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人生迷走者  作者: 相川悠介
第一章
12/13

1ー12 「伝言」

 ふらふらと家に向かう。

 ただ歩いているだけなのに、いつ転んでもおかしくないぐらい疲れた。


 空は黒く染まっていて暗いが、なぜか道がはっきりと見える。

 これも魔物の血で暗視できるようになってるのかな。

 夜に強盗が来ても対処できるから便利だ。


「ただいまー」


 扉を開けて、なんとか家の中に入ることができた。

 内装が気になるけど限界で眠くなってきた。


「クロスさん!?危ない!」


 どっかの部屋の中からヤミネスさんが出てきて、倒れそうな俺を優しく抱きしめてくれる。

 失礼ながら柔らかい胸を枕として使わせてもらおう。

 だんだんと意識は暗くなっていく。


     ◇


 ソファで寝ているクロスさん。

 二階にある大きなベッドまで運ぶのは、流石に無理ですし、ワタシは力持ちではありません。


 それにしても今日は、不思議なことが多くて混乱しました。

 教会、家、倉庫の出現。

 その他にも、たくさんありましたが、どれもいいものでした。


 この家の内装を確認したところ、清潔感があっていいと思います。

 ですが、一つだけ問題だと思ったのが、ベッドが一つしかないということです。

 それも大きなベッドで枕は二つありましたし、これからは、クロスさんと一緒に寝ることになるということでしょうか。


「すぅ……すぅ……」


 クロスさんの寝顔を見ていると、顔が熱くなっていくのが分かります。

 変な想像はしないようにしましょう。


「クロスさん……!」


 無理です。

 一体どうすればいいのでしょうか。


     ◇


 夢というものは不思議だと思う。

 だって、現実では起こらないことを見る。

 自分の意思で体は動かないし、何を考えているのか分からない。

 だから、今見てるこの夢はなんだろう?


 灰色の空の下、血塗れの男性が赤い剣を持っている。

 多分、未来の俺だと思う。

 青い髪に赤い瞳で、白い半袖に赤色の上着を羽織っていて、黒い長ズボンを穿いている。

 身長は今より伸びている。


 街らしき場所は、崩壊していて多くの死体が転がっている。

 この男性が殺したのだろう。

 男性の目の前には、鎧を身に纏っている赤い髪の女性が剣を構えている。


「―――――!」


 声は聞こえないが、男性に強い殺意を向けていることだけは分かる。


「……」


 それに対して男性は、黙ったまま剣をメリケンサックに変えて右手を強く握り締めて、女性を見る。


「終わりにしよう」


 男性が言葉を発した瞬間、女性は剣を振る。

 メリケンサックと剣が衝突している。

 女性が瞬きをしたときに距離を一気に詰めたのだろう。


 互いに一歩後ろに跳び、男性はメリケンサックを放り投げ、女性は距離を詰めて剣を振る。

 しかし、その剣が男性を斬ることはなく、少し跳んだ男性の素早い回し蹴りで弾かれる。

 刀身を左踵で蹴った男性は、着地してすぐに女性の顔を掴んで、地面に叩きつける。


「―!?」


 頑丈なのだろうか、女性から血は出ていなく、骨は折れていないだろう。

 それを分かっていたのか、驚きもせずに掴んでいる右腕に力を入れて、再び地面に叩きつける。

 すると、骨が砕ける音が聞こえ、血が飛び散る。

 死んでいると思うが、念のためか女性が持っていた剣を拾い、頭に突き刺す。

 女性は完全に死んだ。


「はあ……」


 男性はため息をして、空を見る。

 その姿からは、喪失感と後悔を感じた。

 男性の声だけが聞こえたということは、俺なのだろうか?

 本当に夢とは不思議なものだ。


     ◇


 朝。

 倉庫に入って、的に狙いを定めて銃を撃っている。

 あの夢を忘れたいと思い、撃ち続けているが、そう簡単に忘れられない。


「あれが未来の俺……まさかね」


 的には、夢に出てきた男性を重ねている。

 あれが自分だと信じたくない。


「今日は、これぐらいでいいや。またヤミネスさんに迷惑かけちゃうからね」


 空欄にバツを書いて終了。

 真っ白な空間に戻る。

 85発も撃った結果、ヘッドショットはできなかった。

 昨日の最後の一発は、運がよかっただけか。

 でも、的に当たらないよりかはマシか。


「はあー、疲れた疲れた。んー」


 外に出て背伸びをする。

 起きてすぐに倉庫に行ったから、疲れるんだよな。


「ヤミネスさんは、起きてるかな?……あ、いたいた」


 真っ白な服装なヤミネスさんが教会に入っていく。


「……くっさ!やばいな。風呂あるかな?」


 試しに服の匂いを嗅いでみたら火薬の匂いと汗が混ざって気持ち悪い。

 教会に入る前に匂いを清潔にしよう。



 赤色の半袖を着て、黒い長ズボンを穿く。

 シンプルだけど、それが一番いい。

 十字架を首に下げて、家から出て、教会に向かう。


 風呂があってよかった。

 シャンプーにボディソープまであった。

 前世だと5分で風呂済ませてたけど、今日は20分も入った。

 5分だと匂いが消えないと思ったからね。


 さっきまで着ていた服とタオルは、カゴに入れて後で洗うことにした。

 洗濯機があれば楽だけど、流石になかった。

 この世界だと、やっぱり魔法で洗濯なのかな。


 教会の扉を開けて中を見ると、最前列の右の長椅子にヤミネスさんが座っている。


「おはよう、ヤミネスさん」


 呼びかけるが、反応しない。

 ダーウィンさんに祈り中かな。

 邪魔しないでおこう。


(にしても、報酬が豪華すぎる)


 ゲームで例えるとすれば、初回ログインで無料1000連ガチャに強キャラを1体選べるって感じだ。

 失礼だけど、そういうゲームは、あまり人気にならないと思う。

 最初からチートで無双なんて達成感がないし、すぐに飽きる。


 でも、これはゲームじゃない。

 それに、世界最強なんて望んでない。

 目的は夢を見つけることだ。


「おはようございます、クロスさん」


 深く考えていたからか、ヤミネスさんが目の前にいることに気づかなかった。


「ああ、おはよう。祈り中に挨拶してごめん」


「謝ることはありませんよ。それより、朝からどこに行っていたのですか?着替えてはいるようですが……」


「倉庫。銃を撃つのが好きになってね。それと、昨日はありがとう。ソファまで運ぶの大変だったでしょ?」


「いえいえ、大丈夫でしたよ。疲れはもうありませんか?とても顔色が悪かったので……」


 めっちゃ優しい。

 だけど、心の中だとストレス溜まってるんだろうな。

 優しい人ほど怖いっていうことは知ってる。

 怒らせないように気をつけよう。


「ヤミネスさんのおかげで元気いっぱいだよ。ははっ!」


「え?……あ、はい……」


 笑ってお礼を言うと、頬を赤くして俯いた。

 やばい、やらかしたか?


「ごめんごめん!怒らせるつもりはなかったんだ!え、えーっと……?」


 待て待て、冷静になろう。

 これは、怒ってるわけじゃなくて、照れてるのか?


「……怒ってないですよ」


「そ、そうか。よかったー」


 気まずい雰囲気になってしまう前に話題を考えないとダメだ。


「あ、朝食はまだ?」


「は、はい」


「じゃあ、一緒に食べよう」


 若干の焦りを感じながら、俺とヤミネスさんは教会を後にする。



 家の中に入って、リビングへ向かう。

 そういえば、内装をしっかり見てないな。

 朝食を済ませたあとでいいか。


「料理は何にしよう……」


「クロスさんは、料理ができるのですか?」


「まあ、できるっちゃできる」


「すごいですね!」


 前世で作ったことがある料理は、焼きそば、チャーハン、パンケーキぐらい。

 この世界の食材で、それらが作れるかどうかだし、肝心なのは食材や調理器具があるのか。


「食材はどこだ?」


 キッチンに向かうと、巨大な黒い箱があった。

 これってあれだよね?


「冷蔵庫……?」


 冷蔵庫もどきを開けてみると、卵や果物などが入っていた。


「あとは……あった」


 コンロ近くに調理器具があった。

 これならあれが作れるかもしれない。


「何を作るのですか?」


「パンケーキ」


     ◇


 ダイニングテーブルには、パンケーキが二つ、水が二つ並んである。


「これがパンケーキですか。……初めて見ました」


「なんとかできた。じゃあ、食べようか」


「はい、いただきます」


「いただきまーす」


 ナイフとフォークを使って、蜂蜜がついているパンケーキを口に運ぶ。


「美味しいです!」


「それはよかった」


 目を輝かせて食べるヤミネスさんを見て、安心した。

 食べてる途中だけど、言って大丈夫かな。

 そもそも信じてくれるかだけど。


「話したいことがあるんだけど、いいかな?」


「はい、なんでしょうか?」


 食べるのを中断して、ナイフとフォークを置く。


「信じ難いことだと思うけど、20歳(はたち)になったら不老不死になるってダーウィンさんが言ってた」

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