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人生迷走者  作者: 相川悠介
第一章
13/14

1ー13 「信者」

 数秒間、静寂に包まれる。

 食後のほうがよかったかもしれない。


「ダーウィン様と出会ったのですね!どのような方でしたか?」


「え……?」


 思っていた反応と違って、困惑する。

 疑ってはいると思うけど、興奮していて目を輝かせている。


「ケモ耳少女で優しかった。じゃなくて!疑わないの?俺がダーウィンさんと会ったこと。それに不老不死のことも」


「もちろん疑っていました。ですが、ダーウィン様の特徴を聞いて、本当だったと判断しました」


「あれだけの情報で?」


 誰かに騙されないか心配になってきた。

 でも、疑うことはできるらしいから安心した。


「はい。クロスさんが嘘をついているようには思いません」


 純粋な心が眩しい。

 まあ、嘘をついてないのは事実。

 ダーウィンさんから言うように言われたからね。


「美味しいです」


 パンケーキを再び食べ始めたヤミネスさん。


「はは……はあ……」


 俺も食べ始めたけど、なんかあまり美味しく感じなかった。

 なんでだろう。


     ◇


 朝食を済ませて、食器や調理器具を洗う。

 ヤミネスさんが「手伝います」と言ってきたが、首を横に振った。

 断られたことに、ショックを受けたらしく、教会の掃除をするとのこと。


「謎に罪悪感を感じる。……ごめん、ヤミネスさん」


 ちなみに断った理由は、洗うのが好きだから。

 本当に申し訳ないと思っている。


「このあとは、どうしようかな。射撃は十分だし、寝るぐらいしかないなー」


 スマホやゲーム機がないから、退屈になってしまう。

 テレビもないから、アニメが見れない。

 これは仕方ないね。


「そういえば、本があるはず」


 趣味である読書。

 どんな本があるのか楽しみになってきた。


 全部洗い終わり、タオルで手を拭く。


「食材を買いに行きたいけど、街がどこにあるか分からないんだよね」


 この村は、街からどのくらい遠いのか。

 ジェノさんに聞いとけばよかった。


 家から出て、教会に向かう。

 ヤミネスさんに謝ったほうがいい気がする。

 

 教会の扉を開けると、ヤミネスさんがタオルで長椅子を拭いている。

 俺も掃除を手伝うか。


     ◇


 瞬きをしたら、ダーウィンさんの部屋にいた。

 俺とダーウィンさんは、向かい合うように座っている。

 これ慣れないって。


「報酬はどうだった?満足したかい?」


「豪華ですね。びっくりしました」


「それはよかった。暇ならトランプでもする?」


 カードをシャッフルしながら聞いてくる。

 逃す気ないし、ダーウィンさんの気分で戻ることになってるからな。

 付き合うとするか。


「ババ抜きですか?それとも、神経衰弱?」


「ババ抜き。のんびりと楽しもうじゃあないか」


 均等に分けられたカードをもらい、数字が同じカードを中央に置く。

 枚数は俺のほうが若干多い。

 ちなみにジョーカーは俺が持っている。

 ジョーカーの絵柄が緑色の狐になっていることを疑問に思う。

 ピエロみたいな絵柄じゃなかったけ?


「ボクが先行でいいかな?」


「どうぞ」


 俺の手札に手を伸ばして、カードを1枚引く。


「ラッキー」


 同じ数字があったらしく、2枚のカードを中央に置く。

 次は俺の番か。

 こういうのって適当に引いてればいい。

 それ以外にあるとは思えない。


「揃った」


 運よく揃って中央に2枚カードを置く。


「不老不死のことは言ってくれたかな?」


 突然、ダーウィンさんが話しかけてくる。


「はい。ヤミネスさんって詐欺に遭いそうな人で心配になりますよ」


「たしかに。純粋だからねー」


 また揃ったらしい。

 神様だから俺の手札が分かっているのか?

 それとも運がいいだけなのか。


「これ言うの失礼だと思いますけど、勝手に不老不死にさせるのっていいことなんですか?」


 カードを1枚引いたけど、揃わなかった。

 ダーウィンさんは、肩をぴくりと動かす。


「……まあまあ。ボクは神様だから許してくれるかも?」


「なんで疑問系なんですか……」


 神様だから許されることってあるけど、限度はあると思う。


「ヤミネスちゃんの反応はどうだった?」


 恐る恐る聞いてくる。


「特に何もなかったです」


「ほ、本当に……?怒ってなかった?」


「大丈夫でしたよ」


「よかった〜」


 たった一人の信者だもんね。

 嫌われたらショックだよな。


「そうだ。タクミくん、ボクの信者になる気はあるかい?」


「分かりました。よろしくお願いします」


「まあ……え?」


 カードを引く手をテーブルに置いて、驚いている。

 何もそんなに驚くことじゃないと思うけど。

 冗談で言ってたのか。


「こんなによくしてくれたんです。信者になりますよ」


「やった!ありがとう!タクミくん!」


 手札を置いて、立ち上がり、俺のほうに向かって走り、抱きついてくる。

 すげえいい匂いするし、柔らかいし、心臓に悪い。

 嬉しいのは伝わったから、早く離れてほしい。


「ほら、続けましょう」


「はいはーい」


 俺から離れて椅子に座って手札を持って嬉しそうに笑っている。


「信者が増えることって、そんなに嬉しいこと……ですよね」


「もちろんだよ。信者がいればいるほど、ボクたち神様は持っている力が強くなって、信者にそれ相応の恩恵を与える」


「質より量ってことですか?」


「そうなるね。……また揃った」


 シェイハ村の人たちは、ダーウィンさんの信者だった。

 だけど、ヤミネスさん以外、殺されちゃったんだよな。


「じゃあ……やっぱりなんでもないです」


 数字が揃って中央に2枚カードを置く。

 俺が2枚、ダーウィンさんが1枚となった。


「何かな?言っていいんだよ?」


「……シェイハ村の人たちは、ダーウィンさんの信者だったじゃないですか。でも、殺されて激減しました。だから、少しの幸運になったんじゃないかなって」


 煽っているわけじゃない。

 ダーウィンさんの力は幸運だ。

 シェイハ村の人たちは、全員信者だった。

 なら、豪運で死ぬことはないかと思った。


「その通り。少しの幸運になっちゃったんだ。みんなが殺されたのは、しつこく勧誘したのと運に頼りすぎたからだ。なんでも運で解決なんてできるわけがない」


「ヤミネスさんは違いましたよね。よく生き残れたと思いましたよ」


「たしかに。あれは驚いたよ。絶望的状況だったのに」


 ダーウィンさんがジョーカーを引かずに終了。

 勝者はダーウィンさん。

 少しだけ悔しい。


「ダーウィンさんが、ヤミネスさんを死なせなかったんじゃないんですか?」


「いや、ヤミネスちゃんは運がよかっただけだよ。ボクは何もしてない」


 中央にあるカードを集めて、トントンとカードを整える。


「そうですか……ところで、なんでジョーカーが緑色の狐なんですか?」


 ジョーカーをダーウィンさんに渡す。


「タクミくんの世界だと違うのか。まあ、特になんの意味もないかな。次は神経衰弱をやろう」


「……はい」


 ダーウィンさんが指を鳴らすと、テーブルにカードが並べられていた。

 手で並べるの面倒だったんだろうな。


「次はタクミくんからでいいよ」


「分かりました」


 最初だから適当にめくるか。

 そう簡単に揃わないからね。

 カードを2枚めくるが、揃わなかった。


「まあ、最初ですから」


「次はボクかー」


 そうして、神経衰弱は始まった。

 俺は全然揃わないのに対して、ダーウィンさんは、めっちゃ揃う。

 これは負け確だな。諦めよう。

 結果、俺はカードを取れずに完全敗北。


「勝てないですねー。あ、ダーウィンさん、知ってますか?」


「何かな?」


「ジョーカーは切り札なんですよ」


「……そうなんだ」


 それを聞いたダーウィンさんは、トランプをテーブルに置いて、ジョーカーを見て呟く。

 なんかやらかしたか?


「ダーウィンさん?」


「ああ、なんでもないよ。そろそろ戻る?」


「はい、お願いします」


「またねー」


     ◇


 誰かに肩を叩かれてる。


「クロスさん?どうしましたか?」


 ヤミネスさんが、首を傾げている。


「これからのことについて考えてた」


「これから……?」


「どうやって生きていこうかなって。あと、ダーウィンさんの信者になることにしたよ」


「そうなのですね!」


 十字架を持って笑顔になっている。

 これなら、少しはダーウィンさんの力になれてるかもしれない。

 信者は無理に増やすことは、しないほうがいい。

 嫌われるのは嫌だし、殺されるのもごめんだ。


「祈りを捧げるか」

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