「もう友達でいい関係だと思うけどなー」


 俺の疑問に答えるようにチェイさんが言う。


「どういうことですか?」


「門を通るときに、毎回、あの二人にでかい挨拶してんだ」


 なるほど。挨拶は大事だってはっきり分かった。


「お前、これをどうにかできるから来たんだよな?」


「もちろんです!魔法でちょちょいのちょいです!」


 カイラムさんは、ゴブリンに手を翳す。

 青い粒子が出現して、カイラムさんの手のひらの先に集まり、一つの青い円盤となる。

 そして、円盤は発射され、ゴブリンの首を斬る。


「これで終わり……うーん?」


 頭が落ちて、倒したかと思ったが、ゴブリンの両腕が頭を拾い、首元にくっつけて復活した。

 強すぎでしょ!こんなのチートじゃん!


「チェイさん!」


「おう!」


 カイラムさんの声に応答したチェイさんは、円盤に手を翳し、腕を動かして操作している。

 円盤はゴブリンの頭上に行き、ゴブリンを真っ二つに斬った。


 心臓は斬られてなくても、脳を斬られたら死ぬはず。

 いや、必ず死ぬ。


 しかし、再生が速く、左半身と右半身がくっついてしまい、また復活した。

 もう無理じゃないかな?倒せる気がしない。


「アアアアア!」


「え!?」


「どうすればいいんだ……?」


 カイラムさんとチェイさんは、諦めそうになってる。

 門番の二人もお手上げって感じだ。


「クロスさん……ワタシたち、大丈夫なのでしょうか?」


 後ろからヤミネスさんが声をかけてくる。


「どうだろう?カイラムさんやチェイさんを頼る以外ないと思うし……でも、大丈夫なんじゃないかな。なんとなく、そう思うんだ」


 根拠のない答え。

 大体なんとなくっていう理由で生きてきたから、安心させるような言葉なんて見つからない。

 それ以前に、見つけようとした努力をしたことがない。


 『コンバットナイフ』は持ってるけど、それで倒せるだって?

 無理に決まってる。傷が治るんだ。


 ていうか、地面の揺れで街にいる人たちは、どうなっているんだ?

 それに、冒険者がいるんじゃないのか?

 もしかして、見捨てられてるのか?


「うーん……」


 無理に倒さなくても、帰ればいいと思ったけど、殺してほしいのか、逃がさないように俺たち全員を見ている。

 あー、マジで嫌だ。ダルすぎ。

 帰って血液操作の練習がしたいよ。


「血液操作……」


 いけるのか?俺の血は、普通じゃない。

 父さんが化け物になるぐらいの血だ。

 あのゴブリンに血を流したらどうなる?


「試してみるか」


 『コンバットナイフ』を鞘から抜いて、手のひらを薄く斬る。

 まだ、この痛みに慣れないな。


「クロスさん!?何を⁈」


 その行動にヤミネスさんが驚く。

 急に黙って自分のこと斬ってたら、怖いよな。


「もしかしたら……マジでなんとかなるかも」


 手のひらの傷口から出る血を見る。

 斬っても治る。魔法でも無理。

 なら、血はどうかな?


 勇気を振り絞り、両脚に力を入れて、ゴブリンに向かって走る。


「クロス君?!」


 カイラムさんの声は無視する。

 今は、ゴブリンを倒すだけを考える。


「オオオアアア!」


 咆哮をあげてるだけで、攻撃はしない。

 なら、『コンバットナイフ』で斬る。

 血を流し込むから、できるだけ深く大きい傷口じゃないとダメだ。

 『コンバットナイフ』で、その傷口を作れるかは分からない。


 いや、待てよ?

 血を流せばいいなら、あのときみたいにすればいいじゃないか。

 なんで気づかなかったんだろう。


 この思考時間、1秒。


 血が出ている右手を強く握り、血を流して溜める。

 赤いナイフを作るためにね。


「ていっ!」


 走っているときに『コンバットナイフ』をゴブリンの右腕に向けて投げる。

 『コンバットナイフ』は右腕に突き刺さり、ゴブリンは、それを取ろうとしている。

 その隙に!


「ふっ!」


 跳んで、ゴブリンの左目に赤いナイフを突き刺す。


「アアアアアアア!」


「うっ!」


 鼓膜が破けそう!我慢しろ!

 赤いナイフに血を流し込む。


「アアアアアアアアアア!」


 すると、ゴブリンはさっきよりも大きな咆哮をあげている。

 効果あるかも!さらに、血を流し込む。


「望み通り、殺してやるよ!」


 ゴブリンは、頭を抱えて首を横に思いっきり振り、俺を振り払う。

 赤いナイフを手放し、地面に落ちる。


「あぐっ!」


 普通の人なら死んでたぞ。


「クロスさん!」


 ヤミネスさんが駆け寄って、上半身を起こしてくれる。


「大丈夫、かも……それより……」


 ゴブリンは吐血して、目から血を流し、倒れた。

 あの倒れ方だと、赤いナイフは深く刺さったな。

 なんて、考えてると体に力が入らないのが分かる。

 血を使いすぎたか。


「クロス君!―――――!?」


 カイラムさんが、なんか言ってんな。

 やべー、意識が遠くなってくる。

 『コンバットナイフ』を回収しないといけないのに。


「―――――!」


 あー、ちょっと寝ないとダメかも。

 全然分かんないや。

 せっかく、ここまで来たのに。残念だよ。

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