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人生迷走者  作者: 相川悠介
第一章
10/14

1ー10 「『黒騎士』」

 倉庫の前に着く。

 ドアノブがあり、不思議に思う。

 スライドで開けるものじゃなかったっけ?

 そんなことを思いながら、ドアノブを掴み、下げて開けようとするが、下がらない。


「あれ?なんだこれ?開かない……?」


「そうなのですか?」


 力を強く入れて、ドアノブを下げようとしたが、下がらない。


「全然ダメだ。どうしよう……」


「ふむ……」


 ヤミネスさんが、ドアノブを掴み、下げようとするとガチャ、と音がした。

 ドアノブは下がっている。


「え?」


「開きますよ?」


 力の問題か?

 いや、ヤミネスさんにそんな力はないと思う。


 条件つきの倉庫か。

 ヤミネスさんにあって俺にないもの。


「……もしかして十字架?」


 教会に十字架があったのは、そういうことか。

 ダーウィンさんとの会話で、十字架の存在をすっかり忘れてた。


「十字架がどうかしましたか?」


「その倉庫に入る条件は、十字架の所持。俺は取りにいってくるから先に入ってていいよ」


「はい。中で待っていますね」


 ヤミネスさんは倉庫の中に入り、扉を閉める。

 早く取ってこよう。


 教会に向かって走り出す。


「ん?」


 誰かに見られている感じがして、聴覚を鋭くする。

 すると、誰かの鼓動音が聞こえる。


「ずっと見てる……今は十字架が先だ」


     ◇


 倉庫の中は白一色で覆われています。

 汚れはなく、埃もない真っ白な空間。

 ですが、中央に黒いテーブルがあります。


「不思議な場所ですね」


 前に進み、テーブルに近づきます。

 ワタシの足音が倉庫の中に響き渡ります。


「紙にペン……?これは……?」


 テーブルの上には、白紙とペン、白紙の大きさと同じ蓋のない箱がありました。


「……倉庫と言えるのでしょうか?クロスさんが、がっかりしてしまいますよ」


 とりあえず、クロスさんが来るまで待っていましょう。

 その間、暇になってしまいますが。


     ◇


 教会の中から十字架を取って首に下げる。

 早く倉庫に行きたいところだけど、面倒事を片付けよう。

 誰かにずっと見られるのは嫌だね。


 教会から出て、念のため右腕に力を入れる。

 攻撃してくるかもしれない。


「なぜ見てるんです?」


 そう言うと、木の裏から男性が出てきて、俺に近づいてくる。

 白に染まった髪に青の瞳。

 黒いスーツ姿でネクタイはしていない。

 サラリーマンと思える服装だ。


「……よく分かったな。お前を観察していただけだ」


「観察ですか……それであなたは?」


「俺は『魔王』様の幹部、ジェノ。お前は?」


 いきなり『魔王』の幹部かよ。

 できるだけ関わらないようにしたい。

 夢を見つける邪魔になるからね。


「クロス•マイマイ。10歳の普通の人間です」


「10歳?」


 年齢で俺を疑うのか。

 それより早く倉庫に行きたい。


「んじゃばいでーす」


 軽く手を振って横を通る。

 右腕の力を抜いて、両脚に力を入れる。


 走り出そうとした瞬間、肩を掴まれる。


「話は終わっていない。何か急いでいるようだが、聞きたいことがたくさんあってな」


 逃す気はないらしく、目を鋭くして見ている。

 近い距離で、その目つきは心臓に悪い。

 失礼だけど目つきが鋭い人、苦手なんだよな。


「今日じゃなくても明日があるじゃないですか。今日は自己紹介だけで十分ってことで……」


「ダメだ」


「えー……それで聞きたいことってなんですか?」


 肩に置いてある手を軽く叩くと、ジェノさんは肩から手を離す。


「クナリ村の者がなぜ生きている?」


 なんでクナリ村出身って知ってんの?


「あの村には水晶玉があってですね……」


「それを壊すと村の者たちは死ぬ。そうだろう?」


「……その通りです」


 どこまで知ってるんだろう?

 もしかして、クナリ村とシェイハ村について何か知ってるかな。

 敵意や殺意は感じないから警戒しなくてもいいかも。


「だが、お前だけは生きている。なぜだ?」


 多分だけど、水晶玉に血を流していなかったからか?

 計画内容に血と水晶玉が関係していた。


「あの水晶玉に血を流していなかったからです。父さんが俺を助けてくれたんですよ」


「なるほど。では、あの化け物は?」


「俺の血を体に流した父さんです」


「人間の血を流しただけで化け物に……?お前、普通の人間ではないだろう」


「どこにでもいる普通の人間ですよ。……魔物の血が流れている点を除けば」


 他にもあるけど、これだけ言えばいいか。

 これ以上、自分のことを他の人に話したくない。


 ジェノさんは目を閉じて、目頭を指で押さえて考え込む。

 今のうちに倉庫に行けそうだけど、なんか嫌な予感がするからやめておこう。

 考え終えたのか目頭から指を離し、目を開けて俺を見る。


「……なるほど。魔物の血……あのときの戦闘は、それがあったからこそ勝てたわけか」


「見てたんですね。あんなの見ても何も面白くないですよ。つまらないですって」


 10歳の子どもが人を殺すところに面白さを見出すほうが難しいと思うけど。


「たしかにそうだな」


「はいはい。それで死体はジェノさんが回収したんですか?この村が創り変えられたからといって死体が消えるなんてことはないと思います。なので、それ以外に考えられないです」


 ダーウィンさんは村を創り変えただけで、死体は消えずに残るはず。


「死体は回収した。お前、本当に10歳なのか?」


 疑うのは無理もない。


「10歳ですよ。あの死体を回収してどうするんですか?まさか、魔物の餌じゃないですよね?」


「そのまさかだ。頭部がなかったのは残念だが、仕方ないな」


 冗談混じりに言ってみたが、当たった。

 ジェノさんに引いていると、そんな俺に気づいたらしく額に手を当て目を閉じる。


「決して俺の趣味じゃない。勘違いするな」


「そうですか。……気になったんですけど、ジェノさんに二つ名ってあるんですか?」


 『魔王』の幹部だからあるだろう。

 こういう考えになったのは、小説や漫画の影響だ。


 額から手を離し、目を開けて俺から視線を逸らす。

 恥ずかしいのか?


「……『黒騎士』」


 正直言ってくれないと思ってた。

 それにしても『黒騎士』か。

 ははー、かっこいいじゃん。


「かっこいいですね」


「……そうか。俺には、どこがいいのか分からない」


「まあまあ。幹部は何人いるんですか?」


「俺含めて4人だ。名前は言わないぞ」


 そこまでは聞かないって。

 てか、ジェノさん、俺の質問に答えてくれるな。

 初対面なのに。


「……そんなに質問に答えていいんですか?情報流しちゃうかもしれないのに」


「根拠はないが、お前はそんな奴ではないと思った。それに、そこまで重要なことではないからな」


 信用されてはいるのか分からない。


「そう、ですか……うーん、クナリ村とシェイハ村のことについて知っていることはありますか?信じられないかもしれませんが、実は――」


 これまでのことを話した。

 10年間、赤ん坊の頃から目を覚ますことがなかったことから今までのこと。

 転生したことと自分の能力、ダーウィンさんのことについては伏せた。

 質問攻めになる可能性を感じたから。


「……なるほど。いろいろ聞きたいが、分かった。俺が知っている範囲で話そう」


「助かります」


「クナリ村とシェイハ村は、ほぼ同じような平和な村だ。一つ違うところがあるとすれば、クナリ村には掟があるということ。その掟は、1、人を殺してはいけない。2、物を盗んではいけない。3、魔族を住まわせない。4、村長の血が流れている者が村長となる。以上が、クナリ村の掟だ」


 すげえ、ちゃんと答えてくれた。

 シェイハ村の人たちがダーウィンさんの信者ってことは知らなかったのか。

 それにしても、掟は破らなければ普通に大丈夫なはずだけど。


「ありがとうございます」


「それでは、次は俺からの質問だ」


「どうぞ。答えられる範囲ではありますが」


「シェイハ村を創り変えたのは誰だ?俺が戻ってきたときとは、全く違う」


 やっぱり聞くよね。


「そうですね……ジェノさんは神様がいると思いますか?」


「いるだろうな。俺は、とある神の信者だからな」


 ジェノさんが信者ということは、『魔王』もその神様の信者なのかも。

 神様の名前は聞かなくていいか。


「じゃあ、マイナーだと思いますが、ダーウィンっていう神様を知っていますか?」


「ダーウィン……知らないな。だが、そのダーウィンという神が、シェイハ村を創り変えたのか。どんな神だ?」


「少しの幸運を与える神様です」


 それを聞くと、ジェノさんは眉を顰めて、顎に手を当てて、周囲を見渡す。


「……少しの幸運でここまで……」


「すごいですよね。少しの幸運だけで創り変えることができるなんて、本当にそういう神様なのか疑っちゃいますよ」


「お前は信者なのか?」


「あー、えー、多分?はは……」


 肩をすくめて苦笑いする。

 そんな俺にジェノさんはため息をする。


「……クロスだったな。俺たち魔族の拠点ができたことに感謝する。できれば、ここも拠点にしたいのだが……やめておこう」


 不満な表情を浮かべた俺を見て、ジェノさんは首を横に振り、ここも拠点にすることを諦めた。

 ここは、流石にダメだね。


「話は終わりだな」


「はーい」


 ジェノさんは俺に一礼して、その場で姿を消した。

 鼓動音は聞こえないし、転移したのかな?


「やべっ!早く倉庫に行かなきゃ」


 両脚に力を入れて、全力で倉庫に向かって走った。

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